ちゃうかちゃわんは、あります。200回以上観ました。【劇団ちゃうかちゃわん】140614
2014年06月14日 大阪大学豊中キャンパス学生会館2階大集会室 (105分)
昨日に引き続き観劇。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/110-342b.html
今年は6本全てバランスよく素晴らしかった。
多くの魅力的な役者さんを発見。
これからも楽しみだ。
⑤スーパーヒーロー室岡です
正義のヒーロー、室岡。
今日も痴漢にあっている女性を助ける。
町を一歩歩けば、色気丸出しでサインをせがむ女性ファンも多い。
町の平和を守ってくれる強く優しく素敵な男。
というのは、実は全部仕組まれていること。
市長から賄賂をもらい、そのお金を悪の親玉に渡して、手下の怪人たちにはいつも戦闘で手加減してもらう。
家に帰れば普通に家族がいる。ちょっとキレたら怖そうな妻と、年頃の可愛い娘。長男は、自分の実態を知っているのか、いつも冷たく鋭い視線を投げかけてくる。
そんなある日、娘が家に服部という男を連れて来る。結婚のご挨拶らしい。どうもデリカシーに欠けたいい加減そうな男だが、何か正義のヒーローとしての素質を感じ、自分の跡継ぎになんて考え始める。それもそのはず、男は悪の親玉の息子だったのだ。共通のオーラがあったのだろう。
そんな矢先、市長は知事に昇格になり、不要となった正義のヒーロー室岡にクビを宣告。
悪の手下たちも、悪よりも汚い室岡になぜ自分たちは媚を売らなくてはいけないのかと反発。
追いやられる室岡は歌舞伎町で屑のような生活を始める。そして、妻も廃人に。
一方、服部は、自分の悲し過ぎる出生の秘密を悪の親玉の父から聞くが、それでも、親子の絆を深め合い、この町で共に暮らしていく決意をする。
色々なものを失って、町に戻ってきた室岡。
そこには正義として振る舞うかつての悪の親玉、そしてその息子、スーパーヒーロー服部がいた・・・
RPGのパロでありがちな、人畜無害のダメ勇者と、実は誰よりも世のことを考えている魔王みたいな感じの話か。
正義になると、自分の正義の存在を維持するために、悪を自ら創り出し、無理矢理でも立場を守る独裁の道をたどり始める。悪は、逆に独裁として振る舞う中、自分をもっと周囲に認めてもらいたいという欲望が生まれるのか、自分を変えていき、世と協調していこうとし始める。それが、なぜか正義の道を走り始めているかのように見える。
でも、正義と悪など、表裏一体で、切り離せるわけもなく、その関係性は切り替わりながら永遠に彷徨う。
そんな感じのブラックなオチで話を締めています。
下ネタのオンパレードと聞いていたが、何だろうか。最近、がっかりアバターを観ているからおかしな免疫がついたか。ほどよい湯加減ぐらいにしか感じられず、むしろお色気シーンに、これはお得だと心躍らせる。
室岡、山本景介さん。悪いヒーロー。というか、悪くなってしまったヒーロー。元々は高い志を持っていただろうに、人は知らぬ間にこうなるという姿を飄々と当たり前の感覚で演じる。確信犯的な雰囲気が、この作品のブラックさをよく出している。
服部、大川楠人さん。周囲に合わせない自分だけの空気を持って人と接する、付き合うと苦労しそうなキャラ。因果応報のラストが似合う。
悪の親玉、亀丸卓充さん。魔王的な大きな悪ではなく、人として腐った小さな悪を見せる。どこにでもいる私利私欲に溺れた悪さを醸す。
息子、角淵敦基さん。暗く籠った狂気。自分以外は悪としてしか認めないような歪んだ正義感に囚われた感じ。
娘、松山裕美さん。あの彼氏と付き合えるのは、ここまで突き抜けた何も考えない明るさを持たないとダメなのか。ある意味、正義も悪も無い平和の象徴なのかも。
妻、岸川菜月さん。クールな美しい雰囲気から豹変するキレキャラ。ご自分の魅せ方をものにされているのだろう。徹底的に落ちぶれていく悲劇的な感じもまた魅力か。
市長、石橋啓太郎さん。濃い。くどい。欲にまみれ、正義も悪も関係なく己の手中におさめるという嫌悪感を見事に抱かせるキャラ作り。この人の正義は、自分にとって良いこと以外は無いのだろう。
③夏の幻
簡単なあらすじは、上記リンク先の昨日の感想を参照。
意味深な冒頭のシーンや、作品名どおり幻かのような雰囲気を醸す女性が気になり、主人公の悠一や女性が現実に生として存在しているのかを2回目拝見した時に、もう一度考えてみようと思いながら観ていたが、そんな深読みはいらないのかな。
故郷に戻った短き時間に、自分の心の底に深く潜り込んでしまっている記憶を掘り起こしたような捉え方だろうか。
ジンジンとうるさく響く蝉の声。毎年、毎年、聞くこの蝉の声。本当に毎年、うるさいとしか感じなかっただろうか。その音を楽しく聞いていた時もあったのでは。今の悠一には、何かそれを聞くことで、自分の中に眠る大切な記憶を突かれるから、不安と焦りを感じて、嫌悪感が生まれているのではないか。
来年の蝉の声を悠一はどのように感じて聞くのだろうか。
故郷の変わらぬ同じ風景や友人たち。目に映る景色は同じでも、それを見てどう心に感じるかはその時で異なるのだろう。それが生きている、人生を歩んでいる証拠なのかと思う。
