ありがとう【大阪ゲキバカ】140530
2014年05月30日 世界館 (110分)
二本立て公演。
昨日のいただきますに続いて観劇。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/115-cbf9-1.html)
変わり玉って駄菓子でしたっけ。舐めていると色がどんどん変わる飴ちゃん。
基本は笑い味だと思うけど、味わっているうちに、いつの間にかその色合いは変わっている。
コミカル、ホラー、サスペンス、エロ、恋愛ロマンス、人生哲学・・・
まあ、色々な味わいで楽しめる秀作でした。
にしても、随分と変わった人たちが集まったものだ。
これだけ奇抜な人たちなら、けっこうこれまでにも目にしていそうだが、初見の方も多い。いったい、どこに潜んでいたのやら。
関西演劇界の奥深さを物語ってもいる公演だろう。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで。この作品は、あと土日に各1回ずつです>
あるビルの一室にオフィスを構える黒ヒゲ出版にライターとして勤めるヒロシ。
会社名の由来は、社長のあだ名。むさ苦しく髭をたくわえ、社員を馬車馬のごとくこき使う。かたや、自分は会社に来ても、でかいウンコをするくらい。よくトイレを詰まらせるのか、ビルの老掃除夫が社内をよくウロついている。取材と称して、公私混同の破廉恥行為をしでかすことも。忍者娘だか、ニンムスだか、薬にはまって首になった少々痛いアイドルユニットの二人といい仲になって、性のはけ口のために社員とすることなど、なんとも思っていない模様。
編集長は、少し堅苦しいキャリアウーマン。社内の個性的な面々をまとめあげる、実質上のリーダーだ。
自称、天才作家の女性。文才はあるのだろうが、締め切りが近づくと言い訳ばかり、おだてると調子にのるという子供みたいな人。今は、昭和の殺人事件特集を担当しており、けっこう売上に貢献中。
カメラマンの男は、真面目一辺倒みたいな感じ。少しでもいいスクープ写真を狙って頑張っている。まあ、その理由の一つに編集長に褒められたいというのがあるみたい。要するに惚れているということ。
新人の女の子や、留学生のバイトもお調子よく文句ばっかりだが、頼りないながらも、補佐的な仕事をこなしている。
あと、営業の男。もちろん、営業もしているみたいだが、実際は社長の太鼓持ち。要領よく立ち振る舞い、上手いことやるといういい加減な男だ。とにかく不真面目でやることなすこと真剣味が無い。クズという言葉がふさわしい。だから、この会社の場合、次期社長候補と言ってもいいのかもしれない。おまけにホモであり、ヒロシは一目置かれているようだ。
ヒロシは、こんな少々変わった人たちと一緒に、それなりに頑張っている。
隣のラーメン屋は、クソ不味いので有名だが、そこの看板娘のトメちゃんとは相思相愛。まあ、トメちゃんのヒロシへの愛情は少し引くぐらいに狂気的であるが。
だから、よく出前を頼む。と言うか、出前を頼むように電話がかかってくる。他のみんなは不味くて食えたもんじゃないと言うけど、愛の力かヒロシの口にはまずまず合っているみたいだ。
ある日、編集長はみんなを集めて、次の特集の指示を出す。
それは、カヤマ事件という、この町で昔に起こった有名な大量連続殺人事件。
カヤマは自分の家族を惨殺した後、村の人たちを次々に殺す。殺し方は、包丁で刺した上に火をつけたりしており、その現場は凄惨極まるひどいものだったのだとか。
そして、カヤマは遺書を残して自殺する。
ただ、そのカヤマの焼死体は誰かを判別できる状態ではなく、昔なのでDNA鑑定も出来ずで、本人という証拠はどこにも無い。だから、カヤマはまだ生きており、人を殺し続けている。そんな都市伝説があるらしい。
気味が悪い事件で、何か社長が連れて来たいかがわしい占い師も深く関わるなと警告するが、いつに間にか深入りせざるを得ないことになってくる。
時同じくして、この町で行方不明・殺人事件が連続発生する。
そして、隣のラーメン屋が全焼し、一家黒焦げに。もちろん、トメちゃんもひどい姿になって発見される。
