tango@bye-bye【劇団うんこなまず】140323
2014年03月23日 CafeSlowOsaka (70分)
あれかなあ。
昔、ちょこっと読んだ、僕が世界を旅する理由。退屈なのは世界か、自分かみたいな話。
あいかわらず、よくは分からない。
笑いの感性が恐らく若者向きで私には合わないのだろう。よくTwitterで拝見するような笑えたみたいな感想には全くといっていいくらいに同調できない自分がいる。笑いという点では、ここは面白いと思ったことがないくらいだ。
それでも、観に行くのは、そんな笑いを求めるのではなく、毎回、何か心には残る作品だからだ。
今回は特に、自分が既に経過してしまった人生の時のような感覚を得て、悲しい想いが残る。
葛藤の中でも、奮い立ちたい気持ちを率直に伝えようともがきながらも楽しんでいるいい作品だと思う。
宮本という男。
どこか達観して周囲を俯瞰しているような感じだが、そうしていると不安なのか焦っているような感もある。ヤクルトとココアシガレットをヤクとシガーと言いながらたしなむ気取ったところをみせる。孤独や退屈を楽しむ素振りを見せながらも、内側ではそんな自分に疑問や不安を抱えているような感じだろうか。こちらを見てとばかりに、ハム太郎、ドビー、もののけ姫、プーさんとかに急変する。揺らいでいる雰囲気に溢れている。病院にでも行けば、間違いなくしばらく休んだ方がいいと、本当にヤクを渡されるであろう不安定さを醸す。まあ、これは以下の登場人物においても同様であるが。
スピリチュアルにはまる男。
狂気的な雰囲気を醸す。元気かと人に尋ねては、あの時期じゃないのかと問い詰める。元気かは自分への問いでもあるのだろうか。何か元気じゃなくなるような時を自分自身、迎えているのかもしれない。だから、その答えを人にゆだねてみようとしているような感じか。自問自答みたいなものか。宮本の一部分を強調した存在のような感じも匂わす。
家出少女。
実家には家を出る時に連絡をする。逃げ場を残して彷徨う気取った旅人みたいな感じだろうか。宮本とどこか同調しているようなところがあるが、彼女の方が肝が据わっているような感じがする。本当の言葉を聞きたいみたいだ。どこか遠くへ行きたい、家を捨てて孤独でいたいなんてことから家出しているようだが、それは嘘ではないが、本当の理由でも無いのだろう。自分の中にある本当の言葉を求めている。それは、人が語る本当の言葉から引き出されると思っているのだろうか。
リンゴ売りの男。
嘘をつく。リンゴなんか持ってもいない。持っているのはアイフォンだ。嘘を分かって意識してか、潜在的にか、人と合わせることでそれを隠し続けようとオドオドとしどろもどろな感じになっている。真実を知るのが不安な感じ。でも、その真実もおぼろげながら、本当は見えている。それを口に出して、現実化してしまうのを恐れているのだろうか。漂う卑屈な雰囲気は宮本の弱さを象徴しているように見える。
鉄砲玉で我慢ならない男。
発射されてしまって、飛び続けるしかない。どこに向かって発射されたのだろうか。未だ、着弾地点にまでたどり着いていないようだ。それに対しての怒りか、相当な形相で怒りをぶちまける。止めるか、どこかに到着させるかしろとばかりに。自分の意志とは無関係に進み続ける時間や流れる周囲の人たちへの羨みや憎しみが混じっているような感じ。
流れ星を見るカップル。
ラーメン好きで息がラーメン臭い男。特に麺類が好きでは無く、願い事も無く、お腹がずっと痛い女。
