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2014年3月23日 (日)

労働逃避絵巻 ㈱×忍【劇団ヨメニコ内科】140323

2014年03月23日 OVAL THEATER (70分)

正直、久しぶりの公演なのか、テンポにぎごちなさが残ります。
話自体、そして展開の仕方が面白いだけに、もう少しスムーズな流れがあれば、もっと笑えて、もっと楽しめる作品だったように思います。

それでも、役者さんの芸達者ぶりや熱量で、うまくカバーしているところがあり、楽しい時間でした。
忍者が働く特殊な会社で起こる事件を通じて、一人の社会に馴染めずモヤっとしている男が、自分の力を信じることができるようになり、その力を発揮する楽しさを知るまでを描いたような話でしょうか。
忍者を役者さんなんかに置き換えてみると、演劇の世界もこんな作品みたいになればいいのになあなんて思えるような作品でした。

100回近く転職を繰り返し、社会に馴染めない男。
弟が社長を務める会社にコネで入社。でも、働く気など全く無い。
その会社、ちょっとおかしい。
株式会社忍者。忍者を派遣する会社なのだ。
当然、忍者が社員であり、侵入や機密情報入手、場合によっては暗殺までもこなす。
社長の右腕は上忍を名乗る。かつては、下忍として活躍していたらしい。
新入社員は殺人術に優れているが、下忍としての一番の仕事である伝令が苦手らしい。
他にも天井裏や壁裏に潜んでいるみたいだ。
コネで入社した男のいい加減な態度に腹を立てて、時折、毒を塗った手裏剣が飛んでくる。

こんな会社では働けないと、男はすぐに辞めようとするが、忍術をかけられ、勤勉な社員に。
そして、時が経つこと1ヶ月。術が解けた男は、怒り心頭で今度こそ辞めると叫ぶ。
しかし、術が効いているのは、通常1週間。残りの期間は自分の意志で働いていたのだ。働く楽しさを知ってしまったのだろう。
この男、まともに働けば、けっこうなやり手みたいで、会社の業績は上向きに。

そんな中、得意先の専務が男にある相談を持ちかける。
会長を楽にして欲しい。つまりは、暗殺指令だ。
得意先だから断るわけにもいかない。
と言って、本当に殺すわけにはいかない。
影武者を使って、殺した風に見せかけて、本物の会長は何処かへ確保する。その計画が採用される。
でも、男の活躍で、他業務が忙しく忍者不足だ。
影武者は久しぶりに現場に出る上忍、殺害の実行役は男が買って出ることに。

計画実行に向けて、綿密な稽古が行われる。
久しぶりに、初めてと不安がいっぱいな二人だが、遂にその日がやって来る。
男は独りでいる会長に化けた上忍の背後に迫り、刀で一斬り。手はずどおり、すぐに袋に入れて、会社に持ち帰る。
社長と男は、とりあえず計画の成功に安堵して、袋の中の上忍にもう大丈夫だと声をかける。
でも、一向に返事がない。
そんな中、計画に遅れてしまった本物の上忍が現れ・・・

上忍は下忍に自分が遅れることを社長に伝えさせたが、滑舌が悪くて伝令下手なので伝わらなかったらしい。しかも、専務の楽にしてというのも、文字どおり、楽しませてあげて欲しいということだったみたいだ。
とんでもない勘違いが引き起こしたブラックなラスト。
で、終わらせていないのが、さすがだなと思います。創り手さんは、やはり常に観る側の上手にいます。

こうなってしまったからには、誰の過失とかではなく、会社全体で責任をとるしかありません。
でも、それに上忍は反対します。
忍者は全国で3億人いるんだとか。
色眼鏡でいつも見られる忍者。
そんな忍者が、その力を隠すことなく、忍者として働ける居場所。それがこの会社なのです。
男だって、転職を何回も繰り返し、社会不適合のレッテルを貼られたような人。そんな人でも働く楽しさを感じて、頑張れる大切な場所だったはずです。
男は全責任を自分が背負う覚悟をします。
弟である社長に、この会社をいつまでも存続させて欲しいと願い、自分は会長殺害を今の社会にむしゃくしゃしたという動機にするため、これから外で刀を振り回し、ひと暴れすると。
涙の別れです。
外へ飛び出す男。
でも、袋の中の会長は今になって動き出し・・・
時すでに遅し。外ではサイレンが鳴り響きます。

エピローグはそれから数年後。
会長も実は忍者で、自分を斬った男を見込んで出所後、忍者として育て上げたみたい。
男は忍者として正体を隠して、この会社の面接を受けに来ますが、懐かしさのあまり、忍者としては許されない自分の正体を明かす行動をしてしまい不合格に。
かつての恩とコネを主張する男に、上忍は働く楽しさだけでなく、今度は働く中での理不尽も経験しろと冷たくあしらい・・・

会社は劇団、忍者は演劇をする者のメタファーになっているのでしょうか。
どうも社会に馴染めないなあ、普通の会社でうまくやれないなあなんて思っている人が、ひょんなことから劇団にでも入って、演じる楽しさを知ったら、その潜んでいた力を発揮して活躍したり。
普通の人からすれば、作品を創り、忙しい時間の合間をぬって厳しい稽古をこなし、公演をするなんて尋常なことではありません。
こんな優れた能力を持つ素晴らしき演劇人を抱える劇団はいつまでも存続して欲しいものです。
忍者を守るこんな会社のように、演劇人を守る社会が出来上がれば、もっと楽しい世になるのにねえ・・・

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