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2014年3月 2日 (日)

アッシュ メロディー ~遺灰の歌~【満月動物園】140301

2014年03月01日 シアトリカル應典院 (130分)

失った者への悲しい心を抱える二人のウタイテを通じて、戦争への怒りを厳粛に感じさせるような話。
五感を刺激する独特の世界観の中で、悲しき心が、いつの日か消えて欲しいという祈りに溢れている作品。
各々の立場で、悲しみを希望に変えようと、前を見詰める強き人間の姿が浮き上がります。

北方の戦争で活躍する偉大な将軍の娘、パヤオ。
そんな父の背中を追いかけるように、戦地を一緒に旅し、そこで傷ついた兵士たちを歌で癒し続けている。
その歌声は、かつて世界の7か国の王に気に入られて、色とりどりの宝石を手に入れたという伝説のウタウタイのようだと言われている。
ある日、いなくなってしまった父を探すために、何かが詰まった大きなカバンを手にして、パヤオはある町にたどり着く。

町から町へと渡り歩くリンメ。
本当は戦争に行って、もっと驚きのある日々を過ごしたいと願う弟のギターの音色に合わせ、夜の広場で楽しそうに歌い踊る。
彼女の左手には骨のようなものが握られている。

迫り来る戦争で、男たちが戦地に続々と向かってしまっているような町。
お菓子を売る女性は、電車を眺めては、主人が魂となってでもいいから、この町に帰ってくればいいのにと日々、祈る。
パヤオとリンメはそんな町で出会う。
二人とも、きっぷのいいクリーニング屋の奥さんのご好意で、屋根裏の部屋に住まわせてもらっている。
クリーニング屋で働く女性は、日々、仕事を真面目にこなす。彼女は美しい宝石を隠し持っている。

クリーニング屋によく仕事を依頼する床屋の見習いは、大聖堂での歌い手になりたいと試験を受け続ける。
文字が読めず、書けない郵便配達人は、クリーニング屋の女性から教えてもらって、自分の想いを人に伝える術を学ぼうとする。

そこで時を止めた情報、探しに来なくては見つからない情報。そんな情報の塊である本を見守る図書館司書。
心の中で固まってしまった想いを吐き出させるかのように、そんな人を選択しては葉っぱを売りつけようと幻惑する女性。

話はパヤオとリンメをはじめ、この町の様々な人々を描いたエピソードを紡いでいく中で、二人が抱えている事実、そして、人々が抱える戦争への悲しみを浮き上がらせているような感じです。
人の想いと言葉。言葉が詰まった本。歴史の記録。もう一度、その言葉に触れるために探し出す。新しい言葉は継ぎ足されない過去の遺物。
心の奥に固めた想い。宝石。骨。
様々なキーワードが、各エピソードの中で言葉を変えて出てくるような感覚で、それが、その中に潜む共通の想いを感じさせているようです。
悲しみ、憎しみの心を生み出す戦争。そんな心に刻まれた哀しみが、生きている者たちから、いつの日か溶けて、消えますようにといった祈りが込められている話なのだと思います。

この劇団らしい、五感に訴えかけてくるような独特の世界観を今回も創り上げられています。
抽象的、具象的ともに流れてくる映像。
風景を浮かばせる効果音。音楽と歌。
心をほんの少し暖かくする甘いお菓子。
自分の想いを吐き出させるような葉っぱの香り。
触覚はあまり分からなかったけど、戦争で傷ついた生々しい皮膚とかがそれに当たるだろうか。
そんな五感の刺激が、二人が追い求める戦争で命を失った人たちの悲しき魂を第六感的に見せているかのような感覚も得ます。

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