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2014年4月 1日 (火)

IN HER THIRTIES【TOKYO PLAYERS COLLECTION & ライトアイプロデュース】140331

2014年03月31日 インディペンデントシアター2nd  (華やかThirties:75分、麗らかThirties:60分)

以前、拝見した20歳代の女性を描いた作品の30歳代バージョン。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/in-her-twenties.html

設定や演出は変わらず、一人の女性を10年間の歳、各々の10人が自分会議するような感じで話は展開する。
20歳代バージョンより、格段と面白い。前は、この不思議な作風が面白いだけで、一人の女性が浮かび上がることで、感じるものは少なかった。
今回は、何か心が奮い立つような感動を得る。
それだけ、女性の30歳代は人を魅了する時間なのだろうか。

二つの異なるパラレルワールドみたいな形になったThirtiesバージョンを観劇。
これがまた面白いのだ。面白いという書き方も語弊があるが。
仕事と家庭という女性が抱える重大な問題を、自らの決断でその答えを出すまでの二つの人生が素敵に描かれている。
華やか、麗らかのバージョン名がピタリとはまる素敵な作品。

舞台は半円形に椅子が並ぶ。両端には背付きの椅子、間に8個の丸椅子。計10個。30~39歳の10人の役者さんがそこに座る。
真ん中に大きな台が一つ。ここがアクティングスペースで、各々の回想シーンが演じられる。

最初の10分ぐらいは、役ではなく、役者自身の素の姿が映し出される。
どうやら、これから描かれる女性のピースのような31~38歳の8人が、その人の噂話をしているかのようなところから始まるらしい。
感覚的には、30歳と39歳の女性は、その時までの時間の蓄積を持つ実体ある女性だが、31~38歳は、その年の女性を切り取ったある女性を構成するあくまで単独の部分的な存在のようだ。
もう始まったと思っているので、一人の女性を頭の中で既に創り始めてしまい拍子抜け。
何、何、あんたがそこに住んでるのか、あんたが合コン行ってテンション上がっとるんかい、今時の子はおませというレベルを超えてるねえなんてツッコミを入れながら、すっかり気が緩んだ状態で観劇開始することに。
変に構える気持ちが無くなって、いいスタートを迎えられたような気はするが。

南森町に住み、出版社に務める30歳を迎えた女性。これから、自分がどんな30代を歩むのかはもちろん知らない。仕事にも夢があるし、遊びだって楽しい。大好きな彼氏、ショウタとは同棲を始めた。ショウタはビオラ奏者の仕事をしている。20代を越え、少し落ち着いた雰囲気の中にもまだ幼さを残すが、前をしっかりと見据えた力強い目をしている。
ショウタとの同棲生活が順調な31歳。親友は先に結婚をして大阪を離れる。自分も近いうちに結婚して新たな家庭を持つのだろうか。幸せいっぱいの笑顔が印象的。
プロポーズされた32歳。結婚式に親友にスピーチを頼んだりする。照れと戸惑いの中の素敵な笑顔。
仕事が忙しくなり、ややスレ違いの日々が続く33歳。少し今に不安を抱えている様子だが、仕事にまだまだ向き合いたい気持ちも大きいみたい。やりたいことがあるなら、今しないと、昔みたいにこれからがあるわけではないといった感じだろうか。
東京から出向で大阪に来たタカハシという上司と出会う。その上司が東京に戻る際、仕事を見込まれて東京転勤を打診される34歳。大阪を離れるなんて考えもしなかった。でも、向こうでもっともっと頑張りたい。単身赴任になるが、夫も許してくれる。この時は、夫の心の奥深くまでを見詰めることよりも、自分の能力が認められた誇りや、これからさらに広がる自分の仕事への期待が大きかったのだろうか。決断の時だった。
いい上司に恵まれ、色々な指導を受けながら、力を付けていく35歳。少し、その上司には恋心を抱いていたみたい。向こうだってきっとまんざらじゃなかったから、東京に誘ったのかも。仕事のミスの責任を上司がとるという厳しい出版社社会の現実を目の当たりにする。そして、仕事に力を入れれば入れるほど、夫の影が薄くなったみたい。離婚。3年の結婚生活にピリオド。覚悟を決めて、仕事に精を出す道を確立していく。
仕事で自分の意見も通り始め、やりがいがどんどん大きくなる36歳。離婚したショウタは、風の噂で婚約したのだとか。どうしようもないやるせなさに、10歳も若い部下の子、マエダといい仲に。仕方が無い。寂しいし、性欲だって大きくなる頃なのだから。ちなみにあの上司とは一線を越えていない。甘い仕事じゃないのか、貪欲さが出てきて、少しやさぐれた感じになっている。
リーダー的な立場になり、仕事の成果も確実に上がる37歳。部下との付き合いはまだ続く。けっこうな年収をもらっているので、デート代はかなりの頻度でこちら持ちみたいだが。上司としての貫禄もつき、まさに出来る女路線をまっしぐらといった感じか。成功を収め、一区切りついたかなといったところに、母が倒れたという知らせが入る。
大阪に戻った38歳。長堀にマンションを買って、実家の母の世話をする。東京でバリバリやってきた彼女にとっては、まだまだな会社だが、みんなと一緒に改革を進めながら、新しい会社を盛り上げて行くつもり。数々の経験を経て、どうにかなること、どうにもならないことなどを知ったのか、悟りを開いたような落ち着きのある姿を見せる。
マンションで犬を飼い始め、世間的には寂しいバツイチ女性になった39歳。でも、会社の仕事と共に、自分のやりたかったことも進め始める。高校の同窓会で知り合った、若くしてアスリートを引退して、人気スウィーツの店を営む男の半生を描いた本を創る。雑誌だけでなく、書籍にまでチャレンジする覚悟。その男性とはどうだろうか。そんなに意識はしていないつもりだが。まだまだ、やりたいことがいっぱい。そんなことを成熟させていくような40歳代にしたいようだ。
30歳代を今、振り返り、30歳代のスタート地点に立つ30歳の私と対面し、今の正直な気持ちを語りかける。

