本日快晴なり。’14【劇団伽羅倶梨】140512
2014年05月12日 KARAKURIスタジオ (110分)
創立34年目になるらしい。
長きに渡って、愛され続けてきた劇団の力は半端じゃない。
同時に愛し続けてくれてもいたのだろう。
人のことが大好きになるような、人を愛することって本当に素敵だと素直に思えるような素晴らしい作品だった。
あまりに素敵な気分になったので、数週間前からひどくなった坐骨神経痛のため、断酒していたが、5日目にして飲んでしまった。
こんな素敵な作品を観て、飲まずにいれるものか・・・
舞台は、ローカル線の桜電鉄上川線の終着駅、大和快晴駅にある村。
隣駅の上川駅までの路線となり、この駅は直に廃止される予定だ。
物語は、そんな小さな駅のちっぽけな村で起こった出来事を、みんなから信頼され続け、長年、村長として活躍する父を持つ光という青年がストーリーテラーとして語る形で展開する。
村長を務めながら、駅長としても日々、仕事をする父。昔は暴走族に身を置いた頃もあったらしいが、今では生真面目で、誰からも愛される温和な村長さんだ。元々、鉄道好きだったらしく、駅長は自らかって出たみたい。まあ、そのおかげで、鉄道好きな、歳が20も離れた、明るく元気いっぱいの素敵な母と結婚したのだから良かったといったところだろう。
部下の女性は、行動力に溢れた快活な人。ちょっと気の弱いところがある村長をうまく補佐しているみたいだ。この村の人ではなく、町から通っているが、村人のことをいつも想ってくれているみたい。廃駅が決まって、ちょっと元気が無い村長のことを気遣ったり、村人の顔をしっかり見てくれている。
鉄道の運転士は、ちょっととぼけているが、人のいい優しい人だ。少々、美人に弱いところがあるみたいだが、安全運転に責任持って、日々、鉄道を走らせている。
今は少しボケてしまったところがあるみたいだが、この村の人々を小さい頃からよく知る長老のおばあちゃん。そのひ孫は、やりたいことをやればいいというおばあちゃんの育てによるのか、明るく元気いっぱいに日々駆け回っている。頭がちょっと悪そうだが、実は毎日、しっかり本を読み、色々な話を知っている天才児らしい。
食堂を営むおばあちゃん。面倒見のいい、これまた優しい人。その孫娘とは誕生日も同じ幼馴染。少々、気が強いところがあるが、昔は、いじめられているのをよく助けてもらった。いじめっ子に土下座までさせて、正義心が強いけど、ちょっと大胆過ぎなのは、血筋かもしれない。
何も無い村だが、数年前から、ちょっとした有名なものがある。椎茸と柿。妙齢のおばちゃん、いやお姉ちゃんと、兄のように慕っているその弟が作っている。姉は椎茸をブランド化し、弟の柿はとにかく味は抜群といったところまできた。弟は、昔は、この田舎村を嫌がって出て行こうとして、町に行っては帰って来てみたいなことを繰り返していたみたいだが、今はすっかり落ち着いて、この村に身を埋めようと頑張っている。
そんな村に、中学生の頃に遊びに来て、成人した今、再び、農作業をやってみたいとホームステイに女性がやって来る。
都会で、日々、寝るかゲームをするかしかしていなかった引きこもり気味の男が、ふと電車に乗ってやって来る。
幼馴染の子は美容師を目指して、この村を出る決断をする。
長老のおばあちゃんが、徘徊して行方不明になってしまう。
そんな事件を通じて、田舎村の現状を映し出し、村人たちの温かい心に触れ合っていく。
光は・・・
18年前、自分はこの駅で捨てられていた。伝言板にこの子をお願いしますとだけ書かれて。
この日は、ちょうど幼馴染の子も産まれた日で、村は大騒ぎだったらしい。
それから、ずっと村長である父、そして優しく明るい母に育ててもらった。
恩返し。
自分は、この村に育ててもらった。だから、この村にずっと残り、村がより良くなるように頑張らなくてはいけない。農協に勤めて、農作物をもっとアピールするようなことが出来たら。
そんな光の決意に、父は反対する。
自分の本当に思うことをすればいい。恩など返す必要も無い。
二人は、言い争いになるが・・・
ホームステイの女性は、柿を作る弟とちょっといい仲に。姉は、嫁さんにでもなってくれたらなんて、気が早いけど大喜び。でも、みんなが力を合わせて、村を盛り上げようとする姿に、女性もやりがいを感じたみたい。
都会っ子は、分け隔てなく、みんなが楽しく暮らし、言いたいことを素直に言い合える姿に、自分も頑張ろうという気持ちが芽生えたみたい。長老のひ孫に読み聞かされた三年寝太郎も、ずっと寝ていたが、起きてからはすごく頑張ったわけだし。
幼馴染の子は、年寄りを置いて出て行くことに抵抗があったが、そんなことをおばあちゃんは何も気にしない。やりたいことをやる。それが一番。そして、自分はまだまだ元気いっぱいであることをアピールする。
