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2014年4月 1日 (火)

裏の裏の裏は裏【劇団925】140331

2014年03月31日 インディペンデントシアター1st (90分)

3本立て短編集。
どれも笑えて、心温まるということをベースに創られているみたい。
個性的なキャラ、巧妙な会話の掛け合いなどで、大笑いして、その話の中に潜む想いに心温めるといった感じでしょうか。
全て素敵な作品でした。

・市ノ瀬薫子の特殊なお仕事

とあるスーパー。
アイディアマンの女店長の下、店員はじめスタッフみんなが仲良くしっかり働いており、売上もなかなか順調に伸びている様子。
休憩室で店長は雑誌の星座占い好きな女の子とお喋り。星座占いのラッキーアイテムを日々、陳列する棚を作ったらどうだろうか。得意のアイディアが今日も出る。店長の星座の今日の運勢はどうだろうか。
そんな会話をしているところに、店員が飛んでやって来る。市ノ瀬さんが今日も。
この市ノ瀬さん、元々、警備員だったが、保安員、いわゆる万引きGメンをしたいと志願して、その職に就いている。
ところが、少々変わっているというか、天然過ぎるというか、奇抜な格好をするものだから、今では、万引き犯を捕まえるどころか、常連の客にTwitterで写真をアップされるくらいに。今日なんて割烹着にサンダルだし、昨日なんかはマラソンランナーの格好だった。
これを見たエリアマネージャーは、彼女を警備員に戻すように店長に指示する。
それを聞いていた店員たちは彼女を解雇させるつもりだと勘違い。
おかしなところがあるが、店のことを真摯に思っている彼女のことがみんな好きなのだ。
店員たちは彼女を守るためにある計画を立て・・・

入谷啓介さんの脚本。
びっくりするくらいにほっこりした話。ここまで、いい人たちばかりでいいのだろうかと思うくらいに、悪意が無い。
立てた計画は誰かが万引き犯になって、市ノ瀬さんに捕まえさせ、エリアマネージャーにPRするという幼稚なもの。もちろん、エリアマネージャーはすぐに見破るが、店長の下、みんながまとまっていることを評価してか気付かないふりをする。店長は、結局、市ノ瀬さんを警備員に戻すが、店のことを真剣に思っていることを評価して、自分の補佐的な仕事も任せる。そのことを自分のことのように喜ぶみんな。
この事件をきっかけに、さらに店は、この素敵な面々によって発展することだろう。
ちなみに店長の星座占いは最下位。でも、ラッキーアイテムは割烹着だったみたいだ。
幸せの塊のような作品。劇団925にはこういった作品が似合う。
市ノ瀬さんを演じる宇仁菅綾さんがチョコチョコと可愛らしくも抜けた面白さで魅せます。

・インカム

喫茶店でインカムを付けて、オドオドしながら誰かを待つ妙齢の男。
指示をする者は、妹と、小学校の時の先生。なぜか、弟と結婚するから、直に義理の妹になる。
この男、30歳を過ぎるのに未だ童貞。それどころか、まともに女性と会話したこともない。
そうなってしまったのも、先生曰く、昔、同級生の女の子に自分の観察日記をつけられていたことを知り、相当なショックを受けて落ち込んでからなのだとか。
妹は、そんな兄を何とかしてあげたいと、兄が誰かとメールのやり取りをしていることを知り、勝手に会う約束をしてしまう。
先生は、最近、童貞の男を描いた作家のファンで、童貞には詳しいからと付いてきたみたいだ。
その結果、こういった状況になっている。
やがて、女性がやって来る。少し、歳はいっているが、まずまずいけている。出版社に勤めており、落ち着いたお上品な感じで、兄もまんざらではない様子。
会話の指示が飛ぶが、緊張している兄には通じず。
いったん、トイレに逃げ込む兄。
すると、女性が急に本性を現す。だらしない姿に、しかも誰かとインカムで喋り出す。
向こうもインカムというダブルインカム状態だったのだ。
妹は、向こうの正体を暴きに、姿を現す。
そして、出てきた女性は・・・

