ちゃうかちゃわんは、あります。200回以上観ました。【劇団ちゃうかちゃわん】140613
2014年06月13日 大阪大学豊中キャンパス学生会館2階大集会室 (110分)
恒例となったちゃうかの短編集。
2年前に拝見して以来、楽しみにしている公演です。
個性的な方が多い劇団だけに、その作品も様々で毎回、その魅力をぞんぶんに味あわせていただいています。
2012年:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/120622-262b.html
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/120623-b8d4.html
2013年:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/130621-2de8.html
今年も6本立て。
1公演4本しか上演されないので、2回足を運ばないといけないのがつらいところです。
昨年は全部観ることができませんでしたが、今年は明日も伺う予定。
明日、観てみないと何とも言えませんが、本日拝見した限りでは、例年よりもクオリティーが高いような気がします。
少なくとも、本日の4本は、確実に当たりの作品でした。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は明日、土曜日まで>
①災難だったね、南くん!
妹からは自慢のお兄ちゃんだと誇らしげに言われ、ツンデレの幼馴染からは不器用な愛を受け、サッカー部の後輩にも慕われ、セクシー女教師からは色目を使われる。
毎日、色々な人に好きだ好きだとつきまとわれる、何とも羨ましい南くん。
そんな南くんの傍にいて、いつも目立たない脇役となっている田中くん。自分に接してくる人たちはみんな南くん目当てだ。
南くんは自分のことを親友だなんて言うけど、自分はそんなこと思っていない。嫉妬と憎しみで一杯だ。
そんな田中くんに声を掛けてくれる女性が現れる。
沢辺みくさん。沢辺さんは、自分のことを見てくれている。みくちゃんと結婚したい。妄想は拡がる。
突如として現れた怪しげな天使の力を借りて、この恋を成就しようと奮闘するが、なかなかうまくいかない。
そして、挙句の果てには、彼女もやっぱり南くん目当てだったことが発覚する。
殺してやりたい。憎しみの塊となった田中くんに天使は、撃てばこの世から存在自体を消せるという拳銃を手渡され・・・
田中くんは、確かに卑屈になってしまって情けない男ですが、人がよく、いつも南くんをはじめ、みんなのことを先に考えてしまう優しさを持ち合わせた男です。
だから、そんな拳銃で田中くんが南くんを消せるわけがありません。
最終的に、田中くんは拳銃を南くんに向けますが、かばい合う南くんとみくちゃんの姿を見て、自分がこの世から消えるべきと、その拳銃の銃口を自らのこめかみに当てることになります。
存在が消えてしまった田中くん。記憶は無いけど、何か大切なものを失ってしまったことだけは覚えている南くんとみくちゃん。二人は、その心に残る大切なものを絆としてこれから仲を深めていくといったラストを迎えます。
ここで終わっていれば、けっこうありがちですが、さすがは演劇作品です。
メタ的に田中くんをこの小さな舞台から脱却させ、田中くんが本当に主役として活躍できる可能性が拡がる外の世界へと連れ出して話を締めています。
自分が輝ける場所を求めて、人は人生を歩み続ける。今、自分が輝いていなくても、もしかしたら、周囲の人を輝かせている時間なのかもしれない。そのことは辛いかもしれないが、これから先に自分が輝くための大切な経験なのだといった感じでしょうか。
観ているうちに、この人、本当に実世界でもこんなおいしい思いをしているのではないかと何か腹が立ってくる南くん、イ ドンヒョンさん。
ヒロイン、みくちゃんはキム ヨンジュさん。普通に可愛らしい姿が、女性としての残酷さを際立たせます。
天使、三澤涼香さん。とぼけたボケで和みを感じますが、同時に人の弱いところを巧妙に突く悪魔のイメージも。
妹、さかいなつみさんは何かグイグイくる感じ。幼馴染、武宮由佳さんは、いつもながらの絶妙な間合いで笑いをとる貫禄。後輩、葛本祥子さんは、純粋無垢な可愛らしい少年イメージ。女教師、KIM BORAさんは本当にセクシーで胸元凝視。
田中くん、安永隆人さんはお見事。嫉妬、憎しみ、自分に自信が持てない葛藤・・・あらゆる感情表現を潜伏させる前半、狂気的に溢れさせる中盤、昇華させ落ち着きを取り戻すラストと綺麗に表現。素晴らしいと思います。
②サムライ、仁義に散る。
デイケアセンターに通う宮本武。
もうお迎えが近い歳ではあるが、可愛くて仕方がない孫が、今の生きがいといったところだろうか。
テンション高い老人たちと一緒に、お喋りしたり、綺麗なお姉さんと一緒に踊ったり。
でも、最近、これでいいのだろうかとモヤモヤが頭をよぎる。
