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2014年4月 4日 (金)

歌喜劇 あなたと轍【マサ子の間男】140403

2014年04月03日 OVAL THEATER (80分)

何とまあ・・・
結局はオヤジのくだらん妄想に付き合わされただけだったのか、それとも出会った少女の夢の世界なのか。
恐ろしいまでに不可解な話の展開の中で繰り広げられるおふざけ。と思えば、統制された動きや絶妙な掛け合い、そして歌喜劇と称するにはもったいないくらいの心震わすミュージカル調のシーンが凄いという感動を引き起こしたりする。
振れ幅の大きい観劇であった。その割には、妙に安心して観ることが出来るという、不思議な感覚が残る。
総じて、面白かったということは間違いない。

<以下、その不可解な話の展開をあらすじとして記していますので、ネタバレにご注意ください。観劇に支障が出ると思います。大阪は日曜日まで、その後、東京で水曜日まで公演があります。公演終了まで白字にします>

オヤジ。
奥さんに、息子が一人。家庭では、厳格な父親とは程遠く、冴えない姿を見せているみたい。
仕事は、現場監督。なんて言うと、職人を怒鳴り散らして仕切るような怖そうなイメージだが、実際は職人たちになめられ、ハゲだのチビだの言われてからかわれ、休憩の時間には缶コーヒーを買いに行かされる始末。昔の悪かった頃の話を聞かされて、毎日のようにビビらされる。
ヘルメットを被ってもらわないと、監督の自分が叱られるのに、今時の若い子はファッション重視で全く言うことを聞かない。頭に鉄板やハンマーでも落ちてきたらどうするのか。

そんなオヤジ、今日はちょっといつもと違う。
LINEで知り合った若い女の子と、ファミレスで待ち合わせ。
冴えない日常に、ほんの少しの刺激を求めてしまったみたいだ。
やって来たのは、相当な美人。
ファミレスの客たちの視線も知らずと集まる。
ちょっとテンションが高く、天然っぽいが、まあ、元気で明るいお転婆娘ってとこだろうか。
しかも、どうも自分に気があるみたいだ。
幼き頃に黄色いタクシーに乗る運転手だった少し変わった父が突然、失踪してしまい、その後は生きるために、窃盗やドラッグに身を染めたことがあるらしく、父を無意識に求めているのだろうか。

オヤジはぎごちない会話の後、社有車でドライブ。
海が見たいという彼女。休憩時間を利用してのデートなので、あまり時間は無い。
でも、彼女曰く、一緒にこうしてドライブしているだけで、楽しいのだとか。
オヤジは他の人の視線が気になって仕方が無い。建設現場を見れば、知っている職人がいるのではないかとキョロキョロし、歩行者が自分たちを見ているのではないかと気にし、挙句の果てには渡り鳥の視線にまで怯えている。
そろそろ、行きましょう。
彼女から大胆にもそんな言葉が。
そんなことは出来ない、君はまだ若いんだから。なんて、オヤジ臭いもっともらしいことを言っているが、さっきから目的地設定した場所近辺を何度も、何度もグルグル回っている。工事現場の誘導員など、もう何回見たことか。
どうしたらいいのか。美人局ではないのだろうか。ホテルに入るなり、怖い人がやって来て、それはもうファミレスから後をつけられていてなんて妄想を繰り広げ、悩み出す。
そんな中、頭には白い薔薇、赤いサングラスに、裸にスーツ、ホットパンツ、キラキラのカバンという、どう考えても変態の男と出会う。その男、手には白い手袋をはめている。そして、黄色いタクシー。
彼女の父親に間違いない。
追いかけて、会うべきだと言うオヤジに対して、彼女は自分を捨てた人だと言って、拒否する。それよりも早く休憩に行こうと。
オヤジは息子のことを想って複雑な気持ちだ。

話は変わって、3人の男が困っている。
結婚式に呼ばれているらしい。それも、ただ呼ばれているのではない。受付、写真係、出し物と重大な任務を抱えている。なのに、遅刻しそうな状態にあるらしい。
車を猛スピードで走らす。
途中、鳩やらモグラを轢きそうになって、それを助けながらも、とにかく式場へと必死に向かう。