ヒロシの兄は優秀な刑事で、会社に聞き込みにやって来る。かっこいい兄貴で、営業の男も色目を使ってくる。もちろん、ノンケだけど、独り者。
彼女も刑事で殉職するという過去を持っているから。
トメちゃんは、幽霊となってヒロシの前に現れる。
そして、営業の男は、自分が一連の事件の犯人だと遺書を残して、電車に飛び込み自殺をする。
ヒロシは、刑事の兄貴に訴える。
真犯人は別にいる。カヤマだ。彼が生きていて、まだ、殺人を続けているのだ。
トメちゃんの無念を晴らすため、そして、おかしな人だったが、決して人を殺すような人ではなかった営業の男の疑いを晴らすために、ヒロシはみんなに真犯人探しを願い出る。
真犯人は本当に別にいるのか。カヤマは本当に生きているのか。
その真相は、カメラマンの男が撮ったスクープ写真から浮き上がることとなる。
事件直後の現場写真。警察がすぐにやって来て、立ち入り禁止となった殺人現場。そんな写真を撮ることが出来る者は・・・
最後は、ホラーチックに黒ヒゲ出版の人たちが次々に惨殺されるシーンが描かれる。
最後まで生き残ったヒロシは、現場に駆けつけた兄貴によって助けられて、無事、犯人は逮捕。
辛い事件だったが、これで一件落着。でも、トメちゃんが、生き返るわけも無い。
トメちゃんは、ヒロシのこれからを想って、自らの意志で成仏して、ヒロシの下を去る。ありがとうの言葉を残して。
泣き濡れるヒロシに、兄貴は良かったと言う。
反発するヒロシに、兄貴は自分の体験談を話す。殉職した彼女。死後、現れた彼女の幽霊。そして、まだ生きなくてはいけない自分との別れの決断。
誰よりも、ヒロシの気持ち、そして、トメちゃんの気持ちを理解しているのは兄貴だったみたいだ。
ヒロシも、今はもうあの世へと向かったであろうトメちゃんにありがとうの言葉を投げ掛け、これからまた始まる人生の一歩を歩み始めようとする。
そして、本当のラストは不気味に、かつコミカルにという相反する感情を抱かせる不思議な形にしている。
カメラマンは、本当の意味での真犯人では無い。彼がカヤマならば、いくらなんでも若過ぎる。彼を
殺人鬼にまで仕立て上げた男が別にいる。それは、社内にはよく出入りするあの老人。彼は、平然と今回の事件を恐れ、いい世の中にしてくださいなんてことをヒロシや兄貴に語り、ここまで生かされたことにありがとうという言葉を発する。
そして、トメちゃんが愛の力でヒロシの下に現れることが出来たならば、あの男だって、その愛の力は負けておらず・・・
前半、このおかしな黒ヒゲ出版のおかしな面々に笑わされ、中盤は推理小説さながらの犯人探し、終盤は残忍なホラーシーンに少しだけビビる。
最後は純愛ロマンスにホロリと泣かされそうになる。そして、残された者がこれからを生きるということを描いたメッセージに、あれだけお下品だった作品が、とても品のいい作品のように騙されそうになる。
そして、ラストはゾっとさせて、心に不安を持たされた瞬間に、呆れかえるような拍子抜けの締め。
めまぐるしい展開に酔いそうな話。
これだけの、様々なネタをごった煮にして、美味しく思わすことは決して簡単なことではないだろう。きっと、綿密な計算をしているはずだ。
そう思うと、はちゃめちゃに舞台で大暴れする役者さん方の巧さも感じられる。
ヒロシ、飯嶋崇さん。周囲があまりにも飛んでいる人が多いので、唯一まとも。周りに振り回されながらも、トメちゃんはじめ、みんなを真摯に想う姿は優しくもかっこいいという男の魅力を存分に醸す。
トメちゃん、塩尻綾香さん。ラストの健気な可愛らしい女の子の姿はこれまでよく拝見するものであったが、前半の下ネタも平然とこなし、いっちゃってる狂いっぷり、飄々とした天然ボケは、目を見張る。こんなに器用な方だったのか。
クズを演じさせれば、関西で右に出る者無し。そんなクズ社長をお得意の姿でパワー全開で魅せる髭だるマンさん。そして、その地位を脅かす勢いのクズっぷり。隙間があれば好き放題に入り込む力を魅せる営業の男、岸本武享さん。
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