経験した戦争で多くの友を失った。自分はここまで長く生きている。
生きる意義、そして死ぬということ。
そんな中、ちまたを騒がす子供を誘拐するパシフィックウォリアーズとかいう悪い奴らが、自分の孫をさらった。
今こそ、立ち上がる時か。
武は、かつて戦場で命を救ってくれた恩師、宮本武蔵の剣を手にし、そして、必ずあると信じ込んでいるSTAP細胞の研究をするホモの研究者により若い肉体を手に入れ、戦いに挑む。
襲いかかる刺客を倒し、孫の下までたどり着いたが、その悪の根源は自分と同期の・・・
子供の誘拐は、軍の兵士として教育するため。かつて、戦争を共に経験して、その悲劇を知るはずの武の同期がこの誘拐事件のボスだったようです。
仁義を持って戦う。その姿を見せて、改心してもらうために、武はサムライとしての覚悟、切腹により自分の命と引き換えにこれからを生きる子供たちを救うラストです。
よくある正義の反対語は悪ではなく、また違う正義だといったイメージの作品でしょうか。
色々な考えがあるでしょう。日本人同士でも色々なのに、お国が違ったりすればなおのこと。
そんな色々な正義の中には、やはり間違ったものも潜んでいるように思います。
その中の一つに仁義が無いというのはあるのではないでしょうか。誰かを想ってやる。その前提が無ければ、起こす行動は間違った方向に進んでしまうように思うのです。
過去の経験を多く持つ老人、武が、未来に向けて行動するその姿は、自分の大切な孫をはじめ、これからを生きる子供たちへの大いなる祈りがこもっているように感じます。
時事ネタを小ネタとしてふんだんに盛り込みながら、作品自体が今の日本の時事に絡むような多重構造になっているような感じで、これまた演劇らしい巧妙な作品に仕上がっています。
武、伊井元陽さん。一人だけ真面目で周囲から浮いた年寄り。孫を溺愛するおじいちゃん。そこからの若返った熱きサムライの姿。かっこよかったですね。
その、同期で悪のボス、亀丸卓充さん。落ち着いた雰囲気の中に見せる、今、進もうとしている世の中への怒り。彼もまた一つの仁義はあったのでしょう。ただ、失われた命への悲しみを忘れてしまっていたようで、それだけ焦っていたような感もあります。
孫、宮本蕗さん。本当に大学生なのかなあ。なんて、思いながら観てしまうくらいの純粋極まる小学生姿です。ただ、違う作品ではおばあちゃんになっており、これはこれで何の違和感もなく。何か可愛らしいけど、変化っぷりが凄すぎて気味悪いです。
パシフィックウォリアーズの三人衆、吉田皓太郎さん、菊川匠さん、尾関かさねさん。見ざる、言わざる、着飾るといったちょっとシャレた設定。イケメン、美女が馬鹿なことしてます。
ホモの研究者、谷貴人さん。この方、こういう役をよくされるような。確実にこなしています。どこかの番組で放送中止になったやつより、設定もネタも面白いんじゃないかな。
宮本武蔵、品川拓也さん。あの威厳ある武蔵像では無かったですけどね。人の良さそうな、そしてどこかうっかりしてしまってそうな、どちらかというと佐々木小次郎イメージの武蔵になっています。
刺客、アンパンマン、中島彬裕さん。とんでもないキャラでしたが。衣装とメイクの勝利でしょうか。しかし、よく考えるものです。アンパンはあの正義の味方のアンパンではありません。非行少年が手を出してしまう悪いやつ。そこから、あの芸能人のネタにまで繋げます。
と、何かバカオくんとかいうその手下、柴田峻さん。こちらも強烈。テレビだと多分まずいでしょう。
デイサービスのお姉さん、マニトバ湖さん。芸名つけたんだ。いつもながらの綺麗なお姿に決め顔で面白かつ妖艶な雰囲気を醸していました。
③夏の幻
蝉の声が響く、夏祭りシーズンの田舎町。
この春、大阪の大学に通うために一人暮らしを始めた悠一は、久しぶりに帰郷し、田舎に残った友達と会う。
中学生時代からずっと友達だった3人。
幼馴染の女の子、やかましいお調子者の男、そんな男をちょっと厳しいお姉さんのように優しく面倒みる彼女。
喫茶店で、リア充っぷりをからかったり、懐かしい思い出話に花を咲かせたりと楽しい時間が過ぎる。
祭りに行って、その後、肝試しをしよう。お調子者の男の提案だ。
祭りを満喫し、もう疲れたし帰ろうといった雰囲気なのに、男は言うことを聞かない。
仕方なしに肝試しを。
お調子者の男は、本当に調子に乗り過ぎて、悠一を驚かせ過ぎてしまう。
悠一はそのまま山の中へ。
悠一は、そこで一人の懐かしい女性と出会う・・・
この作品は、明日も観ることが出来るので、その時に感想を書きます。
どうも、思い返してみて、何か大事なところを見落としているような気がするのです。
ちょっと集中切れたところがあったからなあ。
寝たのではないです。何か、隣の方が、事あるごとにペンを空中で動かして、何かずっと空気に字を書いていたんですね。
もしかしたら、隠れて舞台を指揮しているのではと思ったりして、そちらもチラチラと見てしまったので。
④オバステ!
