POLYMPIC TOKYO!【天才劇団バカバッカ】140412
2014年04月12日 吉祥寺シアター (130分)
面白い作品だったな。
実際に色々な国籍の外国人を登場させて、今の東京、日本の実情を浮き上がらせている。
個性豊かな方々がなんてことは、このブログの感想でも書くことが多いが、さすがは東京、国際的な個性にまで言及している。
個性豊かなキャラの面白さを出しながら、今の日本に潜む問題点を感じさせるような話になっており、笑いながらもちょっと真剣にこれからの日本を考えてしまう。
ただ、残念で仕方が無い。
こんなこと書くのは嫌だが、ラスト10分。国の違いやこれまでの生き方の違いあれど、幸せを求める人の姿。それはオリンピックの精神にも繋がる、うまいオチの付け方をしており、そこに感動しそうなのに、その大事なシーンで観客の私語で台無しにさせられた。
かつての知事が羞恥心の無いおばはんは死ねばいいような暴言を吐いたことを覚えているが、今日、それも何か分かる気がする気持ちになった。
ひどい話である。それも、終演後、作・演の方と思われる方と親しげに話されていたので、常連の客か関係者なのだろう。
あの、一番じっくりセリフの一言一言をかみ締めたいシーンで、そんな態度を取るのは、本当のファンと言えるのだろうか。どうにも理解できず睨み付けてしまったが、その真意を問い正したい気持ちである。それとも、こんなことを書くのがファンでは無いのだろうか。
誰かはもちろん知らないが、あまりにも腹が立つ。私がE列15番に座り、右斜め後方を睨んだことだけを記しておく。
気分が悪いと同時に、悲しくて仕方がない。
劇団名はどういう意味なのか。観に来る客のことを示しているのなら、非常に的を得ている。私の右前方の客は開演後も携帯を何度も開き、何かしているような方だったし。
以下、ネタバレがあるが、あまり気にする気になれないので、白字にはしない。
ただ、非常によく練られた作品ではあると思う。
様々なエンターテイメントを面白く魅せながらも、今の現実の問題点を鋭く厳しく言及している話だと思う。
歌のお姉さんを目指すものの、試験についてきただけのバンド仲間の友達の方が採用されてしまい、仕方なく警察の楽隊に入るも、過度に緊張する性格が災いして、毎回、吐き散らしたりするので、やむなく退部となる。
そんな、自分のやりたいことがあまりうまくいかない人生を歩む女性警官に、大きな任務が課せられる。
2020年の東京オリンピックにおいて、コーラスを披露すると共に、警官としても会場警備に当たる特殊部隊を作る極秘プロジェクト、称してポリスアカデミー東京の責任者に任命されたのだ。
極秘なので、応募者には単なるコーラスをする仕事としか知らされていない。
だからなのか、集まって来た人たちは、一風変わった人ばかり。
一応、国際的なコミュニケーション能力が必要なので通訳として採用された男。でも、本当にしっかり英語が出来るのかはかなり怪しく、しかもずいぶんと気弱なチキン野郎だ。
女性警官の弟。ちょっとマザコン気味のしっかりしない男。その彼女。ベタベタにいちゃつき、本当にやる気があるのかはよく分からないが、前に出る性格みたいで、すぐに仕切ろうとする。
占いにはまっており、自分の生き方を運勢に委ねてしまっているような女性。
国際イベントなので、外国人も採用する計画になっている。
まあまあ、普通の人が応募していたのだが、なぜか直前になってみんな辞めてしまったらしい。その代わりに、六本木署に拘留中のいわゆる事件を起こした不良外人たちが、このプロジェクトに参加する。
偽造テレホンカード販売、偽ブランド品の転売、海賊版DVD販売、女への詐欺行為・・・と、金を稼ぐために犯罪に手を染めた連中だ。
部隊の育成は、署長を総責任者において、直属の部下である厳しい女性が警察官としての訓練を、女性警官は、同僚の気弱なミーハー男と共にコーラス指導を行う。
と言っても、これだけの問題児たちが集まっており、そうそううまくはいかない。
女性警官は、友達と飲みながら悩みを相談する。
その友達、自分を差し押さえて歌のお姉さんになった人。正確には元・歌のお姉さんである。
事務所の社長が悪いことをして、処罰を受けて、自分も一緒に首になってしまったらしい。今の歌のお姉さんは、彼女よりも歌も踊りも、子供からの親しまれやすさも何もかもひっくるめて下のレベルの子がやっている。それは都知事の娘だから。
そんな元・歌のお姉さんもポリスアカデミーの生徒になる。
一方、東京で現場の肉体労働をする男。
ブラジル人の妻と仲睦まじく、信頼できる子分のような後輩2人と共に、一生懸命働いてきた。
でも、不況の波は厳しく、仕事もずいぶんと減った。そして、ついには首にされてしまう。
