« みなそこにいる【劇団いちびり一家】140322 | トップページ | 労働逃避絵巻 ㈱×忍【劇団ヨメニコ内科】140323 »

2014年3月23日 (日)

緑子の部屋【鳥公園】140323

2014年03月24日 芸術創造館 (70分)

とんでもない作品だ。
好きなだけ翻弄され、とまどい、不安にさせられる。

京都で短編を拝見して、これは本公演を観たらえらい目に合うだろうと思った上での観劇だったが、思った以上にやられた。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-4.html
ただ、何か面白いと思ってしまうことが、逆に腹が立つ。

<あらすじが書けるような作品ではありませんが、以下、記してしまったキーワードが重篤なネタバレをすると思います。東京公演が来週からあるようです。重々、ご注意願います>

躍動感溢れて描かれる走り去る女性の後方に立つ女性。彼女の視線は走る女性ではなく、こちらを見ている。
冒頭はそんな絵の説明があり、緑子という女性の話に入っていく。

緑子の通夜に呼ばれるだいぶ前に別れた元彼とそれほど仲の良くなかった女友達。
緑子の兄は、ビールのつまみに餃子を用意して、三人は語らう。

呼ばれた二人になぜか出していない年賀状。虫日記と称されるとりとめないことを綴った彼女の日記。
虫を飼うのが趣味で、彼女の飼っていた蟻に何処かで拾ってきた羽蟻を入れたら、リンチ状態で殺された。
一時、同棲していた。実家が食肉工場で、兄はその作業中に事故を起こし、切り刻まれ、バラバラになったところをツギハギされて再生されたというひどい嘘。実際は、右中指がミンチになっただけらしい。
昔から虫を飼うのが趣味で、学生時代はファーマーと蔑視されていた。
中国人らしい。同じ中国の血をひくが内緒にしていた三世の友達は、彼女をいじめていたグループの人と親しかったが、いじめの原因が彼女の行動でなく、中国人だからという理由になり始めた頃に、自分にも火の粉がかかるのではないかと恐れた。
そんな友達は、熊の肝臓を取り出すバイトをしている。何でも生きた子熊からえぐり取り、苦しさのあまり泣き叫ぶ子熊を母熊が可哀想だと殺しに来るくらいの壮絶な現場らしい。

このあたりまでは、3人の役者さんが色々な役となり、緑子の情報や人間関係を描き出す形で、頭の中で緑子の像を創り出していた。確か3幕ぐらいかな。
きっと、あと残りの30分ぐらいで緑子の像が頭の中で完成するだろう。順調だった。
ところが、徐々にその観方が崩れてくる。
4幕は緑子と別れた理由が述べられる。
5、6幕はよく分からない。緑子がどこに存在しているのか、当たり前に今、舞台にいるのかもよく分からない。
冒頭の絵で言えば、走り去る女性に注目していて、そのうち、その後ろの女性に気付き、そっちの方が興味深いとそれを見だしたら、今度はいつの間にかその女性に自分が見られていたことに気づくような感覚だろうか。

崩れ始めたら悲惨なものだ。後は、崩壊の一途で、最後の10分なんて、このまま終わられたら大変だよ、何とかしてくれとひたすら祈るような観劇に。
私なんか、こうしてブログに感想を書くんだから、どうやって書くんだよと不安な気持ちがザワザワと。
これまでは、緑子を見るという視点からの情報だったのが、いつの間にか、緑子の視点で見られていることが描き出されるような感じ。緑子の虫日記が始まったのだろうか。実際に、この辺りから、ビデオが作動し、画面に舞台の様子が映し出される。
舞台にいる人たちが、お前、誰なんだよといった状況になる。
こんな作品は、いっそのこと舞台に入り込んで、いちいち、あなたは誰なのかを確認して、その視点を明確にしてから会話を始めるように指示しないと、どんどんと進む話に翻弄されるだけになるな。

話の最後にも絵を見せられる。
絵は引いて見れば普通の街並み。でも、その街はツギハギで描かれている。そして、ポツンとたたずむ女性もツギハギ。その視線はこちらを向いている。
そんな女性を見つめる女性がやはりまたいる。
それが私だと。
舞台上の女性が、そんな答えを出して、すっぱり終わる。
すっぱりと言っても、私にはそれが緑子を意味しているのかもよく分からない。
まだ、何かを語って欲しい、見せて欲しいという気持ちが高まるが、そんなものは一切受け付けないといったごとく、暗闇になってしまう。
私は何を見ていたのだろう。緑子を見ていたはずなのだが、こうして見ればそうとも思えなくなる。
舞台上の役者さんの情報を集中して研ぎ澄ませながら、緑子を頑張って頭の中で創っていたのだ。そんな存在を否定して裏切るようにぐちゃぐちゃにされて消されてしまった。
この喪失感。
傍観者だった自分が実は、見られている存在だったことに気付いた感覚がひどく恥ずかしい。

終演後、いつもはすぐに席を立って帰るのだが、何となくまだこの場にいたくて、しばらく座っていたのだが、結構な時間、皆さん座ったままの状態。
それだけ、ポカーンとなったのだろう。こうしていても、別に何か答えをくれたりはするまい。
何か悔しいから、一番最初に帰ってやった。でも、帰りの電車では、まだ頭が混乱してどう感想を書こうか悩む。
そんな中で、書いた感想。これが限界だ。

帰りにぎょうざを食べる。正確には焼き鳥屋で飲んだのでぎょうざは無く、湯しゅうまいだったのだが。
作品中にぎょうざが出てくる。緑子はどこかにいってしまったが、これだけが、最後に出来上がることだけは間違いない。そういえば、コトリ会議という劇団のある作品でも、不条理な会話をさんざん見せつけられた後に舞台上ではカレーが出来上がり、その観劇後にカレーを食べたな。
観ても何にも頭の中に出来上がるものは無かった。せめて、観て、確かに完成されたものを自分の中に取り込みたい。そんな気持ちはきっと観た方は分かってもらえると思う。

|

« みなそこにいる【劇団いちびり一家】140322 | トップページ | 労働逃避絵巻 ㈱×忍【劇団ヨメニコ内科】140323 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 緑子の部屋【鳥公園】140323:

« みなそこにいる【劇団いちびり一家】140322 | トップページ | 労働逃避絵巻 ㈱×忍【劇団ヨメニコ内科】140323 »