ある日、奥深い山の中でバカップルが、オバステ村を見つける。
悪名高き大臣が強硬して施行したオバステ。
名のとおり、そこには家族に捨てられた老人たちが、二度と戻れない俗世を想いながら暮らしている。
新聞記者である女性は、ちょっとイラっとするテンションの部長の指令で、そのオバステ村を取材することに。
そこでは、老人たちが家族のことをはじめ、俗世での思い出どころか、挨拶までを全て心の奥深くに封印して、それなりに楽しい生活を過ごしていた。
でも、その姿はどこか寂しそうで、本当はもう一度家族に会いたいと願っているように記者の女性は感じる。
そして、記者の女性は、そのオバステ村に幼き頃に死んだと聞かされていた自分のおばあちゃんがいると確信する。
オバステの廃止を。
記者の女性は大臣にしつこく願い出て、遂には、マスコミの力を利用して、デモを行う。
大臣は語る。今さらどうしようもない。だって、オバステの第一号は自分の母親で、もう今となっては合わせる顔も無い。
そんなことはない。自分の家族に会いたくない人がいるわけない。
記者の女性の真摯な言葉に、大臣はついに・・・
村田清子の蕨野行とかを読み返してみたくなりますね。
あんまり覚えていないですが、確か死を意識した上での生きるということを描いた話だったような。
この作品は、捨てられた老人たちの生活を閉鎖した空間で独立して生きる姿として、面白おかしく描きながら、そこに潜む悲哀を感じさせているようです。
キャラがイキイキしており、テンポよく話が展開するので、重いテーマは影を潜め、スムーズに話に惹きつけられていきます。
形こそ違えど、今だってオバステは施設という名前に変わって普通に存在しているのではないでしょうか。
高齢化社会における介護や医療問題を考える時に、老人たちをどうしたらいいのかという物理的なことにどうしても先に目がいってしまいます。
共に過ごしてきた時間、その中で刻まれる思い出、そして、何よりも互いに自分にとってかけがえのない家族であることを頭に置けば、高齢化社会がどうあるべきなのかという答えに向かって私たちは正しき道をたどることが出来るのかもしれません。
バカップル、香西絋輔さんと真田彩加さん。冒頭から唖然とする強烈な印象を残して、そのまま話から消えていかれました。やり逃げですね。オバステなど考えることも無い若者世代の象徴でしょうか。後術する、記者や部長は、それよりも少し上の世代で、ぼんやりと高齢化社会を意識している。大臣は高齢化社会問題に直面する世代。そして、張本人となるじいちゃん、ばあちゃんたち。日本の社会構造を上手く表しているようです。
部長、石垣光昴さん。嫌味ったらしいキャラ。初めは興味本位だった感じが、シーン転換のたびに、記者の女性に感化されていくような印象は演出かなあ。サングラスが最後に普通のメガネになっていたりしたので、目を背けず、ジャーナリストとして、この問題と向き合おうとしたような印象をもったのだが。
記者の女性、松嶋菜々子さん。あの空気感は凄い。また、強烈な役者さんを発見したといった感じです。
大臣、谷貴人さん。ホモから一変、真面目な役人になりました。現実と理想の調整点を見出すことが難しい、このオバステ。決めなくてはいけない立場の苦しみが滲み出るような演技です。
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