オヤジは意を決する。
休憩しよう。急いで休憩してから、彼女の父親を探そう。
男の中の悪魔が天使に打ち勝った悲しい瞬間だ。
そうして、ようやく目的地に到着して、そのホテルの駐車場に入ろうと減速した時、車に大きな衝撃が。
オカマを掘られみたいだ。
掘ったのは、あの結婚式へ向かう3人組。
警察を呼ぶか。いや、金で済ませた方がいい。野次馬の中には、奥さんの知り合いも混じっている。遠くであの変態男もいるみたいだ。
幸い、先方も急いでいるので、金で片付けたかっている。
でも、男の一人がかなりの怪我をしているために、誰かが救急車を呼んでしまったみたいで、男は結婚式を諦め、連れて行かれてしまった。

取り残されたオヤジと女の子。
すっかり、空気も冷めてしまい、女の子は歩いて帰るとオヤジとお別れする。
そこに、先ほどの結婚式に向かうはずだった男の一人が、殺意ある目をして迫ってくる。
なんでも、あの追突事故の際に、オヤジの車はモグラを轢いたのだとか。
ナイフを突きつけ、オヤジに向かって突進。
その時、別れたはずの女の子が自分の前に立ちはだかり、・・・
彼女のオヤジへの想いは本物だったのだ。涙するオヤジの腕の中で彼女はゆっくりと息絶える。

ない。絶対にない、こんなバカな話。たとえ虚構の喜劇であったとしても、こんなことはありえない。
という気持ちが心の中に溢れかえった時、それを見透かしたようにありえないという歌とともに大団円を迎える。
オヤジが目を覚ましたのは工事現場。さすがの職人たちも心配そうにオヤジを見守っている。
ヘルメットを被っていて良かった。ハンマーが落ちてきたらしい。
そこには、少しの眠りから覚めて夢の世界から現実に舞い戻って来たオヤジの姿が映し出される。

とこんな感じの話が、一応ミュージカル調に進められる。
何か今一つのれないリズムで、ここは歌う必要ないだろうってところもありながら、四季ぐらいに本格的だよって、そのハーモニーに魅了され、ちょっと心震わせるようなところもあり。
あまりのバカバカしさに唖然とするかと思えば、真剣な演技にほんの一瞬だけ心惹かれてじんわりしてしまったりすることも。
グダグダなテンポになり、いったい何のおふざけをしとるのかという感覚になったと思えば、統制された動きに絶妙なリズムの掛け合いで完璧なシーンを展開されて感動したりもする。
まあ、振れ幅の大きい作品だった。
それに加えて、この、話がどこに向かうのか全く読めない妄想ワールドでの展開。
何一つ、先が読めないパターンは、不安要素も大きく、通常は観劇する感覚に支障が出そうなものだが、妙な安心感があるのは、いったい何だろうか。不安は全て、次どうする気やねんという期待に変わる。そして、まあ、何かしても、どうせくだらないことを考えているんだろといった安心感があるのか。

リラックスし過ぎなくらいの状態で軽々とした気持ちで観て、いつの間にかオヤジと一緒に現実に戻って来たかのようである。
でも、こんなオヤジの抱く妄想は分からないこともなく、突拍子も無いことだけど、どこか日常のレベルを越えない妄想は現実逃避としてしてしまいそうである。
それに、これは女の子の夢なんじゃないかという錯覚も得る。女の子はけっこう悲劇のヒロインになりたがりますものね。
父の愛に飢える美少女が、冴えないおっさんを父に見立てて、少しだけそんな父の愛に甘える時間。楽しい時間が過ぎるが、でも、おっさんは私の父ではなく、違う子の父なのだということが徐々に理解できてしまい、お別れをする。
そんなおっさんの命が狙われることになった時、美少女は一時だけでも父となったおっさんへの想いを胸に・・・
といった感じの妄想。
実はあの後、続きがあって、ファミレスでウトウトしていた美少女が目を覚まし、また窃盗とドラッグの日常に戻っていく。でも、何か少しだけちゃんとしてみようかななんて気持ちも芽生えている。
そんな話を想像しながら、このバカな話を思い出し笑いしながら、帰路に着く。

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