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2014年5月10日 (土)

アベノ座の怪人たち【スクエア】140510

2014年05月10日 近鉄アート館 (135分)

怪人たちの面白キャラと、この劇団独特の軽快なのか、おふざけで緩いのか、不思議なバランスのある魅力が相まって非常に見応えのある作品でした。
今回は、面白さよりも、心に響く言葉が印象的かな。
自分の能力を、人と比べて悲観したり、勝手に限界を決めてしまったりと、自分を高めることに彷徨ってしまった人に、かつて辛酸をなめた人生を歩んだ先輩たちの経験も踏まえた心のこもった言葉が、その道しるべとなったような話でしょうか。
作品は、役者さんを主人公に、演劇世界での設定になっていますが、現実世界でも自分を魅せることを見詰めることが出来るような話のような気がします。

<以下、若干ネタバレしていますが、チラシに書かれたレベルを超えてはいないと判断して白字にはしていませんので、ご注意願います。公演は日曜日まで>

公演の劇場となるあべのハルカス8Fの近鉄アート館にちなんで、舞台は超高層ビルにある多くの役者たちの憧れの劇場である名門、アベノ座。
ここで、NANIWA八犬伝という名作が公演されている。
姫の下に、文字の書かれた数珠の玉をもった八犬士が集まるというクライマックスシーン。
ところが、この姫を演じる新人女優がとんだ大根役者で、段取りはおかしいわ、セリフは覚えていないわ、間違えるわ、滑舌は悪いわ、演技も全く心がこもっていないわで・・・
挙句の果てには、数珠を舞台上にばらまき、結局、八犬士の仮面が外されることなく、グダグダで終演。

終演後、小道具は怒り心頭。
人のいい舞台監督は何とかなだめるが、新人女優には反省の色も無い。
こんな女優がなんで、このアベノ座で、名作の主演をといったところだが、どうも新人女優の兄が名役者だったらしく、その七光りでこの座を射止めたようだ。そんな兄は、数年前に失踪して、演劇界からは姿を消しているみたいだが。
小道具からきつく責められて、新人女優は逆ギレ。この作品で最も大事な小道具である、数珠の玉をダクトに投げ入れるという暴挙に出る。
マチネが終わったばかりで、数時間後にはソワレの公演がある。もちろん、精巧な作りの小道具なので容易に作り直すことは出来ないし、予備も無い。
かくなる手段は、この巨大ビルの中で玉を探すしかない。
焦る舞台監督と嫌々ながら付き合わされる新人女優の玉を探す旅が始まる。

その旅の中で、かつてアベノ座に憧れ、舞台に立った、舞台を目指しながらも願い叶わなかった役者たちが、このアベノ座のあるビルに住みついて怪人となった姿と出会っていく。
人の不幸を嘲り笑う喫茶店のウェイトレス、自由気ままに感性だけで生きる花屋、頑固一徹の社員食堂の料理人、嘘ばっかりつく警備員、ミステリー好きで妄想のような深読みをする館内アナウンサー、自分の不出来を全て親のせいにする窓の清掃作業員、色々な劇場で出禁となっている観劇客、そして、寡黙な清掃作業員。
ソワレ公演が近づき、戻らない二人を追う小道具、新人女優を盲目的に応援し続けるファンを巻き込み・・・

といった感じで、かつての名役者であった怪人たちと出会い、新人女優は己の女優としての心構えを鋭く指摘されながら、考えをあらためていく。
そして、過去にあった兄とのある事件と対峙して、自分が女優として舞台に立つことの意味合いを見出していく。
怪人たちから様々な厳しい言葉を投げかけられて苦しみながらも、己の宿命を見詰める。新人女優に怪我をさせた過去に苦しむ兄の姿。
よくは知りませんが、何となく、この旅自体も八犬伝のような話になっており、その終結がそのまま、新人女優が演じるNANIWA八犬伝のエンドである、全ての仮面が外れて、自分の道を貫くために歩んでいくようなものと繋がっているようです。

怪人たちのキャラがとても役者さんの雰囲気とマッチしており、面白いのですが、その面白さよりも、語られるまともな言葉にけっこう感動してしまいます。
一瞬で登りつめれば落ちるのも一瞬、演じているよりも今の姿の方が魅力的なのはなぜなのか、食堂に価値があるのではなく料理人・料理があるから価値が生まれる、逃げるのではなく受け入れればもっと変われる、心の奥底にある強さを信じる、憧れ愛した人たちの魂を感じる、辞めたら誰かのせいに必ずしてしまう、正しいものを観たいわけではない・・・
もっと色々とあったはずですが、覚えている限りではこんな感じの言葉が、面白怪人たちから急に語られ、一瞬、心を貫かれてしまうような感じです。
偽りのない自分を自由に魅せる。それが輝いて見えるのかな。
そのために、自分で努力をして、自分で道を切り開く。そして、そんな人の周囲には、必ずそれを信じて応援してくれる人たちが手を貸してくれる。
手を貸してくれてありがとう、まだ力足りずでごめんなさい。
そんな心がただ人生を歩むのではなく、登りつめていくのには必要なのかもしれません。

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