地下3階の人々 コメディVERSION【THE EDGE】140512
2014年05月12日 ライブハウス地下一階 (130分)
昨年拝見した地下一階の人たちの続編でしょうか。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-17.html)
本当は、この間に、地下2階の人たちの公演もあったのですが、それは観逃しています。
今回も、もう一つのホラーVERSIONを。
重ね重ね、この観れなかったことに悔いが残るような観劇となりました。
非常によく出来た面白い作品だったのです。
バーに集まる様々な客の会話から浮き上がる人生。
こんなエピソードは、ちょっとしたことで、楽しく笑える話にもなるし、悲しく絶望的な話にもなるのでしょう。
そんな相反する異なる結末を、予測することも出来ずに、どうなるか分からずに日々、生きる私たち。
人生をまさに垣間見るような作品だと思います。
バー地下3階。
以前拝見した地下1階と同じく、一人の客が座っている。スペシャルシートと呼ばれる舞台上の観客席に座って観劇する強者だ。この日の方は、ご出演の役者さんのお父様だったらしい。
そして、マスターと女性店員がやって来る。
女性店員は地下1階の時と同じ方だが、マスターは違う人。どうも、今日は訳あって、代理マスターらしい。
女性店員も辞めてから、久しぶりに戻って来ているみたいだ。
このあたりは、本当は地下2階の作品を観ていれば分かるのかも。
そして、この二人、なんだか怪しい。
店に入って来た風俗嬢。と言っても、元ではあるが。その元風俗嬢から、マスターと今日、DVDを返すために会う約束になっていると言われ、何か妙に焦っている。
女性店員は顔馴染みだが、代理マスターは初めてなので、自己紹介をするが、女性店員は、代理マスターに偽名を使わせたりしている。
どうも、この二人、何かマスターとあって、隠している様子。
話は、そんなバーにやって来た何組かの客たちの会話から、その人の人生を盗み見しながら、この二人とマスターの謎を映像を交えながら明らかにしていくよう展開する。
最初は、女性二人。
この女性二人と男性一人で、一緒に暮らしているらしい。
映像で田舎から出てきて、三人仲良く、アパートでの生活をし始めた姿が映し出される。
その後も、一緒に遊園地に行ったり、浅草で外国人しか買わないようなおかしなTシャツをお揃いで着たりと楽しい日々だったみたいだ。
今は、あまり一緒に出掛けることもなく、こんなバーで二人で過ごすのも久しぶりらしい。
一人の女性が、田舎に帰ることにしたと言い出す。
何も知らなかったともう一人の女性は驚くが、それに対して、女性はいつもそうだったと責め始める。
冷蔵庫の物を勝手に食べたりする、トイレットペーパーが無くなっても補充しない、ゴミの出す日を平気で間違える・・・
くだらないことだが、共同生活で溜まっていた不満をぶちまけ始める。
要するに自分のことしか考えていないのだ。
だから、あいつの想いにも気付かない。
ずっと、あなたのことが好きだったあいつは、いつまでもそれに気付かないあなたのことをあきらめて・・・
私は、そんな落ち込むあいつと一緒になることにした。そして、一緒に部屋を出て行く。
あなたを友達とは思っていない
自己中心的だったあなたの報いだと言わんばかりに、全てを吐露して、勝ち誇ったようにバーから女性は出て行く。
話を聞いていた元風俗嬢は、残された女性を励まそうと声をかけるが、女性は涙しながらもいきなり笑い出す。
そして、あいつに電話をする。
大丈夫、これで、何の心配もなくあの子は出て行けるでしょう。ちゃんと幸せにしないと許さない。だって、あの子は私の大切な友達なんだから・・・
それにしてもマスターは遅い。
どこで何をしているのか、5時間前ぐらいのマスターの映像が映し出されるが、特に何もなく街をブラブラして、いつもどおり、風俗に行ったりして。
しばらくして、怪しげなオタク風の二人が入ってくる。着ているTシャツもよく恥ずかしげもなく着れるなといったもの。恐らくは浅草で買ったのだろう。
どうやら、この時間にいつもこのバーにお目当てのアイドルが現れる情報を入手してやって来たらしい。
一人の男は、まあ度は越しているが、熱烈なファンといったレベルだが、もう一人は明らかに一線を超えている。自分の全てをそのアイドルにゆだねる以上ぐらいの覚悟だ。
いつも自分に微笑みかけてくれると言い張る男は、彼女に告白するとまで言い出す。
そんなことは無理だと説得するものの、あまりの熱意に協力することに。オタクの友情か。
やがて、そのアイドルが女性マネージャーと一緒にやって来る。
あれだけ、自信満々で覚悟を決めていたのに、いざとなるとビビッてしまい、オタク二人はトイレに逃げ込む。
アイドルとマネージャーは二人で会話を始める。
普通の女子トークっぽい恋愛話から、昔、抱いていた夢なんて話も。