これが華やかバージョン。
麗らかバージョンは、34歳で異なる選択肢をとる。東京には行かない。夫との間にそろそろ子供をもうけて、家族を作ろうと考える。
35歳で出産。ついにお母さんになる。仕事も辞める。残念だったのだろうが、彼女の顔は幸せそうだ。
子育てで大変そうな36歳。母親らしい優しさを醸すと同時に、これまでは見せてこなかった肝っ玉のすわったような雰囲気も醸す。母は強しといった感じか。ある意味では、仕事を続けるよりも忙しい日々を過ごすことになっているみたい。
夫の仕事がうまくいかず、パートに出始める37歳。これから、子供にもどんどんお金がかかる。幼稚園にだって行かさないといけない。母に子供を預けて、再び、働き始める。と言っても、ロードサービスのコールセンター。知識が無い上に、クレームのような電話に対応しないといけない精神的に厳しい仕事だ。それでも、必死に、必死に頑張る。辛くて、ちょっとやさぐれたような雰囲気も醸す。
仕事と家庭を両立させる生活にだいぶ慣れてきた38歳。でも、母が倒れる。これまでの忙しさの上に、母の、面倒も見ないといけない。夫は、音楽教室を開いて、収入を得るようになったが、まだまだ生活は楽ではない。厳しい日が続くが、彼女は凛とした表情で全てを受け止めて頑張る覚悟をしているようだ。かつての出版の仕事に抱いていた夢を押し殺すことが出来たのだろうか。それも、無理やりではなく、今の家族と仕事を受け入れて、懸命に生きるということから自然に。
子供の入園式がもうすぐ。生活はだいぶ安定して、仕事も頑張ったかいあって、そちらでもやりがいある立場になった39歳。高槻に住んでいるらしい。今は、昔の出版社の同期が本を作るとかで手伝ってくれないかと言われているらしい。今の仕事、夫と子供、母。まだまだ、自分が目をかけないといけないことがたくさんあるけど、どうしたらいいだろうか。昔に夢を抱いていた仕事もする余裕はあるのだろうか。今の仕事には精神的に余裕も出来てきたし、夫の仕事も今よりかはもう少し良くなるだろう。子供も幼稚園に入り手がかからなくなるだろう。そんなことを見詰めながら、家族のために尽くしてきたこの数年間から、自分の時間をまた純粋に楽しむ時間を作るような40歳代を迎えることになりそうだ。、
30歳代を今、振り返り、30歳代のスタート地点に立つ30歳の私と対面し、今の正直な気持ちを語りかける。

30歳と39歳の私には、背付き椅子に座らせて、動かさずに互いに今のことをインタビュー形式で語らせる。間の8年間の8人の私は単なる丸椅子に座らせ、次々に当時を回想するように描いていく。
ある歳の私が描く当時のシーンでの会話を、他の歳の私が描くシーンの会話と成立しているかのように見せる不思議な交錯させた世界を創り出したりもしている。8人は異なるが、繋がった私だと思わせるような演出だろうか。
女性にとって、恐らくは人生の最大のポイントになるであろう、仕事か家庭かの選択肢で39歳の姿は変わる。どちらを取った方がいいとか、こちらをとったからこうなったとかに焦点を当てて描かれているのではないようだ。
自分で切り開いた人生の多様な姿をたまたま二つのバージョンで描いたというだけだろう。
選択肢はこの他にも幾らでもある。ただ、30歳代の女性を描く上で、仕事と家庭の問題は避けることのできない重大なターニングポイントであることは確かだろう。
どちらのバージョンでも、仕事も、恋愛も、家庭も、みんな、各々の歳で、その時の立場で精一杯向き合って生きたという跡が浮かぶ。
だから、39歳の女性の姿は、素晴らしい、美しいと感じる。
上記したリンク先の20歳代の女性を描いた作品では、自分の人生と照らし合わせてみたりしたのだが、今回はとても出来ない。この女性の30歳代の生き方は、あまりにも芯があってしっかりしていて、その時その時が輝いており、自分と比較でもしようものなら、相当へこむことになりそう。
とはいえ、今の自分も、結局は自分の数々の決断の中で、形作られた存在なのだろう。そんなことを考えながら、性こそ違えど、素敵で強い人生を歩んだ一人の女性の姿を目にして、何か、自分を誇りに思い、勇気付けられる嬉しい気持ちになった。

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