リターン☆プラネット on stage【baghdad cafe'】140418
2014年04月18日 インディペンデントシアター2nd (120分)
バグ、凄いなあ。
これまでも、何作品も観てきているが、それと比べてしまうと、何か遠く彼方に行ってしまった感じで、これからどうしようかなって思う。
追いかけていくか、また戻って来るのを待つか。ファンとしてこれからどうしよう。
面白いからそのままのめり込んで観ていたが、どうしちゃったんだバグよといった感覚は観終えた今でも尽きない。
ただ、よくよく考えてみると、こんな交錯した世界を描く作品は、けっこうこれまでもベースにあったのかな。介護なんて社会問題をさりげなく盛り込んでいるのも、この劇団らしいと言えば、そんな気もする。そして、仲間と共に創り出す新しき世界なんてことも、本当は違和感なんてないはずだ。
今回はむしろ、過剰なまでのエンタメ要素に驚いているのだろうか。
2時間たっぷり、各役者さんの見せ場もしっかり設けて、エンタメ性をしっかり魅せた上で、演劇らしい巧妙な交錯した世界から、光あるこれからの世界を導き出す。
見事な作品だ。
びっくりした。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>
映画撮影所、プラネットスタジオ。
名前こそ名監督のあれだが、まだ若いのか、俳優さんに色々と気を使いながら、自分の考えを伝えるのに四苦八苦している模様の監督の下、時代劇を撮影中。
主役の女性は、今回が初めての主役でチャンスを掴もうとかなりの気負いが見られる。どこの田舎から出てきたのか、ひどい訛りに、固い動きに言い回しと、不安が尽きない。
セリフをすぐに忘れてしまうベテラン女優、段取りがかなりあやしいベテラン男優。みんなを引っ張っていかないといけない立場なはずだが、もう二人で昔を懐かしみながらの思い出モードに入ってしまっている。
主役の女性に想いを寄せる売れない俳優。オーラが無いのか、人を押しのけて前に出るだけの強引さが無いのか。真面目でいい男なのだろうが、存在感が無い、俳優としては致命傷を持つ。
可愛い容姿に仕草、喋り方とは裏腹に、人を完全にやり込めるきつい毒を平気で吐く子役の女の子。満面の笑みは全部計算だ。それもそのはず、もう29才だから、それぐらいの計算はお手の物なのだろう。
腐女子の先輩後輩コンビが趣味の入った癖が出てしまうようだがメイクを担当。カメラマンはちょっとロリが入っている。殺陣指導は凛としたたたずまいの美しき女性。
ヤンキー顔負けの言動の女性、チャラチャラした男。どちらもお調子良く、現場を飄々と動き回っている。
謎の掃除婦。何者なのかは分からない。ただ、どうも様々な分野の能力に長けているみたいだ。撮影所ではさした役割は無いみたいだが、作品として重要なストーリーテラーである。
それなりに忙しいのか、バイトの男性も雇ったみたい。演劇をやっているらしく、京都での公演を抜け出してかけ持ちで頑張る。その成果は側転に現れる。
そんな一風変わった人が集まる撮影現場。
和気あいあいと楽しいのだが、こんなことで大丈夫なのかと主役の女性は焦りからイライラがつのる。
とにかく、この作品で成功しないといけないのだ。
母手一つで育ててくれた母親に勘当を言い渡され、頼りない妹を故郷の国、いや星において、女優を目指して、この国、いや地球にやって来た。この作品を見せて、見返してやりたい。そして、勘当を解消して、もう一度、また一緒に・・・
そんな中、どこかの国のわがまま王女様のようないでたちの撮影所のオーナーの娘が、何か頭は切れそうだが、悪巧みをしている空気をぷんぷんと醸す秘書を連れてやって来る。
時代劇をこよなく愛したオーナーだったが、時代の流れには逆らえないのだろう。オーナーの娘は、この撮影所を潰して、スイーツ専門の施設を建てると言う。
みんな困惑するが、仕方なしとあきらめムード。ただ、主役の女性だけは、人生がかかっているので、簡単に引き下がるわけにはいかない。何とか1か月の猶予をもらい、あきらめているみんなを必死に説得する。
その熱意に打たれたのか、撮影所には活気が戻る。