アイドルだから恋愛は制限されるし、色々とストレスも溜まる。女性マネージャーもしばらく、忙しくて恋をしていないらしく、ビビっときた人が現れたら確実に喰らうつもりでいるらしい。インテリ風で冷静沈着なイメージだが、宝塚を目指し、ベルバラに憧れていただけにかなり熱い肉食系みたいだ。幼き頃の夢は恐竜になることなんて少し飛んだアイドルの子とは、まあいいコンビなのかもしれない。
アイドルはまあ、ありがちではあるが可愛いけど、サバサバした性格みたいで、ファンはファンと割り切っている。笑顔で相手を見るのも、職業病みたいなもので、そこに心がこもっているわけではない。ファンがいてこそのアイドルと、ファンを大切にする気持ちは大きいみたいだが、そりゃあ誰も好き好んで、おかしな男を恋愛対象にはしないだろう。
トイレから出てきて、意を決して告白した男はもちろん覚えてもらえているわけもなく、相手にされず、バーを飛び出していく。
追いかけるもう一人の男。その男になぜか熱い視線を送る女性マネージャー。
代理マスターと女性店員は、偶然に出会った。そんな映像が流れる。
歩道橋の上。互いに自殺をしようとしていた。
そんな二人がなぜ、今、このバーで・・・
大人の雰囲気を醸すいい女がやって来る。
待ち合わせをしているらしい。
女の回想が映像で流れる。
売れないミュージシャン。誰一人、拍手もしない初ライブで一人だけ精一杯の拍手を送った。
そんなミュージシャンと一緒に過ごした時。やがて、訪れた別れの時。
ギターを抱えた男が入って来る。
かつて、その女性と付き合っていたミュージシャンだ。
今は、けっこう有名なミュージシャンにまで登りつめたらしい。
久しぶりの再会に、昔話に花が咲く。
でも、別れた時のことにその話がたどり着くことは避けられない。
ミュージシャンの誕生日に切り出された別れ話。
売れないから、将来が無いから、切り捨てたのか。あの日以来、誕生日が来るたびに、悔しさを押し殺して、必死に頑張って、今の地位を築き上げた。
少し、声を荒げるミュージシャンに、女性は言葉が無い。
二人とも、別れた明確な理由はきっと分からないのだろう。ただ、時の流れがそうさせてしまった。
ミュージシャンも、女性も、あの時、何か互いに違う選択をしていたら・・・
例えば、泣いて別れたくないと言っていれば、本当は別れるつもりなんてないと一言、言えていれば。
ミュージシャンは今度のライブのチケットを女性に手渡すが、女性は、結婚することになったと告げて、バーを去る。
別れ話。
代理マスターは思い出す。妻との離婚を。
ある日、突然、離婚届を突きつけられた。
息が詰まるらしい。初めから愛していなかったようなことまで言われる。子供でもいれば違ったのかもしれないが、種無しだったから・・・
妻の離れた心をもう一度、引き寄せることはどうやっても出来なかった。
そんなつらいことを回想している中、妊婦がバーにやって来る。
誰かを探している。どうやら、マスターらしい。
風俗の名刺が見つかり、怒り心頭みたいだ。
その場にいる、元風俗嬢は肩身が狭い。
まあ、マスターの戻りをこれだけの時間待っていることから、そんなことよりも別の理由で居心地が悪いみたいだが。
風俗は是か非かみたいな、その場にいる男には手厳しい会話が続く中、女性店員がもう店を閉めるという。
マスターはきっと今日は戻って来ない。代理マスターだけで頑張ってきたので、今日はもう疲れたと。
渋々ながら、マスターの妻と元風俗嬢は店を出る。
女の直感か、マスターの妻は、鋭い目で元風俗嬢を睨み付けながら。
誰もいなくなったバー。
マスターの様子を女性店員が見に行く。どうやら、倉庫にいるらしい。
マスターはこの女性店員を暴行した。
地下1階で、確かマスターはこの女性店員とは哀れな結末を迎えたはずだが、まだあきらめていなかったのか。
女性店員は、絶望して自殺しようとしたところ、この代理マスターと出会ったみたい。
代理マスターはバーでマスターを瓶でぶん殴り・・・
まだ、息はあるみたいだ。
こんな男のために、二人の人生を狂わせる必要は無い。
互いに傷つきあった仲。
どこか暖かいところにでも行き、傷を癒そうと二人はバーを出て行く。
エンディングは映像で、これまでの客たちのエピローグが映し出される。
女性と男が田舎に帰るために新幹線を待っている。女性は、浅草で三人で買ったTシャツを着ている。そこには歌舞伎の模様の中に友情という文字が刻まれている。
オタクは絶望して今にも死にそうになっているが、オタクの固く結ばれた友情で慰め合う。
アイドルは明日も仕事があるので、無事に送り届けられたみたいだ。明日からも、笑顔で恋愛対象とならない人に接しないといけない。
そして、アイドルのマネージャーは、オタクの心を射止めたみたいで、早々とウェディングドレスを着ている。
もう一人のウェディングドレス姿の女性。ライブハウスではミュージシャンが、彼女のために捧げる歌を歌う。
元風俗嬢は、マスターの妻からのきつい視線を受けながら帰路に着く。その視線は、刺されるのではないかという勢いだ。
でも、マスターの妻の携帯に電話がかかってきて、そんな視線からも解放されたみたい。