これは何だろうか。上記した人たちとこのカップルを含めた6人は、宮本が登場する前の冒頭から、舞台の両側に着席して、スタンバイしている。そして、宮本が引いて舞台を眺めるような時に、各々が立ち上がって、舞台上に現れている。そのため、この人たちは、よくある宮本の分身みたいな感じかなと思って観ていた。宮本はラーメンが好きなのかなあ。自分の好きな物を、その匂いが発せられるぐらいにまで、好きなだけ体に取り込む。それでも、安堵や満足は出来ず、今に疑問を抱きながら生きる。本当に好きな物はラーメンなのか。どうも、おしゅしみたいなことが言及されているが、そんなことにすら偽りを保っているのだろうか。女はよく分からない。そんな宮本と付き合っていた女とも思って観ていたが、やはり彼女も宮本の一部の様な感覚の方が強い。自分と好きな物が共有できるわけでも無く、何をして欲しいのかの願いも言わない。ただ、願いが叶うかもしれない流れ星は一緒に見る。吐き出せていない感情は彼女の内側に溜まり続け、お腹をチクチクと痛くさせる。
猛獣使いと猛獣が現れる。
猛獣使いは猛獣を制する。でも、それは二人の間で暗黙の了解の下に成立しているような感じ。
支配するから、支配されるからといった同意の上での主従関係みたいだ。
だから、猛獣はこの八方塞がりの空間で、特に厳しい生活を強いられていない。
でも、外に出たら、もっと自由に楽しい生活が待っているのだろうか。
外も変わらないかもしれないし、本当はここよりも自由が無い厳しい世界なのかもしれない。
猛獣の受け身で安泰な時間。孤独で退屈で。でも、自分は猛獣なんだから、能動的に外へ飛び出そうと思っても、そんな猛獣使いの言葉が頭をかすめる。
でも、外に出てみたい。自分の力も信じているから、ここを抜け出して、他の猛獣に襲われてもいいから、猛獣使いに守られるような退屈から抜け出したい。でも・・・といった葛藤が生み出す幻想だろうか。
宮本が舞台に最初に登場した時、舞台上では各々、スポーツに打ち込む人たちの姿が映し出される。
体育の時間らしい。
テンションこそ異常だが、燃える青春って感じだ。
活気溢れていた学生時代かな。
それを宮本は見ないように斜に構えている。
周囲が活気にあふれている時、自分の退屈や孤独がより強く浮き上がるみたいだ。
特に何かトラブルがあるわけでもなく、流れに乗って生きている時。
退屈な自分が見えてしまう。
きっと、そのことが嫌いではないのだろう。でも、一人の自分を楽しむのはなかなか難しい。不安はいつも漠然と付きまとう。
何となく、今の自分を否定してみたりする。何処かに違う自分がいるんじゃないか。
自分は本当はここにいるべきではないのではないか。
何処か遠くへ行けば、違う人に会って、その時間が変わるんじゃないか。
だから、人に会いたい。今の周囲の人たちを、自分自身を撃ち殺してでも、自分を変える誰かと。そして今とは違う自分と。
そんなことを思う時期か。
でも、そんなこともきっとないんだろうなと知っている自分もいる。
ここは退屈だから、外に出る。
でも、そんな外のことも昔のように無邪気では無いから、変わらないことを知ってしまった。
退屈な一人の自分を見詰めながら。
他の人も、本心を隠して、彷徨っているみたい。
普通に生きているけど、きっとそう。本当のことを言わないもの。
自分の姿を見ているようだ。
でも、本当はそれが幸せなのかもしれない。
それでも、・・・
そんな心の底にある想いを浮き上がらせたような話か。
子供の頃とは異なり、やってみなくなったからなのかなあ。
何かにつけて言い訳を考えてやらないように自分を持っていくことが多くなった気はする。その方が安全だからね。
好きなものにめがけて、ひたすら走る。
それが宮本にとってはおしゅしなのか。
何か悲しくなる話だ。
どんなに思い悩んでも、人の時はとにかく進んでしまう。元にも戻れないし、どこかに行き着いていしまう。そんな理不尽なところが悲しくなるのだろうか。
どうしたらいいとか、外に出たらどうだとか、そのまま現状維持だったらどうなるとかは全く描かれていない。
これが描かれるのは、この虚構の世界では無く、これからの現実でその人自身、宮本が描くからなのだろう。
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