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2014年4月28日 (月)

勝手にノスタルジー【関西学院大学文化総部 演劇集団関奈月】140427

2014年04月27日 Cafe Slow Osaka (110分)

おバカな男たち、イライラして切れる男、酒乱の女性。
ハイテンションな人たちが織りなすバカ騒ぎ。
そんな中で過去を振り返り、残してきた思い出しくない過去と対峙して、これからを生きようとするまでを描いたような話。
学生さんだけに若さを活かしたおバカをがっつりと魅せて笑わせながらも、いつまでも人を想い続ける人の優しい姿を浮き上がらせて、温かい味わいも出されていました。

話としては、とても柔らかく穏やかなものなのですが、登場人物たちに求められる個性は非常に弾けた激しいもののようで、そのバランス感が非常に良かったように思います。
バカ騒ぎが単なるバカでなく、そこにある心情をきちんと浮かばせている役者さんの力を強く感じます。

司法浪人中の男。検事を目指しているらしい。
難関の試験を突破するために、一時も無駄には出来ない。
部屋に戻って、さあ勉強と思ったら、怪しい男がいる。
全身ピンクタイツ、乳首には星、フリフリのスカート。頭には何か触覚みたいな変なものまでつけている。手にはマニアックなエロ本。まあ、これは司法浪人のものなのだが。
変質者、泥棒。どちらにしても、法的には不法侵入だ。警察に電話しようとするが、これには正当な理由があると怪しい男は訴える。

聞いてみれば、今日、8年の刑期を終えて、出所する高校時代の友達を迎えるために、この部屋で、3人の友達と集まることにしているのだとか。
そのうちの一人がこの部屋の前の住人だったらしい。引っ越したことを知らずに来てしまったようだ。
ちなみに、この怪しげな格好は、セクシーマーズとやら、雌雄同体かもしれない火星人をイメージしたもので、高校時代にこの格好で踊って大受けしたので、またみんなで踊ろうということになっているらしい。
そういうことなら、みんなは引越し先に集まっているのではないかと、ごく当たり前の意見を司法浪人は男に言うが、なぜか、残りの2人も同じような格好をして、この部屋に集まって来る。
外観同様、ちょっとおバカな連中みたいだ。
追い出すものの、玄関先で騒ぎ立てるので、仕方なく、その出所する男が来るまでしばらく部屋にいさせることに。
とんだ災難に、司法浪人はイライラ。そんなこと、お構いなしに三人は高校時代の思い出話に花を咲かせる。そして、出所する男が高校時代に想いを寄せていた女性にまで、ここに来るように電話したりする。
そのうち、友達なんて話題になる。

司法浪人の男は、この堅苦しいくらいの真面目さや神経質な性格が災いしているのか、友達がずっといなかった。
でも、たった一人だけ、親友と呼べるくらいにずっと一緒の男がいた。
ある日、その親友は自分が同性愛者であることをカミングアウトする。
その日から、自分はその親友を避けるようになった。ホモ達なんて言われて、自分までそうだと思われるのは嫌だったから。
裏切った。親友なら、そんなことも含めて全部、受け入れるべきなのに。
司法浪人は、そんな話を男達にする。
男たちに煽られるように司法浪人は、その親友に電話を久しぶりにするが、途中で切ってしまう。
もう、忘れたい。あの親友のことを自分は忘れてしまいたい。
そんな司法浪人の姿を見て、男たちは、出所する男もそうなのではないかと思い始める。
出所する男は、先生を刺し殺した。そんなにその先生を憎んでいることすら、何も言わないので知らなかった。始めから、あいつは自分たちを友達と思っていなかったのではないのか。もう、自分たちは、あいつにとって会いたくない、忘れてしまいたい存在なのではないか。
男たちは、これ以上、待っても無理だと、出所する男のことを忘れる決意をして、部屋を去る。
この部屋にはお婆ちゃんの幽霊が前は出たなんていらんことを言って。