脚本が中野劇団の中野守さんですから、いつもながらのお見事な作品です。
それに沢大洋さん演じるオドオドした兄の姿で大笑い出来ます。言動一つ一つが面白い。
結局、出てきたのは童貞の男を描く作家の女性。彼女もまたネタ作りのために編集者に勝手にメールを出されていたみたい。
メールをやり取りするだけで互いに心の安らぎを得ていたのに、こんな勝手にメールを出されたことで、それが壊れてしまった。でも、そんな気持ちを互いに持っていたということを知り、二人の間にほのかな想いが生まれます。雨降って地固まるみたいな感じで、結果オーライといったところでしょう。
しかも、この女性、かつて観察日記をつけていた同級生。互いに時が経って変わった姿なので気付かなかったみたい。そりゃあそうでしょう。兄は昔はロン毛というあだ名だったのですから。まあ、これは沢さんの姿を見れば、その面白さが分かります。
観察日記をつけるというのは興味があった証拠。好きだからいじめると似た感覚でしょうか。どこからともなく、この喫茶店に現れた謎の男の仲介で、二人っきりにさせられた二人は、これから互いの誤解を解いていき、想いを膨らませることになりそうです。
ラストは、兄のくだらないけど、まあ誠実な男なんだろうなということが分かるような一言で締められます。
思わず吹き出してしまうような気持ちは、その一言を受けた同級生の女の子の屈託の笑顔と同調しています。
この作品もまた、ほっこりと心が温まる。

・お通夜ノムコウ

女優のKUNIKOが亡くなった。
一度は克服したと思われた病気だったが、再発し、ついにこの日を迎えることになったらしい。
喪主は妹。事務所の後輩たちがその通夜にやって来る。
ところが、一人の後輩が棺から手がニュっと出てきたと騒ぎ出す。あまりの大騒ぎっぷりに坊主のカツラがズレてしまうくらいに。
最初はみんな嘘だと思っていたが、白装束のKUNIKOの姿を見てしまい、幽霊騒ぎになる。
そんな中、妹の娘、つまりはKUNIKOにとっては姪の女性がやって来る。
彼女もまた女優をしているらしく、突然の知らせを受けて駆けつけてきた。
そして、この騒動。どうもおかしい。母も何かを隠しているみたいだ。
妹は母を問い詰める。
観念したかのように、KUNIKOが出てきて・・・

コメディーなんですが、悲しい宿命や死を扱っているので、最後にはどこかしんみりとする作品。これまでの2作品と同様、思いっきり笑わせておいて、最後は心温めるといった形を踏襲しています。
心温まる作品をよく自劇団で創られる坂田
大地さん(劇団そとばこまち)の脚本。お得意といったところだったのではないでしょうか。
結局、この葬式は偽だったようです。女優KUNIKOの最後のシャレ。自分の葬式を見てみたい。でも、本当に最後のシャレなのです。病気は本当で、恐らくはあと数日の命。だから、その前にやりたかったようです。
これを聞かされた姪は、ずっと心にしまっていたことをKUNIKOに問います。
私は本当はKUNIKOの娘。女優としてこれからの時に生まれた子は妹の手に預けられ、自分は女優への道を貫いた。でも、やはりその血をひいているのか、娘もまた女優の道を進もうとしている。
そんな真剣なやり取りがあり、周囲を凍り付かせますが、二人は女優。迫真の演技だったということで、その場を終わらせます。事実を暴くことが目的ではなく、互いの想いを知ることに意味があったのでしょう。女優の道を進む覚悟を娘はKUNIKOに伝え、KUNIKOはその気持ちを受け入れた。二人の悲しい運命を背負った芝居はそんな二人の見えない気持ちがぶつかった最後のものとなったようです。
翌日、KUNIKOがまだ生きたままで葬式が執り行われます。自分が長くないのでこうして生前葬をしたこと、そして、ここにいる姪が自分の女優の道の跡を継いでくれるので支援して欲しいということをKUNIKOは語り、数日後、本当の死を迎えます。
しんみりですが、外に色々なことを出せない女優の覚悟の中での、深いところで結ばれた二人の絆みたいなことを感じさせられる芯のある話でした。

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