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2014年4月21日 (月)

Traumatic Girl【Z system】140420

2014年04月20日 十三BlackBoxx (95分)

トラウマを抱え、自分を大事にしない、幸せになることを放棄してしまったような三人の少女が、その自分のトラウマと対峙して、そこからまた前を向いて歩み出すまでを描いた話。
演劇作品としては、けっこう定番の話だろう。
展開も、各々がトラウマを持つきっかけになった出来事を回想する中で、過去の自分と出会い、逃げている今の自分を見詰め直す流れが繰り返される。
正直、ありきたり感が最初はあったのだが、それを一掃して素晴らしいと思わされたのは、三人の迫真の演技だろうか。
池田琴弥さん、森下りおさん、増田かよすさん。
このお三方のトラウマを抱える苦悩、その凍った心が徐々に溶けていき解放されていく様の表現が、震えがくるくらいに素晴らしいものだった。

終電前のマック。
女子高生たちが、ギャル語で色々と会話をしながら騒いでいる。
ヴァニティーとかいう店から、招待メールがきて、その店に行けば、願えば何でも手に入るとかいう都市伝説があるらしい。
さんざん騒いだ後に店を出る女子高生たち。
さっきからずっと仮眠をとっていたジャージ姿の別の女性三人が目を覚ます。
ジャージの下には制服を着こんでいるようだが、女子高生では無いみたいだ。どうやら援交をしているらしく、この姿の方がうけがいいのだろう。
三人はLINEで知り合っただけで、互いのことはあまり詮索することなく、援交をしながら金を儲けて、その金で各々好きなことを自由にするという生活を過ごしているみたいだ。
今日はクラブにでも行って騒ぐかなんてことを言っていると、一人の女性にあのメールが届く。

気付くと三人はあのヴァニティーとかいう店の前にいる。
ビビリながらも店に入ると、マネキンのようなスキンヘッドに黒づくめの店員と、どう見てもガキのような店長がいる。
本当にこの店は、何でも手に入るらしい。ただし、金で買えるような物ではない。
招待メールを受けた女性、環にはそんな願いは何も無い。自暴自棄になって、自分の幸せを放棄してしまったかのような冷めた生き方をしているみたい。
でも、残りの二人にはあるみたいだ。
人の考えていることが分かりたいというかえで、とにかく綺麗になりたい美奈代。
店長はメールが届いていないなら願いは叶えられない。でも、あなたたちの過去を教えてくれるなら、願いを叶えてもいいと。

三人はこの店で、過去の自分と対峙する。
かえで。
仲の良かった友達。自分のグチをいつも聞いてくれていた。でも、ある日、その友達から距離を置かれる。自分のことばかりで疲れると言われて。
友達に裏切られた後の学校生活は悲惨だった。自傷行為で血を見ることで生きていることに安堵を覚え、何人もの男と寝ることで自分を傷つけていった。自分を大切にする感覚などいつの間にか消えた。
そんな過去を持つかえでの目の前に、その友達が現れる。友達は自分のことばかり話してきて、私のことを何一つ知ろうとしないかえでにいらだちを感じていたみたい。でも、一緒に過ごした時間はとても楽しかった。もう、会うことが出来ない存在になってしまったので、お別れと謝罪と感謝を伝えに現れたらしい。
自分のことしか考えず、いつも自分のことを想ってくれていた大切な友達の真意を理解しようとしなかった。最期の時に、まだ自分のことを想ってくれていた出会えた大切な友達のことを初めて想い、涙する。

美奈代。
いつも三人でつるんでいた。
憧れのバスケ部の先輩。応援する以上の感情を抱くようになる。 でも、美奈代の幼馴染で学校一の美女が先輩に告白するという噂が。
三人はみんなで告白して、その幼馴染の先を越そうという計画を立てる。誰かが成功すれば恨みっこ無しで。そして、全滅しても、プライド高い美女が自分たちの後に告白するとは思えないので、どちらにしても付き合いを防ぐことができるという計画だ。
でも、美奈代は焦りのあまり、自分だけ先に告白してしまう。そして、先輩からデブは嫌い、ガチャピンみたいな容姿ではとても付き合えないと厳しい言葉を突きつけられる。
さらに、友達からは絶縁を言い渡さる。
綺麗にならないと。その脅迫観念から、多額の美容整形を繰り返し、そのお金は援交で手に入れた。 そんな美奈代の前に過去の自分が現れる。ぽっちゃり、ガチャピンみたいな素朴な女の子。
大嫌いだった、全否定した自分。でも、そんな自分から大好きだと言われる。見せかけの綺麗さだけを求め、自分の本当の魅力を失ってしまった今の自分に気付き、涙する。

環。
親から気に入られるようにいつもいい子でいた。そのうち、それが負担となり一杯一杯になって裏の顔を作るようになる。いい子の外観だけ見て、裏の顔を見抜けない大人たちに失望する。
本当の私を見て欲しい。その欲求は、出来があまり良くないためか両親にすごくかまってもらえる妹への憎しみと変換されていく。
一度、溺れている妹を見て見ぬふりした。幸い、命は助かり、妹もそんなことを覚えていないみたいだが、いつもそのことを責められているような罪悪感を背負っている。
こんな想いをするのは、あんな両親から生まれてきたからだと思うくらいにまでなってしまった。
そんな環の前にも過去の自分が現れる。
もっと自分を隠さずに出せばよかった。苦しいことは苦しい、嫌なことは嫌だと言えばよかった。過去の自分は、まだ見ぬ今の環を見て、悔いと変えようとする意志を示す。
長年の苦しみから解放されたかのように、環はこれまでの苦しみを思い、安堵と、これからの希望を願うような涙を流す。
そして、そこには未来の環の血を引く者もいた。元々、環だけがこの店に招待されている。メールを送ったのは店長。伝えたいことがあったのだ。
子供は親を選んで生まれてくる。決して、勝手に親から生まれてくるのではない。環も、今は憎しみを持ってしまった両親を、この人たちだと自分で選んで決めて生まれてきている。そして、店長はあなたを選んで生まれようと思っていることを。

三人は目を覚ます。長い夢を見ていたようだ。
目の前にはヴァニティーという店がある。
でも、もうそこに入る必要は無い。虚栄を張った生き方はもうしない。
せっかく出会えた心の傷を持つ者同士、本当の自分をさらけ出し、相手を想い、想われる間柄となって、これから自分たちのトラウマを克服して進んでいけばいいと思えるようになったから。
幸せになる。もう一度。
トラウマからの呪縛を解いて、飾らない自分で生きていく。
そして、もう一度、自分のことを好きになろうとする三人の姿がある。

上記したお三方の素晴らしさはもちろん、若い方たちが多いようで、トラウマという重いテーマの割には華やかな舞台でもありました。
メイクも工夫されており、楽しそうな日常を普通に過ごしているように見える人それぞれに、何かしらの別の顔があることを思わせるような仕掛けになっているみたいです。
出会えた人。その人の一つの顔だけ見るのではなく、その中にある色々な顔を見てあげられるようになればいいなと思います。そして、その中に苦しく、悲しそうにしている顔が見つかったなら、一緒に自分のことをさらけ出して、その苦痛や涙を取り除いて、笑顔に戻してあげる。そんなことを互いにし合える関係が、友達であり仲間なのでしょう。

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