« 夏の魔球 AGAIN【劇団ほどよし】140526 | トップページ | やえこおばちゃん【atelier THANK-Xs】140530 »

2014年5月30日 (金)

いただきます【大阪ゲキバカ】140529

2014年05月29日 世界館 (115分)

あれだけのお祭り騒ぎ、濃いキャラたち、ありえない妄想ワールドの中で、いくら家族をネタにしているとはいえ、最後、感動にもっていく巧さ。
ゲキバカのお得意のパターンと言えば、その通りでしょうが。まあ、これが好きなんでお気に入り劇団になっているのでしょう。
今回は大阪ゲキバカ。普段、大阪で観劇をする者としては、活躍を目にすることの多い役者さん方が揃う。
そんな方たちが、私の感覚では、平均、普段の3割増ぐらいで魅せる。ゲキバカマジックだろうか。

話としては、家族愛をベースにして、一人の男の生き様の誇りを描いている。
幸せの青い鳥みたいな感じかなあ。
人生なんて、良し悪しは自分の考え方次第で幾らでも変えることが出来る。
この作品に登場する冴えない中年男は、半ば卑屈に自分の人生を振り返るが、その中で、大事なものを失ったり、たくさん悔いが残っていたりするけど、結局、素敵なものも手に入れていることを知る。
そして、その良し悪しは、これから、またみんなと一緒に過ごす中で、感じていくことなのだろう。
だから、今はみんなと一緒に、これからに向けた挨拶を。
それが作品名に通じているようであった。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで。2作品の上演なので、この作品は、あと土日に各1回ずつとなります>

乳業会社の営業一筋、46歳、中年サラリーマンの十蔵。
ストレスも溜まるのか抜け毛が気になり始め、日々、懸命に歩いて営業活動をするので、靴底もだいぶ擦り減っている。
郊外に小さいながらもマイホームを建て、毎日2時間、電車とバスに揺られて会社に通う。
妻、ジャイ子は、象でも殺せそうなくらいに豪快な恐妻。カルチャースクールにはまっているのか、スイミングに飽き足りず、今ではプロレスなんかのレッスンも受けているらしい。
子供はお姉ちゃん、お兄ちゃん、双子の妹。
お姉ちゃんはいい歳をしているのに、毎日、携帯ばっかりいじりながら、バイト探しで、まともな職に就こうとしない。双子の妹は、ワイワイと騒がしい。説教をしても、聞く耳持たず、3人とも父親の威厳を知るなどとは程遠いみたいだ。
お兄ちゃんは、ずっと野球部で頑張っていたが、高校に入学してからはクラブにも入らず、帰っても部屋に閉じこもって、勉強をしている様子。元々、騒がしい女連中に圧倒されて、影が薄いのに、最近は何を考えているのかもよく分からない。もっとも、野球なんてやっても、将来の役には立たないなんてことを言ったのは自分だけど。野球には苦い思い出があるから、仕方が無い。
ある日、ジャイ子のカルチャースクール通いに、そんなお金があるなら小遣いを増やせなんて口答えをしたものだから、逆ギレされて、小遣い無しなんてことに。まあ、病院送りにならなかっただけ、まだよかったといったところか。

そんなわけで、小遣いはバイトで稼ぐことに。
向かった先は、怪しげな研究所。
父が所長で、息子が助手。親子で色々な発明品を作っており、そのモニターをしてレポートを提出するのが仕事。
担当するのは、夢の中で自分の人生を変えられるという、人生ゲームとかいう薬。
飲むとすぐに眠りの中に。
すると、何やらテンションの高い司会と、色っぽい女性の助手が登場して、自分を過去へと連れて行ってくれる。
小学生時代。初恋のミヨちゃんと仲良く遊んでいるところ、いじめっ子たちに絡まれる。怖くて立ちすくんでいるところに、いじめっ子を締め上げたのがジャイ子。
そんな、ミヨちゃん、教室でウンコを漏らしてしまい、十蔵はそれをかばう。
そう、それが原因で、いじめにあって、その後は惨憺たる学生時代を過ごしたのだ。
でも、ここは夢の中。十蔵は、勇気を振り絞って、同級生たちにいじめはやめろと叫び、その想いが通じて、クラスのヒーローとなる。
高校生時代。野球部だった。苦い思い出がある。県大会決勝戦、甲子園まで後一歩のところで、自分のさよならエラーで敗退した。
野球部のマネージャーはミヨちゃん。ミヨちゃん目当てで部員も増えた。そして、なぜかジャイ子もマネージャーに。絶対に甲子園へ連れて行けという脅迫に、練習も必死になった。
みんなの憧れの的であったミヨちゃんに、小学生時代からの想いを伝えることがなかなか出来ない。
ある日、プロレスのチケットが手に入り、一緒に見に行くことに。
でも、その試合にジャイ子が乱入して、試合をめちゃくちゃにした上に、その場で十蔵が好きだと告白。
そう、そのまま強引な流れで結局、一緒になるまでに至ったのだっけ。
十蔵は、この夢の中では、ミヨちゃんに自分の想いをはっきりと伝える。
その想いは通じ、二人は口づけを・・・