頑張ってきたのに、自分たちのような下層の者たちはあっさり首を切られる。都知事が悪い。
ぶつけようの無い怒りに任せて、自暴自棄の生活を過ごす。
後輩の一人は、コンビニとかでまた頑張って働こうとするが、腐ってしまっている二人を見捨てることも出来ない。日本人は義理と人情に厚いから。
次第に3人は金に困り、犯罪に手を染めるようになる。
それは、妻の妊娠が発覚して、さらに増長していく。
不良外人と言っても、各々、それなりに事情がある。
もちろん、だからと言って悪いことをしていいわけではないが、こういったプロジェクトで各々の力を見出してあげれば、頑張って活躍を見せ始める。
日本人と国際色豊かな色々な国籍の人たちが協力して、2020年に向かってプロジェクトを遂行するようになっていく。まさにオリンピックにふさわしい状況だ。
女性警官も、いつしかリーダーシップを発揮するようになり、プロジェクトは着々と成功に向かって進み始める。
ところが、これを快く思わない人がいる。
署長だ。
そもそも、こんな奇抜なプロジェクト。忘年会の席での悪ノリで始めてしまい、後戻りできなくなったといったのが正直なところらしい。
だから、こんなあまり頼れない日本人に、不良外人を集め、何かあっても尻尾切り出来るような女性警官を責任者にしていたのだ。
これを知り、横暴な権力に対抗しようと頑張る者、やっぱり自分たちはダメなんだと自暴自棄になり、ここを去ろうとする者、今の生活を守るために長い物に巻かれようとする者が出てきて、互いに不信感を抱き始める。
戦うべきは、本来は署長であろうに、一緒に信頼を深めていき頑張ってきた仲間たちの間でいつの間にか闘争が始まってしまう。よくある権力者の常套手段にあっさりと引っかかってしまったような感じだろうか。
そんな中、ポリスアカデミーに一報が入る。
何者かによって、歌のお姉さんが誘拐されたのだとか。
現場を首になって自暴自棄になっていた3人組の仕業である。ついに行き着くとこまで行ってしまったみたいだ。
ポリスアカデミーの面々は、この事件を利用できないかと考える。
警察本部より先に事件を解決すれば、自分たちが認められるのではないかと。
誘拐されたのは、歌のお姉さん。都知事の娘だからだろう。ただ、なぜか元・歌のお姉さんも一緒に間違って誘拐されているらしい。ポリスアカデミーの生徒が誘拐される、つまりは警官候補が誘拐されていることはマイナスだが、先に解決すれば、それも潜入捜査だったとか言える。
実際に、元・歌のお姉さんは誘拐されながらも、頭を働かせ、友達の女性警官にあるメッセージを送る。
それは、犯人にヒップホップで犯行声明を出させ、その歌詞に誘拐されている場所を潜めさせるという手段。学生時代にバンドを組んでいた二人は、昔、歌詞に好きな人の名前を潜ませたりしていたので、女性警官はそれにすぐに気付く。
ポリスアカデミーの面々は、警察本部より先に現場に突入する。
そして、・・・
誘拐をした3人組。彼らは頑張っていながらも、不況の煽りをくった人たち。
不幸だ。生活が出来ない苦しさから、こんなことをしでかしてしまった。
でも、突入するポリスアカデミーの外国人たちも、好きで犯罪を犯したわけではない。
同じように、いやもっと、過酷な環境で日本にやって来て、騙し騙されをしながら必死に生きている。彼らにとっては、まだ日本なんか恵まれた方だという意識が強い。
女性警官は歌のお姉さんの夢は叶わなく、今だって色々なことがうまくいかない。
元・歌のお姉さんも不条理にその地位を失った。
今の歌のお姉さんも、都知事の娘だということでパッシングされ、様々な誹謗中傷の中で立派な歌のお姉さんになりたいと思っている。
みんな、各々が頑張っているのに、なかなか思うようにはいかずに、苦しみながらも、何とかより良くなることを願い、それなりに生きている。
そんなことが、分かり合えるような状況になっていく。
そして、それはどんな国であろうと、どんな人であろうと、共に幸せを目指して頑張ろうというオリンピックの精神に通じていく。
一見すると、華やかな東京に、日本に潜む闇を鋭く描きながらも、より良くありたいと願うような話のように感じる。
努力が必ずしも報われるような社会ではない。それでも、日本という国は、それを実現することが出来る可能性に溢れた国でもある。
そんな誇りを、オリンピックという形で、かつての高度成長期で希望に溢れていた万博のような姿を再現できるのならば、国際的にも価値あることになると思うのだが。
日本に課せられた期待を真摯に見詰め、そこから世界の想い合いに通じることが出来ればいいなあと思わすような話だった。
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