電話の主はマスター。まさか、女を強姦して、男から殴られて気を失っていたとは言えないだろう。パチンコでフィーバーがかかってとか相変わらずいい加減なことを言っているみたいだ。
代理マスターと女性店員は手をつなぎ、どこか新しい場所へと駆け出していく。
うろ覚えなところがあるので、順番は前後すると思いますが、だいたいこんな流れのあらすじ。
まあ、色々とありますわな。人が生きていると。
楽しかった時が、どこでどう間違ったのか、悲しみの奈落の底に突き落とされたり。
想い合っていても、それがちょっとしたことで通じ合わなくなったり。でも、そのおかげで、また新たな想い合いを見付けることが出来たり。
人生、悲喜こもごもといったところでしょうか。視点を変えれば、悲しみが笑いにもなるし、笑いが悲しくもなる。そんな感覚を得たので、なおのこと、もう一つのホラーVERSIONとやらを観たかったなあ。
そして、観逃した地下2階も。
両VERSIONを予約すれば、DVDがもらえたみたいですが、今回は日程的に厳しかったから。
普通に購入することは出来ないものなんでしょうかね。
2点ほど、自分の過去とオーバーラップして辛かったなあ。
一つは、誕生日に別れ話を切り出されるミュージシャン。あれは何で、誕生日だったのでしょうかね。答えは結局、劇中では語られませんでした。
嫌がらせ、いつまでも付き合ったことを思い出としておきたい、本当は別れたくないことの意思表示・・・?
私には分かりません。
私も誕生日ではありませんが、課長昇進が決まり、前日に一緒にご飯を食べていて箸が古くなったからと新しいものを買ってくれて、作ったスープを牛乳パックに入れて持ち帰らせてくれて・・・
その次の日に別れを切り出されたことがあります。
未だに、何であのタイミングだったのか分からずでいます。その時も、この作品中の男のように、分かりのいい男を演じて、分かったとしか言わなかったなあ。あの後、数ヶ月ボロボロの日々を過ごしたのに。
あれ以来、プレゼントをもらう時や優しくされた時に、ふと不安な気持ちが頭をよぎります。
もしかしたら、その答えが少し分かるのではないかと期待しましたが、どうもしっくりきません。
この作品中に出てくる言葉のように、思い出は思い出としておいた方がいいのかもしれません。
そして、代理マスターの妻の初めから好きではなかったという言葉ね。
あれはいけません。史上最低のふる時の言葉だと思います。
初めて付き合った彼女から、数か月後に言われたことがあります。
私は0の言葉と勝手に呼んで、恐れている言葉です。
マイナスなら、変えていくとか何らかの手段がありますが、0ではどうしようも無いでしょ。
種無しはいいと思います。改善手段を考える余地がありますから。でも、初めから好きじゃなかったなら、もうどうしようも無いですよね。
こんなことを言う感覚が分かりません。
似た言葉に、空気にしか思えなくなったなんて言葉もありますね。
と、そんな昔のことを思い出してしまうほど、このバーにやって来た人たちの人生をのめり込んで考えてしまいました。
自分のとる行動が、笑いを生むのか、悲しみを生むのか。
もちろん、分からないから、不安だけど、何もしないことも含めて、何かをしなくては始まらない。
そんな自分なりの決断をして、何らかの結末を得て、人生の一時を刻んだ人たちに拍手をといった感じかな。
ただ、マスターだけは許せんけどね。
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コメント
ご来場ありがとうございました!!
久しぶりに、記事を書いていただけてうれしいです♪
地下2階を観なかったことを悔やんでもらえるなんて。
DVDは販売はしないと思うのですが、手に入る方法を聞いておきますね。
普段作品はお客さまのものだと思うので、自由に受け取ってもらうのですが、今回確かに誤解される懸念があったのと、他に詳しく感想書いてくれている人がいないので、マスターの名誉のために(笑)、映像でしか出てこなかった、マスターとチーフの山田さんは、実は別人なんです。
山田さんは、顔も出てなかったのですけどね。。。
マスター呑気にパチンコ行って、コメディーでは騙されちゃってましたが。笑
投稿: かなえ | 2014年5月19日 (月) 00時06分
>かなえさん
コメントありがとうございます。
「ら」も、ジャムコントも、一人芝居も伺えていなかったので、久しぶりに拝見できてよかったです。
やっぱり、両バージョン観ればよかったなあ。
DVDを手に入れるためにも、そして、こんな誤解をしないためにも(゚ー゚;
伽羅倶梨さんも公演があったからねえ。
なるほど。
あの山田とかいうチーフの意味合いが分からんなあと思っていましたが、そういうことかあ。
説明いただいて良かったです。
あの人のこと、大嫌いになるところでしたわ。
また、どこかの公演で。
楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2014年5月19日 (月) 10時03分