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2014年5月31日 (土)

やえこおばちゃん【atelier THANK-Xs】140530

2014年05月30日 道頓堀ZAZA HOUSE (115分)

故郷。
歩みをちょっと止めてしまった人が、今の自分のルーツを見つめ直して、また歩み始める場所だろうか。
心の故郷は、今の自分に至るまでに、自分を想ってくれた人たちが作り上げてくれたものであり、それはずっと繋げられて、そして拡がっていく。
長きに渡って、大きく何層にもなって紡がれる想いの眠る素敵な場所。
そんな場所が誰にでもあるなら、安心して前へ向かって怖がらずに進んで行けそう。
そんな気持ちを抱けるような心地いい作品でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

八恵子おばちゃんが亡くなった。
八恵子おばちゃんは、長野の和菓子屋に嫁いだ、恒の母の姉である。
長野は母の生まれ故郷だ。
名前から分かるように、八恵子おばちゃんは8番目。母は9番目で末っ子。兄弟が多い中で、歳が近く、おのずと一番親しい間柄だったみたい。
結核で体が弱かった母は、都会に嫁いだのが災いしたのか、体をかなり悪くして、恒が幼い頃は、療養も兼ねて、なぜか実家ではなく、よく八恵子おばちゃんの家を訪ねたものだ。
母の看病をしながら、八重子おばちゃんにはお世話になった。
豪快な人なので、時には叱られたりしながら。まあ、長野のお母さんって感じだろうか。
そんな母も、恒が大人になる前に亡くなってしまった。
不幸なことに、それから姉も若くして癌で亡くしてしまう。今は、足が悪くなった父と、兄貴がいる。
恒は、実家の横浜で大学を卒業した後、ミュージシャンを目指して、大阪へと飛び出した。

八恵子おばちゃんの家を最後に訪ねたのは2年前。
その前はさらに10年くらい前か。心に決めた人が出来た時だった。まあ、その子とは破局を迎え、未だに独り者なのだが。
その前はさらに10年遡って、大学に合格した時だったか。
2年前に訪ねた時は、フラリと寄っただけとか言ったが、本当はバンドが解散して、人生に迷っている頃だった。
そして、ここを訪ねるのも最後にして、新しい道を歩もうとなんて思っていた。
その時は、八重子おばさんの旦那さんの妹である清子おばちゃんや、娘の恵美子さんも元気に和菓子屋をお手伝いしていた。兄の一仁さんや弟の裕貴君、清子おばちゃんの娘である章子さんは不在だったが、それから半年後に従兄弟会なんて称した集まりを開いて、恵美子さんと、裕貴君、章子さんとは再会を果たす。
思い出話に花が咲くものの、裕貴君や章子さんは、恒の兄や姉と一緒に遊んだことはよく覚えているのに、恒のことはあんまり覚えておらず、ショックだったりしたのだが。

それから1年経って、八重子おばちゃんの訃報を聞くことになった。
田舎だからだろうか、友引の関係で、通夜はしあさってになるらしい。
恒は、仕事の都合で通夜には無理だが、それまでならと、もう一度、長野に向かうことにする。

八重子おばちゃんの家では、みんな勢揃いしていた。
八重子おばちゃんの旦那さん、敏之おじさんは、昔と変わらず、自由気ままに飄々としている。
一仁兄さんとその奥さん、智子さんも。こだわりの強い人で、昔は時計、ラジオ、カメラなんかを自分で作って、その作り方を延々と聞かされたものだ。そんな性格は変わっていないのか、弔事の文章にこだわって、悩んでいるみたい。
恵美子さんは、いまひとつ頼りにならない兄に成り代わり、色々とせわしそうだ。そのため、恒の相手を出来ないのを申し訳ないと思ったのか、娘の彩音ちゃんを話し相手に付けてくれる。
大学卒業後、やりたいことが見つからずプラプラしているのだとか。自分だって、未だそんな感じで、人のことをとやかく言える身分ではない。大阪のことや、昔のここでの話をすると、とても興味深く聞いてくれる優しい子だ。
裕貴君は、特に何かの役に立つわけでもなく、ビール片手にウロウロしている。末っ子はそんなものだ。自分も末っ子だからよく分かる。
清子おばちゃんも、葬式準備で忙しい。娘の章子さんを連れて、食事の準備やら買い物と雑用に励んでいる。
とても地元の人に愛されていたみたいで、和菓子屋のご常連で、かつ八重子おばちゃんのファンでもあるという、ご当地アイドルだろうか、野沢菜などをPRするローカルテレビなんかにも出演する人気ユニットもやって来る。フラメンコでも踊りだしそうな妙齢の女性に、ロッカーみたいな若い女性、なぜか猿の着ぐるみ姿の少女という、奇抜なユニットではあるが。
そして、八重子おばちゃんは・・・
一人一人にメッセージを記したノートが残されており、もはや今となってはそれだけが彼女の言葉。
みんな線香を絶やさないようにして、別室で永遠の眠りについているはずなのだが、なぜか、家をウロウロしている。恒だけには、なぜかその姿が見え、普通に会話出来てしまう。
おかげで、気を付けないと、みんなから頭が少しおかしいと思われてしまう。

恒は、通夜までの日を、こんな人たちと過ごす。
もう話すことが出来なかったはずの八重子おばちゃん。
そして、恒の昔を知る人たちや、初めて出会う新しい人たち。
そんな人たちと会話をして触れ合う中で、恒はこれまでの自分を見詰め、今の自分が生きていることを感じ取っていく・・・

拡がっていく、繋がっていく絆。
それはお母さんがいて、八重子おばちゃんがいて、そして、色々な出会った人たちがいて。
恒は、人生に行き詰まった時に、そんなものを全部、捨ててしまおうとしてしまったみたい。
でも、そんな絆が消えるわけがない。それは、例え、その人が亡くなってしまったとしても、これから繋がれて、紡がれていくものなのだから。
そして、そんな絆は、どれほど、自分にとって、大切な帰る場所を作り出し、また、これからの出発点にもなることか。
大好きだった八重子おばちゃんの死を通じて、自分の周囲の人たちの想いを感じることができ、そして、亡くなった母や姉の自分への想いもまたしっかりと受け入れることが出来たようである。
ただいまと言って、いつでも帰ってくることが出来るこの場所から、恒はまた今度という言葉を残して、新しい道に向かって出発していく。
・・・。でも、誰に似たのか、ちょっとおっちょこちょいなので、ラストは微笑ましい姿で締めている。

踊りをスムーズに盛り込みながらの展開。
今回はご当地アイドルを核として、一つの大きな家族、仲間を感じさせる一体感のある踊りで魅せる。
自分の故郷。嬉しいことがあった時には立ち寄りたくなり、また、辛い時にも何かを求めて足を運びたくなる。
そんな、自分の帰り場所を、作り上げてくれていたみんな。
それは、いつの日か、恒も自分の子供たち、出会った人たちのために、おのずと作り上げていくものなのかもしれない。
人の想いが眠る場所は、いつまでも紡がれていく。
そんな素敵な場所を持つ恒や周りの人たちは、いつまでもその想いを胸に幸せに生きていくのだろう。

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