最後に最高の映画を創ろう。そして、母親に観てもらい、自分のことを見直してもらう。そして、あわよくば、撮影所が継続なんてことになったりして。と、妄想を膨らませてほくそ笑む女性。
でも、世の中、そんなうまいことはいかない。
妹から電話がかかってきて、母が大変だという知らせを受ける。
大事な時だが、仕方が無い。必ず戻るからとみんなと約束をして、女性は実家のある国へ、いやはるかかなたにあるたもつ星というところに戻る。
道のりは険しい。掃除婦の見事なドライビングテクニックでNASAまで向かい、そこから宇宙列車に乗る。無理をし過ぎて、掃除婦は警察に捕まる。自分のために、身を犠牲にして送り出してくれた。その気持ちは、撮影所のみんなも同じ。必ず戻って、みんなとまた頑張らないといけない。
しかし、故郷の星で女性を待ち受けていたことは、母の認知症、妹の引きこもり、たもつ星の悪政とあまりのも悲惨な状況であった・・・
だいたい、ここまでで40分ぐらいでしょうか。
冒頭で撮影中の時代劇映画を模した役どころでキャストパレードなんかがあって、華やかにばっちりとみんなきめていたのですが、ここでまたやり直しです。
今度はすぐに忘れてしまう母親の介護、引きこもりの上に宇宙の難病を患ってしまう妹の面倒を見ながら、生活のためにバイトに精を出すという現実的な世界の中、星の悪政を強いる悪い人たちをやっつけるために女性が戦うという、新しい設定の下、話が再スタートします。
宇宙編という位置づけみたい。
キャストパレードも、もう一度、新しい世界設定として行われます。
ただ、もちろん、演劇らしく、その新しい世界は、時代劇映画の世界と交錯して構成されており、その登場人物も見事に相関させているという巧妙な作りになっています。
ここから、100分ぐらいまでは、かなりはちゃめちゃで、めまぐるしく訳の分からない展開が繰り広げられます。
宇宙だから、何があってもいい、何をしてもいいと割り切ったかのように。
本当は、ゲネを撮影したDVDが撮って出しで終演後に販売されると聞いていたので、この飛ばしまくりの話の展開は、また家でゆっくり確認しようなんて思って流して観ていたのですが、間に合わなかったらしく、購入できませんでした。と言うことで、記憶からはほとんど飛んでしまい、頭に残っているのはわずかになってしまいました。
腐女子コンビのいかがわしいベルばら、凛とした美しき女性の天然の入ったちょっとウザさを滲ます姿、調子のいい男と女のこれでもかというモブ、鉄板の悲劇的な子役の姿を憎たらしく演じる妙齢の女性、本当に悪い女王となった悪役の女性、品の悪いいやらしさを滲ます側近、ここでも子供好きないかつい姿の男、飄々とボケた姿を醸す母親、黙って何も語らず存在感を見せる父親、ここでも重要なのかどうでもいい人なのか分からないどの星にもいるらしい掃除婦の女性、時代劇映画の監督のように我慢の毎日でついに感情が抑えきれなくなってしまったかのような妹、そして、こちらの世界では登場せず、未だ地球で存在感無く、想いを寄せる女性を待っているらしい悲しき売れない男。
といったところでしょうか。
ラストは、この交錯を収束させるという演劇の鉄板らしき展開へと持っていきます。
ここまでもそうですが、基本的に巧妙な作りになっているのですが、それは全部隠すことなく、そうしていることを舞台上でメタ的に暴露してしまっています。
母の介護という主人公の女性にとっては苦しい世界。それを妄想のような世界として昇華させ、最後にはその苦しみを受け止め、自分の中で母との葛藤に決着を付けます。そして、自らはまた元のみんなが待つ世界へ戻る。そこには、依然変わらぬ厳しい現実が待ち受けているのですが、映画にこだわらず、新たな表現の世界でまた、みんなと共に頑張ることが出来る世界が創り出されていたみたいです。
それが、作品名そのまま、星から戻り、Screenならぬ、Stageでの世界がこれから繰り広げられる、この作品自体がそこに通じているようなラストを迎えているようです。
構成含め、役者さんのエンタメ力などなど、あらゆる上手さに感銘を受ける作品でした。
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