gate ユース Aプログラム 140417
2014年04月17日 KAIKA (95分)
若手劇団として位置付けられている6団体の企画公演。
Aプログラムは、その中の3団体の公演。
3作品とも、若いからというのは理由では無いだろうが、やはり発想が面白い設定での作品となっている。
その中で、何か今のご自分や世の中をどう見詰めているのかなんてことが見えてくるような感じだった。
<以下、若干ネタバレしていますが、許容範囲内と判断して白字にはしていません。ご注意願います。公演は日曜日まで>
・王様からのラブ♥レター : B級演劇王国ボンク☆ランド
ユースと言いながら、もう31歳になる西マサト。
芝居とビデオ屋でバイトの日々を過ごす。
過去に婚約者を寝取られて悲しい想いをしたからか、片想いが趣味みたいになっている。
アニメ、特に高槻やよいをこよなく愛し、J-POPを世の恋愛の悪の根源だと憎み、バイト先では面倒くさい客を相手にし、テレビマンの兄にしっかりしろと説教され、何でも協力してくれる奇特な優しい母を持ち・・・
そんな、このB級演劇王国ボンク☆ランドの王様、西マサトは、ある日、捨てられたラブレターの群れと出会う・・・
劇団としては、これまで2回ほど拝見している。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/130512-ea21.html)
観に行った方なら分かってもらえると思うが、開場してから開演までの30分ほどの間、舞台でだいたいご自分方の普段についてフリートークをしており、それがけっこう面白かったりする。
今回は、そこに焦点を当てて、より西マサトさんに迫るような作品か。
ほとんどが実話になっているらしい。
捨てられたラブレター。渡せずに捨ててしまったのか、渡したけど拒絶されてしまったのか。どちらにしても、そこには伝わらなかった想いがこもっている。
自分の本当の想いを知って欲しかった。そんな、悲しい叫び声が聞こえる。
想いを伝えられない辛さ、悲しさをよく知る、王様は、そんな彼らの悲しい声を、舞台で、この作品で昇華させる。
観てもらえるかどうかも分からない。観てもその想いを感じ取ってくれるとは限らない。拒絶されるかもしれないし、何一つ想いを受け止めてもらえないかもしれない。
でも、王様はずっとラブレターを書き続ける。
といった感じだろうか。
このブログはその返事になっているだろうか。真意を受け止めているかどうかは分からない。でも、私も恥ずかしいけど、ちょっとあなたのことが気になっていますと返事をしているつもりなのだが。
・マサチューセッツの開花宣言 : Massachusetts
オフィスの日常、魔王と悪の4人衆、相撲@手荷物検査場、ショートコント・コンビニ、昼ドラ風愛の迷宮・・・
だったかな。覚書として勝手に題名をつけた。後から思い出せるだろうか。
京都造形芸術大学のコント集団らしい。
基本、私は演劇作品を観るので、ここはまあ、間の骨休めみたいなつもりだったのだが、これが思いのほか面白く、がっつりと笑えて、すっかり満足してしまった。
シュールさを醸しながら、絶妙な構成力を活かした感じかな。
5人組だが、さすがにコントをされるだけあって、各人の個性が強い。
・奇跡と暴力と沈黙 : 匿名劇壇
1分に1回暴力、3分に1回奇跡、4分に1回沈黙、5分に1回誰かが死ぬ。
この設定の下、男女各3人のグループが21分間をやり過ごさなくてはいけない。
1人の判定人の開始の合図で、時が刻まれ始める・・・
まあ、面白いことを考えてするものだ。
ゲームみたいなものだろうと最初は思い、暴力でケンカになり、空気が悪くなって沈黙が起こり、突如として誰かが死んで、生き返って奇跡が起こり・・・ドタバタが繰り広げられるみたいな感じかなと考えていた。
いつもながらの切れ味鋭いオチはどうなるのかと楽しみにしていたが、この作品はそんなもんじゃない。
観ているというか、見守っていると、大袈裟だが、世界の縮図かのようにすら見え始める。
少し距離がありながらも仲間意識を芽生えさせる開始から、集団心理が働くのか、敵対心が生まれ始め、そこからまた分かち合いへと至る。
その分かち合いは、最初よりも絆が深まっているはずなのだが、21分間の数々の苦難の中で自分をさらけ出してしまったからなのか、最初のぎこちないけど微笑ましかった純粋な絆とは全く異なる。
互いに心底知り合えて得た絆なので、本来はそれこそが本当の絆ってところなのだろうが、それは気味悪く映る。これなら、最初の表面的な絆での付き合いの方が良かったようにすら思える。
もう二度とあの頃の姿にこの6人は戻ることは出来ないだろう。それが時が進むことの残酷さのようにも感じる。
人は出会ってから、時を共に過ごすことで、共に苦難を乗り越えることで、本当により良き関係を築けるのだろうか。
自己本位な行動、人を想う行動。正論、理屈、正義、偽善。目的遂行至上主義、功利主義・・・などなど様々な考え、感覚が交錯する。そして、最後に想い合いや愛なんかも生まれる。そんなことが浮き上がるきっかけになるのは、回数的にもいつも暴力であるようなところがあり、興味深い。
争いが人の感情を刺激するのか。争いを経ないと人は主義主張を見出せないのか。
21分後、至ったところは、そこが終着点では無い。21分はこれからも続くし、世界は永遠にこんな時を繰り返していく。
21分というわずかな時ですら、何も起きない空虚な時間を過ごすことは出来ない。暴力、奇跡、沈黙、死を経て、ようやく至る愛。それすら、本物なのかという問いと、それでも、こんなことを繰り返して時を過ごさなくては仕方ない人の姿が映し出されているようで、何やら気味悪い作品だ。
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