今までは幻だった女性を見て、そして、これまでもずっとしっかりと見ていた幼馴染の女性を見て、来年の悠一はどんな想いを抱くのか。
一夏で命を全うする蝉と異なり、巡る夏から自分の生きている証を、成長を感じられる人間の素晴らしさを思わせる作品。
悠一、原悠太さん。ちょっとぶっきらぼうで、想いを受け取るのも、伝えるのも不器用そうな感じ。故郷を離れて通う大学生活の中での数々の経験が、彼に成長を遂げさすのだろう。
幼馴染の女の子、竹内雪乃さん。昨日は気付かなかったが、この方、昨年のフライング悦子か。妙に初々しく、ちゃうかにアイドル入ってきたんだなあとか思っていたが、ずいぶんと落ち着いた秘めた心情表現をされる。良く言えば、貫録つかれた、悪く言えば初々しさが消えた感じか。
同級生の男、福島健さん。彼女、KIM BORAさん。お二人のリア充っぷりが本当に微笑ましい。爆破したくなる気持ちもよく分かる。お調子者の子供のような福島さんと、優しくも厳しく彼を見つめるKIMさんの魅力に溢れたカップル。
山の中で出会う女性、北村映璃さん。ずいぶんと透明感があり、消えてしまいそうな雰囲気と同時に、その控えめな笑顔と自分の強い主張は、逆に大きな存在感も醸す。この方の雰囲気で、作品名の幻が強く浮き上がる。キャスト選びの勝利か。
喫茶店の夫婦、角淵敦基さんと桂しょう子さん。ちょっとしか登場されないのだが、角淵さんは室岡で御出演のキャラとは同一人物かを疑うくらいの爽やかな中年おじさん。桂さんは、田舎にいそうな懐大きく優しいおばちゃんを魅せる。
④オバステ
上記リンク先の昨日の感想を参照。
あらためて、おばあちゃんたちが可愛らしいね。
⑥NEON
ニーナは気付くと、ネオン街に。
自分のことが分からない。記憶を誰かに盗まれてしまったようだ。
現れた道案内人を名乗る男と共に、このネオン街から脱出するべく、夜の町中を彷徨う。
町の情報通の猫たち、ライバル意識の強い夜の蝶たち、人を取り締まることしか頭にない悪質な警察、心優しき盲目の女性、その女性を愛する記憶泥棒、記憶泥棒に祖父の死の悲しい記憶を盗まれた子供、人の大切な感覚と引き換えにいい加減な情報を手渡す占いバァバ・・・
ニーナは、そんな人たちと出会う中で、悲しい記憶を思い出し・・・
自分のことを大切に想ってくれていた人を失い、記憶どころか自ら自身を消し去ろうとした女性が、その大切な人の道案内で現実世界にまで戻ってくるまでを描いた話。
どんなに悲しい記憶でも、それを消し去っては人は生きていけない。大事な感覚を失ったとしても、その記憶を心の支えに人は生きていける。
これからも、あなたの大切なものを奪おうとする悪い人たちと出会い、本当に何かを失ってしまうかもしれないが、心に刻んだ自分との思い出を胸にして、生を全うして欲しい。
そんな愛する人を残して、死へと向かうしかなかった悲しい男の祈りの念が生み出した奇跡を見るような話だったように思います。
闇の中を人工の光が照らすネオン街へと放り出されたニーナ。暗闇を照らしていたのは、彼のニーナへの愛情だったのでしょうか。それが消えた時、ニーナは再び、闇に包まれるのではなく、本当の太陽の光を得て、これからの人生を歩むのでしょう。
ネオン街でオール飲みなんかしていたら、夜が明け、朝を迎えても明るさはそれほど変わらないですよね。でも、やはりその光の感じ方は異なる。何か寂しさと、一日がまた始まるという前向きな気持ちが同居する時間。作品名から、その雰囲気が何となく伝わるような気がします。
ニーナ、サンカー・ニヴェダさん。驚愕ですね。留学生の方なのかな。もちろん、日本語がペラペラなのは驚きですが、それよりも彷徨う心情描写がとても丁寧になされていること。言葉一つ一つを大事にされているような感じがとても素敵でした。
道案内人、天野翔也さん。甘い優しさ漂うダンディーさん。ニーナへの静かな想いがヒシヒシと。
記憶泥棒、橋詰隆一さん。道先案内人と逆でクールに優しさ漂わすような感じか。こちらは、盲目の女性への真摯な愛を。
盲目の女性、マニトバ湖さん。華やかな衣装でとてもお綺麗。想いを受け取ることへの本当の喜びを知る女性。それが感じられる笑顔を魅せる。心の目でその人の想いを見て取る。
子供、岩崎未来さん。子供だったなあ。あんな泣きの演技を可愛いと思わせる大学生はなかなかいないんじゃないだろうか。普通、イラっとすると思うんだ。
占いバァバ、菅原優香さん。怪しげな空気たっぷり。魔女のような雰囲気が、ネオン街をちょっとメルヘンチックな感覚で見させる。
全員にコメント書けていませんが、全作品通じて、とてもキャラが立っていて、観やすい作品に仕上がっていたように思います。
だから、全員をきちんと観れてはいますので。
2年前にもやった、おまけ。勝手に決めた賞。
最優秀作品賞:「サムライ、仁義に散る。」
優秀賞:「オバステ」
最優秀男優賞:安永隆人(災難だったね、南くん!)
優秀賞:伊井元陽(サムライ、仁義に散る。)
最優秀女優賞:松島菜々子(オバステ)
優秀賞:サンカー・ニヴェダ(NEON)
特別賞:谷貴人
松田佳奈
宮本蕗
北村映璃
大川楠人
敬称略。
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