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2014年3月25日 (火)

一千戯曲【私見感】140325

2014年03月25日 芸術創造館 (105分)

素晴らしい作品だった。
話の内容はもちろん、この劇団らしいリズミカルな言葉遊びを多用した演出。
それだけなら、これまでもそうだが、今回は表現物を創るということの覚悟を強く感じさせる。
語られる話から物語を創る。それを映像化する。その姿、風景を写真や絵で残す。その時の想いを手紙で言葉にする。そして、こういった演劇作品を創る。
そこには過去にあった事実が書き留められているだけでなく、その中に閉じ込められた人の想いが刻み込まれている。そんなことを、戦争や震災をベースに、失われた命への想いを描くことで伝えているように感じる作品だった。
それにしても、素晴らしい。
話もちょっと泣けるのだが、それよりも作品自体に深く感動した。

<以下、若干ネタバレ注意。特に整然と話を書いているわけではないので、許容範囲として白字にはしてませんので、ご注意願います。公演は明日、水曜日まで。社会人は公演時間が厳しいと思いますが、無理してでも観たらいいと思える作品です>

千羽鶴を折る女性を取材して、その戦争体験から映画を撮影しようとする男。
デジタルが当たり前の今、一度、撮影したら消すことが出来ない8mmフィルムに、その実態を焼き付けようとしている。その想いは、彼女には通じず、彼のイズムにとらわれている姿から、フィルムの中に自分も閉じ込められそうだとか言われ、別れているみたいだ。
彼女は、19歳の若さで、人間魚雷回天による特攻で英霊となった夫を持つ。
特攻が決まって最期に会った時は、そんな死ぬことが決まった素振りは見せず、戻ってくる約束をして別れた。
戦後、その死の命令を出した上官から、彼が残した手紙を受け取り、戦時中の話を聞く。
仲間と共に野球を楽しみ、戦争に疑問を抱く発言をして、他の仲間から卑怯者呼ばわりされる者とも親身に話し、将棋をさしたりもしていたみたい。
そんな卑怯者と呼ばれていた男は、父が脱走兵だったばかりに、非国民として母が蔑まれ、自分は学問をしたいけど、兵隊になり特攻に志願せざるを得なかった。特攻が決まり、母との最期の別れの際、全てを感じ取った母は自分が死ねば、息子が逃げることが出来ると自らの命を断つ。
妹がいたみたいだが、自分にはもう残された者がいない。死以外を考えられない状態での特攻だったが、機械トラブルで一人生き残る。
女性の夫の手紙は、そんな彼が戦地から必死になって持ち帰っている。

震災。散乱する遺体。原爆を落とされたあの日のようだ。
そんな被災地を取材する女性記者は、千枚の笑顔の写真を撮り、特集を組もうとしている。
その被写体となった者の中には、死が訪れた人もいる。
震災から数年経っても、その起こった現実は戦争と同じくいつまでも消えず、今でも社会に影を落とす。

コンビニで働く男は、何ということなく日々働く。
気になる女の子の願いとあれば、バイトのシフトを代わってあげたりして、LINEで繋がり合う。
付き合っているのだろうか。
言葉だけが二人の間を飛び交い、気持ちは互いに伝わり合っていないようである。

教師は歴史を教える。
君死にたまふことなかれ。戦時中に言ってはいけない言葉だが、その心を率直に表現した。
教え子の一人が学校を辞めて、夜の仕事を始める。
教師はその店に通う。
教師としては思ってはいけないことだが、彼女への愛情を抑えることが出来なくなった。
彼女に拒絶されるが、自分の想いをそのまま暴力的に伝える行動を起こす。
もう結婚できない女になった。その姿は、戦時中に数々起こった暴行による生々しい絵を想像させる。