ようやく静寂が戻った部屋。
勉強に集中。
としたいところだが、色々なことがあり過ぎて、そして、あの親友のことも気になって、なかなか思うようにいかない。
テレビをつけても、怖い番組とかをしている。男たちに、去り際にいらんことを言われたのでちょっとビビっている。
そんな中、ノックの音が聞こえる。
入って来たのは、酔いまくっている女性。最初はお婆ちゃんの幽霊だと勘違いして怯えていたが、よくよく考えて気付く。男たちが呼び出したあの女性だ。
酔っていて支離滅裂な女性の言動に振り回されながら、彼女の言葉から出所する男の過去の事実が浮き上がってくる。
彼は、女性を暴行した先生に復讐をして、罪を犯した。そして、そのことを裁判でも全く言うことは無かった。
でも、女性はそんな彼に会おうともせずに、8年の時を過ごした。そして、今、結婚しようとしている。裏切り。相手の気持ちに応えられなかった。
会って、ありがとうとごめんなさいの言葉を言いたい。でも、どんな顔をして、どんな言葉を彼に投げかけることが出来るのか。揺れる心を落ち着かせるために、こんなにまで酒を飲んだみたいだ。
司法浪人は、自分の過去ともオーバーラップさせ、彼女に忘れることを進める。
過去を振り返っても仕方が無い。未来だけを見つめればいいと。
彼女は自分に言い聞かせるように、声を大にして、彼を忘れると叫ぶが、玄関先に彼のセクシーマーズの衣装が発見される。
どうやら、ここまで彼は来ていたらしい。
でも、会わずに去った。
その事実を認めて、やはり忘れるべきだという司法浪人の言葉を振り切り、彼女は彼の後を追う。

しばらくして、あの男たちも戻って来て、彼が来ていた事実を知る。
やっぱり、あいつは自分たちのことを忘れていなかった。会いに来てくれた。
みんなで彼を探しに駈け出そうとした時、彼から電話が入る。
我先にと彼と話したがる3人。やがて、再会の約束をして男たちは、彼の下に向かう。
ようやく落ち着いた部屋。
机に向かって勉強をしようとするが、高校時代のアルバムを見て、司法浪人はもう一度、親友に電話をしようとする。

非常に分かりやすいストーリーで、結末もそりゃあそうだろうとごく普通のもの。
奇抜なのは、登場人物の姿恰好くらいでしょうか。
でも、とても温かい気持ちになれる作品です。

3人の男たちのおバカっぷりが大事ですね。男の思慮に欠けたバカさ加減。
ただ友達だから会いたい。会って、またバカ騒ぎしたい。自分の気持ちにストレートで、もっと色々な視点で考えたら、躊躇しそうなのに、まあ、テンション上がって彼を待つ。純粋と言えばそうでしょうが、飽きれるくらいの単純さ。でも、そこが微笑ましくもあります。
それに対して、女性の深さ。酒の力を借りなくては決断できないくらいにまで悩み、相当な覚悟の上で彼と会おうとする。彼への真剣な想いが、辛くも優しくも感じます。
そんな対照的な男たちと女の両方と話をすることになった司法浪人。
過去は振り返らない、過去は忘れてしまいたい、自分にあるのは未来だけなんてクールを装う男の凍った心が溶けたような温かみを感じます。

司法浪人は未来へ逃げようとしているみたいですね。
過去には忘れてしまいたい辛いことがあったから振り返ることもできない。今は、今で大変だから決して居心地のいい場所ではない。
過去、現在に自分の身を置けないならば、消去法的に未来へと目を向けるしかない。
誤りなのかどうかは分かりませんが、そんな未来に光があるとは思えません。
生きていれば、嫌なことともいっぱい出会うことになり、それを忘れてしまいたいという気持ちは当然だと思います。
でも、忘れることと消し去ることは等価ではないように思います。というか、消し去ることは不可能でしょう。それならば、そんなことも自分の中で受け止め、記憶として刻み込むしか無いのだと思うのです。
そして、いいも悪いもたくさんの記憶を作って、そんな記憶をどこか隅の方に押しやってしまう。それが忘れるということのように思います。
失恋なんてそんな感じじゃないでしょうか。
本当に死んだろかと思うくらいに自暴自棄になっている間は、それをまだ受け止められていないのでしょう。やがて、それを受け止め、辛い記憶として心に刻む。そして、また未来に素敵な人と出会えたりして、その楽しい記憶たちが心を占めて、辛い記憶を隅に追いやってくれる。その時には、いつの間にか辛い記憶がいい記憶に変わってしまっていることもあるでしょうから。
刻み込まない間は、ずっとそのことに苦しむだけのように思います。悪いことが悪いままでしかありませんから。
そんなことを繰り返して人は生きているのではないでしょうか。
ただ、そんな追いやったはずの辛い記憶がひょっこり顔を出して、異常なまでにへこむこともありますが、それもまた人生でしょう。

司法浪人と女性は、過去の辛い出来事と向き合い、長き時を経て、ようやくそれを心に収めることが出来た。二人にとって、未来はこれから。
この記憶を、これからどう心の中で変えていくのかが、二人の未来なのだと思います。

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