素晴らしい薬。
寝るのが楽しみで仕方が無い。今日は初めて会社をさぼってしまった。少しでも、夢の中にいたいから。
夢の中では自分はヒーローだ。
冴えないサラリーマンで、恐妻に好き勝手言われ、子供たちには小馬鹿にされる。
ミヨちゃんと一緒になっていたら、甲子園に行けていれば・・・
もう、ずっと夢の中で生きていければ、どれだけ幸せだろうか。
そんな言葉を助手は聞いて、自分の研究の手伝いをして欲しいと願う。
助手はいわゆる人造人間を開発している。そのための、ヒトの脳が欲しいのだ。
人造人間に脳を移植して、十蔵として生きてもらう。
十蔵には、夢を見る分だけの脳を残し、幸せに夢の中でずっと過ごしてもらう。
悪い話では無いはずだ。
そんなことをしたら、家族はどうなる。ジャイ子や、子供たちは誰が守るのだ。
十蔵は、抵抗するが、・・・

最後は、これまでの人生どおり、ピンチの時は、あのジャイ子がやって来て、大暴れした後、いとも簡単に十蔵を連れて帰ります。
実は助手も博士が作った人造人間でした。博士が孤独のあまり、息子が欲しくて作ったけど、本当はしてはいけない開発だとその後はずっと封印していました。
そのことが、自分は必要無い、存在してはいけないものだという反発から、助手は自らも人造人間を作ろうとしたみたいです。
博士は十蔵を危険な目に合わせた助手を破壊しようとしますが、ジャイ子は豪快に、そんなもの子供の反抗期みたいなもんやと、そして十蔵も過ちは誰にでもあることを博士に伝え、助手を許します。
博士と助手は、こうしてようやく親子になれたようです。となると、助手が作った人造人間は孫になるようで。

十蔵は帰宅後、久しぶりに家族みんなで揃って夕食を食べます。
これまでの悔いを、夢の中に逃げ込んで解消してしまうよりも、それを受け入れて今を生きる。だって、今の自分だって捨てたもんじゃない。こんなに素敵な家族が自分には出来ているのだから。
夢の中の世界も楽しかったけど、これからをみんなと一緒に過ごし、時に喜び、時に悔いたりした方がきっと、もっともっと楽しい。
十蔵は今回のことで、そう思ったはずです。
家族だから、特に言葉は必要無いのでしょう。そんな十蔵の想いが通じ合うかのように、子供たちも少しこれからを考えるようになったみたいです。
これからをみんなで。
めちゃくちゃに楽しくて大喜びすることもあるかもしれないし、とんでもない辛いことがあるかもしれない。

でも、家族だから、一緒にそんなことを、いい人生のヒトコマにきっと出来る。
家族は揃って、これからの始まりの挨拶を・・・

さすがの味ある魅力を醸す、十蔵、立花裕介さん。同じセリフでも、語り方で心情変化が読み取れるものなんだなあと、改めて巧さを感じる。
やっぱり天才だった、ジャイ子、番匠真之さん。破天荒で真っ直ぐな立ち振る舞いが、あまりにも爽快。色々な意味での強さに溢れている。
まあ、当然、可愛いの一言なのだが、そちらよりもブレない飄々としたボケで掛け合いの巧みさを生み出す女優さんとしての魅力の方が引き立っているか、ミヨちゃん、澤井里依さん。
そして、影の薄いお兄ちゃん、藤井誠さんね。関西のかっこいい人たちが集まる劇団で、本当にかっこよく魅せる方なのだが、この扱い。これが意外にはまっていて、役者さんはオーラ消すことも出来るんだなあと感心。

|

« 夏の魔球 AGAIN【劇団ほどよし】140526 | トップページ | やえこおばちゃん【atelier THANK-Xs】140530 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: いただきます【大阪ゲキバカ】140529:

« 夏の魔球 AGAIN【劇団ほどよし】140526 | トップページ | やえこおばちゃん【atelier THANK-Xs】140530 »