長老のおばあちゃんが行方不明になった時は、まあ大騒ぎ。村人全員で捜索。結局、二駅先ぐらいの待合室で寝ていたらしく、最終電車と一緒に運転士と帰って来た。その時の村人たちの喜びよう。それは、もう家族としか思えないような安堵と喜びだった。
そんな村の素敵な姿がどんどんと映し出される。
お月見の日。
この日は、光が捨てられていた日。幼馴染の子の誕生日。もちろん、光にとっても誕生日だ。
毎年、駅前で小林旭メドレーを唄って大騒ぎする。
何でも、この駅は昔、日活大スターの小林旭が降りたった駅として有名だったらしい。その証拠に駅舎には、幼き頃の村長が小林旭にだっこされている写真が残っている。
こんな宴会も今年で最後。来年にはもうこの駅は無いから。
村人は、この日18歳になる二人の若者を祝い、駅に黙とうを捧げる。
次の日のことも考えずに遅くまで盛り上がってお開きに。
みんなが帰った後、駅には父と母、そして光が残る。
父からのプレゼントは革靴。でも、光は長靴に交換して欲しいと言う。
農協に勤めたい気持ちは変わらない。それが自分のやりたいことだから。
そんな立派になった息子の姿に父は、頭の出来が悪いから、農協の人に頭を下げて入れてもらわないといけないと悩む。側では、母が嬉しそうにお酒を飲んで駅舎で潰れて寝てしまっている。
ラストは冬のある日。
雪降る中、直に廃駅となる大和快晴駅にいつもと変わりなく、最終点検をして、駅に敬礼をする父の姿がある。その隣には、お迎えに来た母、そして、長靴を履いた光が力強くたたずむ。
田舎村の心温かい人たち。
みんなが自分に一生懸命で、そして周りの人のことを想っている。
そんな姿が心地よくってたまりません。
舞台で人が生きているというのでしょうか。一人一人がとても丁寧に描かれており、みんなのことをいつの間にかよく知り、自分もこの村に入り込んだ一員のような気が起こってきます。
そして、そんな村人たちのことが大好きになって。
特に大きな事件が起きるわけでは無く、田舎村の日常を淡々と描きます。
でも、そこに人同士が心で触れ合っている姿が、当たり前のように浮き上がってきて、心が温かくなっていくのです。
何の大きな変化も無く、いつもどおりの毎日。
それでも、廃駅の問題が起こったり、将来の不安を感じる日が来たり、言い合いになったりと心が固くなってしまう時もあります。
でも、そんな温かい人たちのこと、心地よく流れる日常を知っているからでしょうか。
そんな人たちも、すぐに心を溶かして、いつも前を向いて生きていこうとすることが出来るみたいです。
世の中がこんなだったらいいのになあ、こんな村に住んでみたいなあ。観終えて、沸き上がるそんな気持ちは、この村の姿が一つ理想郷の姿を映し出しているのかもしれません。
終演後、珍しく、役者さんにご挨拶。
光を演じた小川弦之介さん。2年半ほど前にある作品で拝見して、心情をとても素直に表現されるいい役者さんだなあなんて思って、ブログに感想を書いて、ネット上でお知り合いに。
それから、ご出演の舞台を観に行くと言いながら、一回も伺えずで、ようやくお会いすることが出来ました。
純粋で、かつ一本筋の通った力強さを持つ青年。自分は自分だけではなく、周囲の人たちによって生かされてきたような、感謝の心に溢れています。だからこそ、人一倍頑張って、かつ周囲の人のこともしっかりと想える人に育っているのでしょう。
そんな素敵な役どころだけでなく、ストーリーテラーとしてもご活躍。
ご立派な姿にすっかり嬉しくなってしまいました。なかなか、自分もいい役者を見つける目を持っとるなあなんて、ちょっと、そんなことにも嬉しくなったりして。
とても楽しい時間でした。
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コメント
ご丁寧な感想を書いて下さり、本当にありがとうございます!
次に向かう大きな励みとなります!
こんな素敵な作品を観て飲まずにいられるものか・・・という大変嬉しいお言葉を頂きましたが、腰の様子は大丈夫でしたでしょうか。私は常々、伽羅倶梨のお芝居を観たあと美味しい食事や美味しいお酒がすすむ・・・が理想ですので、とてもうれしかったのですが・・・。
また、弦之介君とも出逢って頂けてよかったです!
本当にありがとうございました!
投稿: 徳田尚美 | 2014年5月22日 (木) 02時16分
>徳田尚美さん
コメントありがとうございます。
久しぶりの伽羅倶梨でしたが、いつもながらの温かい作品に心打たれました。
いいもん観て、いいもん食べて、飲むのは、確かに理想の観劇スタイルです。
これからも、そんな観劇を楽しませていただければ(゚▽゚*)
玄之介さんとも、まさか伽羅倶梨でお会いできるとは思っていませんでした。
彼の魅力が引き立ついい役どころでした。
また、次回公演を楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2014年5月23日 (金) 11時17分