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2014年3月 5日 (水)

ツレがウヨになりまして。【笑の内閣】140304

2014年03月04日 KAIKA (100分)

再演。
初演の感想:
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/120528-f0e0.html
多くの再演される作品と同様、やはり、その魅力がさらに高まっていた。
改めて、上手くまとまった話だよなあと感じる。
パロった作品名から想像できる、ネトウヨを笑うだけでなく、愛するということの本質を問い詰めたような話として仕上がっているようである。
いつもながらの、個性的なキャラの魅力も初演時とはまた違ったものとなっており、より完成度が上がったといった感じだろうか。

あらすじは上記リンク先の初演の感想で記したものとほとんど変わっていないと思う。
ただ、あれから2年の間の時事ネタを巧妙にさりげなく盛り込んだりされているので、面白さはさらにアップしている。

一言でいえば、これは愛を描いている作品なのかな。
国を愛するネトウヨという一つの思想と、人を愛するという恋愛が交錯して話は展開しており、その中で愛するという言葉の重みが浮き上がってくるような感じがする。
いい点も、悪い点も含めて相手を認められる。自然にそうなる。これが恋愛。
思想だと、その思想を正当化するために、いい点はいくらでも愛すると公言できるが、悪い点は何とかして消し去らないといけない。それはなかなか難しいから、悪い点は嘘だということにしなくてはいけなかったり、敵を作り出し、その敵は愛せないから、自分の傾倒するものを愛するという歪んだ形を取らざるを得なくなる。非常に不自然だ。

この回のアフタートークゲストは、ネトウヨを研究されたりしている大阪大学大学院准教授の辻大介先生。
その中で承認欲という言葉が出てくる。
自分を愛せない、他人に愛してもらえないから、素晴らしき祖国を愛するということで、その欲を満たす。
国は何も言わないから、なおのこと都合がいいのかもしれない。一方向の愛情を勝手に供与するだけで、疑似的な愛が成立しているかのようである。
自分が相手を愛し、相手からも愛を受ける両方向の愛のやり取りが必要な恋愛とは異にしているように思う。
この作品で、ネトウヨに傾倒する男を愛する女性は、その男を愛するが、その男の思想を共に愛することはしていない。でも、否定もしていない。
傾倒する男は、クズのような先輩の言葉に従って、右翼的な思想を持つ。でも、決してその先輩を愛するような感情は一切持っていなかっただろう。愛したのは、その思想という実態の無いものであったような気がする。
人を愛した女性と、実態の無いものを愛した男。
同じ愛したという言葉でも、その違いは大きく、数々の振りかかる問題があっても最後まで残った女性の男への愛と、ちょっとしたことですぐに消えそうになる男の思想への愛が、愛するということの重みを伝えているように感じる。
娘を愛する父親の無条件な愛、業務として国を守るという責任に近い愛、自然に沸き上がった好意を真摯に育んでいく愛、厳しく律するかのごとく自分自身に与える愛、セックスだけに執着する愛、ゲームのように遊びを楽しむ愛・・・
その場、その時だけでなく、永遠に消えることの無い芯のある愛はどれだったのか。
話の最後にその答えが頭を巡らされたような気がする。

登場人物に、全員、見せ場があり、それだけキャラが立っている。
その割には、ドタバタした印象は全く無く、上手くまとまって、そのキャラを楽しみながら、スムーズな話の流れを楽しめる。
再演で、札幌・東京と公演をされており、より作品を磨き上げられた成果だろう。
初演の感想で目を惹いたと記した由良真介さん、髭だるマンさん、高瀬川すてらさん<焼酎ステラさん>(劇団ZTON)は、今回も最高の出来である。
寡黙に飄々と笑いを確実にとっていく由良さんの姿はまさに職人だろう。最後には軽業師みたいな技も披露され、本当に職人風である。
これ以上ないクズっぷりをここまで醸す役者さんは、恐らくいないだろうという怪物、髭だるマンさん。
ちなみに、今回、初めてご挨拶させていただいた。2年越しであこがれの役者さんと会話できたことはとても嬉しい。最高に最低でしたねという感想を伝える。大阪ゲキバカとかにもご出演される予定らしい。ご活躍が今から楽しみだ。
どう考えてもあれだけやればウザい感じになりそうなのに、愛嬌ある楽しい空気を作り出す高瀬川さん。 絶妙の間合いで入れ込むツッコミやキレのある動きは最高。所属される劇団で、その魅力をもっと感じたいところなのだが、なかなか縁がないのが申し訳ない。

主演の女性は、鈴木ちひろさん。今回で地元に戻られるのだとか。多分、ヅッコケ三人組の稽古場有料化反対闘争でビッチとして初めて拝見し、その後、劇団オレと松本の骨と化粧と髪飾りでじっくり味のある温もりを感じさせる女優さんで魅力的だなあと思っていたが。今回は芯も感じさせながら、同時に幼く揺れる弱さも感じる魅了させる演技。真摯な想いが込められたたたずまいやセリフの言い回しが非常にいい。あと、失礼だけど、歌が凄く上手くなったような気がする。それと何やら、擬似デートが出来るというDVDが300円で販売されていたが、過去公演DVDとパンフレットだけで我慢した。本当は欲しかったけど、あれは恥ずかしくて、おじさんは買えない。AVを買うよりも、よっぽど恥ずかしい。
その父親で警察の伊藤純也さん(劇団オレと松本)。実年齢設定にだいぶ無理があるのに、このキャストは策略だろうか。父親の威厳さよりも、娘を想う気持ちが絶対という幼稚さの方が前面に出たキャラになっている。顔芸は絶妙。
ネトウヨに傾倒する男、清水航平さん。閉じこもるとか、葛藤とか、悩み苦しんで追い込まれる演技が上手いんだろうな。目力があって、迫力を感じる。
大学の先生の山下みさとさん。自分にも他人にも厳しいきついキャラなのだが、多くは描かれていないのに、その人格形成に至る過去が匂ったような奥深い空気を醸す。近寄りがたい凛とした色気のある方である。
韓流を利用して儲けるスーパーの店長、高間響さん。作・演であり、また大きな代表作を創り上げられた。だいぶ、お疲れだろうか。前説やアフタートークで次から次へと言葉を繋ぐ滑らかな話術を魅せるのに対し、舞台では少し元気が無いように見えたが。まあ、それでもお得意のネタも含め、魅せるところは魅せていたが。

各方面に色々と衝撃を与えた作品だっただろう。
パロディー、コミカルな中に、客観的に今の社会の一部を見詰めたこの劇団ならではの名作だと感じる。

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