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2014年5月24日 (土)

驚く方法は忘れた【sputnik】140524

2014年05月24日 カラビンカ (70分)

まあ、いつものごとく、よく分からない作品でした。
ただ、いつもは何となく、心ざわつく中、温かみや、場合によっては漠然とした不安感みたいなものを感じるのですが、今回は少し異色です。
行き着いた先は、私は不気味さ漂う畏怖感です。
逆に温かみを感じないから、こういったことになるのだという示唆もあるような気がしますが・・・

<以下、覚えているままに書いた訳が分からない文章ですが、あらすじ部分のキーワードがネタバレになるので、公演終了まで一応、白字にします。公演は明日、日曜日まで>

どこかのレストラン。
女性がトマトソースのパスタを頼んで、失敗したといった感じで食べる。
白いシャツに赤いソースが飛ぶと困るから。
気を付けて、と男が声をかけているが、女性が座っている状況や店員の態度から実存はしていないみたい。
やがて、携帯に連絡がはいり、店を出る。

その店では、明日、結婚式のパーティーがあるらしく、その幹事が店員と一緒になって大きなケーキを運ぶ。
店長から、出すワインを選びように言われ、試飲するがあんまり分からない模様。
直感でメルローの赤を選ぶ。
友人としての祝辞もまだ出来ていないみたいで、白紙の紙きれをテーブル上に悩んでいる。

女性は記者みたいだ。
幾つもの取材を着々と地道にこなすタイプに反して、先輩女性は、危ない強烈なネタ一本にかける感じ。だから、仕事が全然、進んでいないみたいな時も。
夜遅くまで仕事をすることも多く、後輩男性はその送り迎えを買って出ている。後輩男性は、先ほどのレストランで一緒にいた男。

女性は何かの取材で、恐らくは元少年兵士だろうか、無機質に人を殺す経験をしてきた男に取材をしているみたい。飛び交う赤い血の枠で生きてきたような人なのだろう。
行方不明になっている先輩女性と後輩男性も、この男に関わり、行方が分からなくなった可能性がある。
次は私ではないのか。
女性の不安はピークに達し、夜道に声をかけてきた女性を刺す。
いつの間にやら現れた後輩男性が女性に声をかける。
あの女性は刑事。自分たちを殺して、あの人まであなたは殺してしまったと。

レストランでは結婚式のパーティーの準備が行われている。
服を血で染めた女性が、甘い物が食べたいと入って来るが、パーティーのこともあり、さらに怯える店員の態度や女性の姿をみて、丁重に追い返す。
扉を開けた瞬間、刑事が銃を発砲。
女性は素早く逃げるが、店長は撃たれる。店員は机の下に隠れて震えている。幹事の男は意外に冷静に立ちすくんで状況を見守っている。
女性はケーキの入った箱を倒して、刑事と揉み合って銃を奪い、刑事に発砲。
ケーキは潰れ、トマトが床に転がっている。

また後輩男性が出てきて、先輩や自分を殺して、さらに刑事まで殺した殺人犯とののしるが、それは違うと女性は反論する。
部屋に入った時に血まみれになっていたという事実を歪んで受け入れているだけだと。
しかも、後輩男性は女性自身であり、女性が知らない事実を知っているわけがない。

そんな狂気的な状況の中、幹事の男が赤ワインを飲みながら、祝辞を読み始める。
その内容は・・・

まあ、とりあえず、覚えているままに書いてみましたが、訳が分かりません。
途中、思考停止状態に陥りましたしね。ここは、必ずと言っていいほど、そうなるので、もはや驚くこともありません。ここを観る時の自然な観劇スタイルです。
何が現実で妄想なのか。さらには真実で嘘なのか。
最後の祝辞の内容は、国家が、そんな少年兵士の様な人を殺すことに抵抗が無いような人材育成を始めて、軍隊化しようとしているのではないかみたいなことを匂わせているようでした。

当日チラシでは、相対的な感じ方としての温度のことが触れられています。
どんなものにも温度があるわけで、芝居にも温度があるなら、その絶対温度があり、それをどう感じるかは、こちらの持つ温度によるみたいな感じのことが。この作品だって、あたたかいと感じるのではと。
どうでしょうか。会場内がえらい寒かったですが、これはこちらの温度を下げて、相対的に温かく感じさせる演出だったのかな。
観終えて感じるのは、作品の表面は冷た目ですが、内側は温かいような気がします。そして、なぜ、内側が温かいのに外が冷たいと感じるのかが不気味です。その不気味さは、私の心を冷やします。

温度よりも、この作品で感じるのは色でしょうね。
赤色。
血のイメージでいいのでしょう。血はある意味、温度を感じさせるものですから、行き着くところは温度かもしれませんが。
そうなると、上記した不気味な感覚は、人を平気で殺すことへの嫌悪感かもしれません。
人に血が通っていることは誰でも知っており、それが人の体温を作り出していることも。
なのに、人は人を殺すときがあります。
感覚的にですが、温かい物を殺すのは抵抗があり、冷たい物は平気で傷つけても大丈夫みたいなところはないでしょうか。冷たいイコール死みたいな。
少年兵士のような人たちは、その人の内部に血が通っていることを忘れさせられ、温かいとか冷たいとか関係なく、人は温度の無い生き物だと洗脳されているような気がします。つまりは、もう初めから生きているのか死んでいるのかも分からない。血もトマトソースと同じ色の物体でしかないので、温められるし、冷やすことも出来る。そこに、生死を分かつ人の体内を流れる決まった温度を持つ血であるという感覚は消えている。

自分はそんな幼い頃に兵士にさせられるような環境に生まれず良かった。・・・では、すまないようなことも感じます。
血は人の温度を作り出すもの、同時にその人の心が流れている場でもあるように思います。心は脳だという考えもありますが、心臓であるなら、そこから流れる血はその人の想いそのものでしょう。
それを否定することは、実は今の世の中でも徐々にそんなことが浸透してしまっているような気もします。
そうなると、私たちは、少年兵士のように、人を殺すことに抵抗が無くなってきているのでは。
それも、教育方針などにより、国家レベルで人の想いを大切にせず、自分のことだけを優先して生きるようなコミュニケーション不全の社会が創り上げられているとするなら。
そんな本当の社会の現状を一番、把握しやすい記者の女性が、徐々に血への感覚を失っていったなら、この作品のように、どこかに自分のもう一つの人格を置き去りにし、人の死への抵抗感が薄れていくような気がするのです。
何かやはり不気味な感覚が残るので、本当は、その血の温かみを取り戻す人の姿を見せて欲しかったですが、そこは感じ取れませんでした。

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