絵を描く女とそのモデルになる男。
描かれる線一つ一つがやがて、一つの形となる。
男はいずれ旅立たなくてはいけない。
その出来上がった絵に女性への想いを重ねる。

映画を盗撮する男。
広くその表現物を世に知らしめたい。
そこにイズムがあるのか。盗撮された表現物自体にはじゃあ、それがあるのか。

・・・。覚えている限りではこんなぐらいの登場人物が出てくるんだったかな。
混乱しているところがあるので、はっきりしませんが、こんな上記した人たちが、あるキーワードで連想された瞬間にシーンが切り替わり、各々が描かれるといった感じで話は展開します。
実際に客が撮影した動画や写真も組み込んだDVDが販売されるらしいので、詳細はそちらを見ましょう。

公演時間が105分ということで、決して面白くなかった訳ではないが、前回公演が70分なのに途中で飽きてしまったことが頭に残っているので少々、不安を抱えながら観劇開始。
舞台と客席が一体化しているという珍しさも、会場に入った時は興味津々なものの、105分、新鮮な気持ちを保つのは難しいだろうと。
始まって20分ぐらい。持ち味のリズミカルな言葉遊びは、これまで以上に磨きがかかり、感心を超えて驚愕へと変わる。役者さん方の、統制された動き、整然と連ねられる言葉は、恐ろしいまでの凄さを感じる。
戦争と震災をベースに、今と昔のシーンが、韻を踏んだり、連想される言葉によって、切り替わりながら紡がれていく。
時計を見たのがこの時点。
情報量が異常なまでに多い割には、あまり時間は経っていない。このまま、パズルのピースのようにバラバラになったシーンを見せられて、残りの時間で頭の中で再構成するだけなら、前回と変わらない感想だっただろう。
再構成する能力にも私は欠けているので、似たようなピースを幾つも渡されて、何となく最後になって作品の話の実像が浮き上がるといった感じなのだが。
今回はここからが違う。
似たようなパズルのピースを渡されるのだが、それがそのたびに組み立てられ、何かが頭の中に出来上がっていくといった感じになっている。
劇中に出てくるような千羽鶴、千枚の写真、絵、映画のように、出来上がっていく過程がきちんと感じられるのだ。
点が線になり、その線が何かを形作るみたいな感覚だろうか。
それに伴い、戦争と震災により失われた命への生き残った者の心情も蓄積していく。
最後はそんな自分の中に蓄積された想いを、この作品を通じて出来上がった一つの映画のシーンを再生していくことで、その感じた記憶を心に焼き付けている。

戦争も震災も、過去の現実であるが、それは今でも続いている。
どんな理由であっても、失なわれてしまった命を生き残った者は受け止めて、自分は生きていくしかない。
一千の鶴、写真、絵やフィルムに祈りを込めて、私たちはその消えない現実を焼き付ける。
そんな表現物に触れた者は、その想いを自分の目に、心に焼き付ける。
演劇をはじめ、表現物は、過去の事実をデータとして保存しているだけのものではない。そこにあった様々な人の想い、そして、その後に続く想いの変容までをも刻み込んでいるのだろう。
この作品自体が、そのような表現物の力強さを感じさせると共に、いつまでも消えることのない想いの記憶を大切に描いたものであるように思う。

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コメント

おはようございます。
私見感主宰の緑川です。
ご来場ありがとうございました。
そして、いつも丁寧なご感想をありがとうございます。
今回は、今までにない105分という長さ、そして変形舞台ということで皆様にどう見てたいただけるのかかなり不安だったのですが、楽しんでいただけたようでほっといたしました。
私見感としてはこの公演が一区切りになり、次回公演のめどは立っていないのですが、次回公演を行う際も足をお運びいただければ幸いです!

投稿: 緑川岳良 | 2014年3月26日 (水) 07時49分

>緑川岳良さん

コメントありがとうございます。

素晴らしかったですよ(゚▽゚*)
益々、これからが楽しみになりましたので、一区切りつけてもらうのは、ちょっと残念ですなあ。
また、力をためて、いつの日か更なる魅力的な作品を引っ提げて、公演をお願いします。
楽しみにしております。

あっ、ご卒業おめでとうございます。
卒業式だったのに、公演とぶつかっちゃったんですね。

投稿: SAISEI | 2014年3月28日 (金) 10時30分

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