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2014年6月20日 (金)

UNKNOWN HOSPITAL【劇団壱劇屋】140620

2014年06月20日 HEP HALL (105分)

すっかり貫禄がついてしまって。
もう、関西が誇るとか、あらゆる表現手法を融合させた総合エンターテイメントとかのキャッチフレーズが、この劇団のためにあるぐらいにふさわしく思える出来。

いつもながらの圧巻のパフォーマンスに、個性的な世界を舞台に創り上げた作品だった。
これまでに拝見したSQUARE AREAとLumiere Dungeonを足したような感じだろうか。
(
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/square-area1306.html)
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/lumiere-dungeon.html)

ただ、少し混乱しやすい話の展開。まあ、この作品はそこに魅力があったりもするのだが。
筋を追わないと理解出来ないような話では無いので、それほど大きな問題ではないが、やっぱり気になって、頭がそちらに向かってしまい、あの素晴らしいパフォーマンスへの視線が薄れる。
そして、上記2作品もこの作品も迷宮からの脱出のようなイメージを持つ話のように思うが、SQUARE AREAは人の想いや優しさをベースにしているのに対し、Lumiere Dungeonはミステリーっぽく、この作品はサイコパスやオカルト要素などの組み込みでややブラックな感覚が強い。
個人的には、SQUARE AREAのような描き方の方が好きなのと、従来、この劇団を観始めた頃はそんな要素の方が多く含まれていた作品が多かったので、少し違和感は持っている。
気になる方はDVDが販売されているので、観るといい。

精力的に公演を重ね、コンスタントに賞を受賞してその地位を固めてきた劇団。
一つのご自分方のやりたいスタイルが確立した作品でもあるのだろう。

大きな衝突音に、回転する赤いランプ。
黒い遺体袋に運ばれて、女は病院にやって来る。
痛い、苦しい、死ぬほど・・・
でも、まだ生きている。
主治医は、和かな笑顔を見せながら、全力を尽くすと女の体にメスを入れる。
気付くと女は病室のベッド。あれだけの怪我がすっかりと治っているようだ。
しかし、主治医の診察では、数多くの病名が連呼され、最後には分裂病だと告げられる。
ロボトミー手術。集団催眠療法の実施。
幻覚なのか、自分に何かを訴えようとしてくる血みどろの人。
自分は患者なのか、医師なのか。
多重人格のように交錯し始めるのは、女の現実なのか、妄想世界なのか。
その不可思議な世界を彷徨う中、女の真実の姿が浮き上がり・・・

最終的に明らかになる真実の姿は、東京公演も控えていてネタバレになるので記しませんが、医師と患者、女の中の人格が交錯して、ぐちゃぐちゃになって混乱する話をうまい具合にまとめています。
自分とは何なのか。
傷ついた色々な人が融合して出来上がる新たな人。それは、そんな人たちのいいところだけでなく、悪いところも含めて出来上がる。
それは欠陥なのか、葬らないといけない存在なのか。
医療機関の閉鎖性、医師と患者のような診る側と診られる側の境界のあやふやさ、色々な人格が集まって創りだされる一人の人間。
こんなものが、そのまま演劇界、創り手と観劇する者、一つの劇団、作品などにも通じているように感じます。

間に2回ほど、混乱する話を整理する役者さんの姿を見せて、息抜きを入れるようなメタ的な手法も使っているようでした。
この時間だけは素の役者さん方の姿が映し出され、あの凄い動きを集団でやり遂げる人たちが、こんな普通っぽいんだと親しみやすさもうまく魅せます。

感想はこんなものとして、この作品、東京で8/30から9/2まで公演があります。
一ファンとして、どうか観に行って欲しいなと思っています。
おふざけなのか、本当なのかは知りませんが、現時点でまだ予約が2桁も無いのだとか。
まんざら、嘘じゃないのかもなと思ってしまいます。
というのも、私がこの劇団を初めて拝見した4、5年前は、本当に数人しか客がいない時があり、どんだけしょうもない作品なのかと思っていたら、相当、感動する素晴らしいものだったので、驚いたことがあります。私も観劇を初めたばかりだったので、どうして、あんだけ面白いのにこんなことになるのか、一度、劇団のブログにコメントを書いたことがありますから。
コメントを書いた時に、劇団主宰の大熊さんの回答は、宣伝下手も理由の一つとのことでした。
実は、これはその後、多くの劇団を拝見する中で、本当に的を得ているなと思っており、この劇団、確かにマイペースであまりガツガツと宣伝しません。
自分たちは自分たちのペースで、やるべきことをやって、いい作品を創るみたいな。非常にかっこいいことですが、現実を考えると。
と、思っていましたが、そんな感じの真摯な態度が、きちんと数々の受賞に繋がり、多くの魅せられたファンを得て、ついには、HEP HALLが満席です。私も完売間近にいそいで予約を入れました。
魅せられた人の中には、リピート観劇したいけど、少しでも多くの人に観てもらいたいからと2回目以降は前売り予約出来るのにしないで、立ち見の可能性だってある当日券で行くと言われている方もいます。
本当に誰かに観て欲しくなる、人に薦めたくなる劇団なのです。
私も、今回、この作品を観劇したので、これで自信を持ってお薦めできます。
大丈夫です。絶対に何かしらの感動は得ることが出来ると思います。
だから、是非、足を運んでみてください。
ちなみに、私のお薦めするDVDは、SQUARE AREA、6人の悩める観客、突撃!アンブレラ島!!です。

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コメント

本当に壱劇屋は、いいお客様と出逢えて、愛されて、大切にされてるのだな、とつくづく思います。
SAISEIさん、御来場誠にありがとうございます。感想読んで、うるっとくるものがありました。
また今後もよろしくお願いします。
そして、わたしは東京公演の客席を埋めるために頑張ろうと思います(*´ω`*)

投稿: 奥田夏実 | 2014年6月20日 (金) 22時56分

>奥田夏実さん

コメントありがとうございます。

やっぱり、東京公演はお手伝いされるんですね。
大阪でも、その場にいないだけで、お力は私たち客にも伝わってきていますけどね。
現場にいらっしゃるなら、劇団の皆様もパワー倍増でしょう。

何とか、壱劇屋の名を東京にも知らしめてください。
一度観さえすれば、何かしら惹きつけられる劇団であることは間違いないですから。
皆さんのご活躍を楽しみにしております。

投稿: | 2014年6月23日 (月) 10時42分

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