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2014年3月31日 (月)

パフ【劇団しようよ】140331

2014年03月31日 人間座 (100分)

作風をかなり虚構のファンタジーワールドにしているが、直面する厳しい現実を残酷に鋭く描く作品だった。
そこには、お別れ、命とのお別れを現実的に描いている。
でも、そのお別れの悲しい涙の前には、出会えた楽しい笑顔があったことを決して忘れたくない、忘れないで欲しい、そしてそのことを胸に抱いて頑張って生きて欲しいという強い祈りを感じさせられる話のように感じる。

ある島の港町。島の真ん中には、大昔に隆起して出来た火山がそびえる。
少年はそんな町のアパートで暮らしている。
ちょっと運動は苦手だが、みんなとサッカーをしたり、楽しくお喋りしたりと元気に小学校に、毎日、通っている。
四人家族。口うるさいお母さん、手先が器用でコーヒー好きなお父さん。二人とも、とても優しい。
お兄さんは、毎日、船に乗って漁に出る自慢の兄だ。寡黙で、時折、厳しいことも言われたりするんだけど、とっても頼りになるいいお兄さん。
アパートの大家さんは、一階でお菓子屋さんをしている。いつも、甘いお菓子をくれるので、どうしても食べてしまう。おかげで随分と虫歯になってしまっている。
歯医者に無理やり行かされているが、そこには優しい歯医者のお姉さん、ひなこさんがいる。この人とお喋りするのが大好き。
鶏肉屋さんに、魚屋さん。蒲鉾工場の職人。
町長に、郵便屋さん、お医者さん、看護士さん。
いつも焼きそばをごちそうしてくれる海の家のマナティおばさん、海辺にいるホームレスのげんさん。
先生に、友達。
少年はこの町が大好き。人も建物も、全部ひっくるめて大好き。

そんな少年は、ある日、海辺で捨て犬と出会う。
ジャッキーと名付けて、毎日、お菓子を持って行った。
最初は、親から家では飼えないと言わていたが、ジャッキーが行方不明になって一生懸命に探す姿を見て、遂に許してくれた。
何を考えているのかよく分からないけど、ジャッキーと一緒に過ごす楽しい時間の始まり。
ただ、少し気になることがある。
ジャッキーを探しに海に行った時に、確かに聞いた鳴き声に、暗闇の中にぼんやり浮かぶ姿。黒い龍だ。この島に黒い龍がやって来ている。
マナティおばさんだって、言っている。嫌な匂いがすると。あの時と同じような匂い。たくさんの人が帰らぬ人となったもう何十年も前の話。
詳しいことは少年は分からないが、黒い龍がいることだけは信じている。本当に見たんだから。
それに、最近、島を出る人が増えた。仲良しだった同級生も、今度、引っ越してしまうらしい。何でも、当選したんだとか。先生が、それは素晴らしいことなのだと寂しそうな顔をして言っていた。
火星にでも移住するんだろうか。地球に住めなくなった人類が宇宙ロケットに乗って、新しい星へと。
ひなこさんも。そんなの嫌だ。ひなこさんがいない歯医者になんか行きたくない。
みんなとお別れなんかしたくない。ずっと、みんなと一緒にいたいんだ。ジャッキーを見たら、相変わらず何かワンワンと吠えている。何かこの悲しい想いの答えを知っているのだろうか。

少年の想いとは裏腹に、島に遂に黒い龍が現れる。
みんなと力を合わせてやっつけようとしたけど、ダメだった。
火山は噴火を始めて、島からの避難命令が出される。
我先にと船に押し寄せる人たち。
少年は先に兄の漁船に乗るように親から言われる。
でも、ジャッキーがいない。ジャッキーは連れて行けないと親に言われる。でも、これでお別れするなんて嫌だ。
そんな駄々をこねる少年にひなこさんが、必ず見つけて連れて行くと約束をしてくれたので、少年は船に乗る。
しばらくして、轟音がする。振り返って見た島の風景は全てが壊滅していた。

避難所だろうか。
ショックで学校にも行かず、引きこもって昔の島の頃を空想する少年。
兄は、日々、暮らしていくための生活費を捻出するのに精一杯みたい。
一人が怖いのか、何処かへ行こうとする兄にへばりつこうとする。
申請に行かないと、生活費をもらえない。イライラがつのる兄は、少年を殴ってしまう。
泣き叫ぶ少年に、ぶつける場所の無い悔しさや怒りからか、暴力をふるい続ける兄。でも、最後に力強く抱き締める。
学校には行け。少なくとも中学を卒業するまで。そしたら、高校、大学。楽しいから。みんなと友達になって、きっと楽しいから。
今を乗り越えれば、きっと楽しいと少年に教え込むように、自分でも信じるように、そして、祈るように。
そんな、二人の下に少年宛に一通の手紙が。
そこには・・・

人形劇風になっている。と言っても半人形劇風で、役者さんは人形を持っているが、普通に顔を出して登場する。シーンによっては、完全に出てきて普通に演じるような不確かな作風。
不思議な感覚を得る作風だ。
恥ずかしながら、全く知らなかったのだが、パフという楽曲をベースに創られた作品みたい。
ただ、この作品では、ジャッキーとパフを逆転した設定になっているようだ。
楽曲では、永遠を生きるドラゴンパフと少年ジャッキー。これが、少年パフと、人とは生の尺が異なる犬のジャッキーになっている。
お別れをして悲しい想いをするのは、人間である少年ジャッキーだ。
登場人物は、うさぎやくまなどのぬいぐるみや人形たちとして表現されている。場合によってはポテトチップスや炭酸水ペットボトルみたいなものまで用いられている。
ジャッキーだけ、犬だけど人間の姿。
ジャッキーは、出会いと別れの格言みたいなことを祖母との思い出話などを交えて言及する。誰よりも人間っぽい姿であり、この作品はもしかしたら、ジャッキーが描く空想のファンタジーワールドのような感覚も得る。人間で無い何かファンタジーワールドの住人が織りなす虚構の世界みたいだ。でも、描かれていることは、虚構どころでは無い。火山や海にいる黒い龍を、この島を、この港町を、書く必要もない、今、私たちが直面していることのメタファーとして捉えてしまえば、全てがノンフィクションと言えるくらいの残酷な現実だ。
それが今のことのようにも思えるし、今を経て未来の姿を描いているように感じられることも漠然とした不安や恐怖を煽る。
思いっきり、虚構にすることで、実際に面白くて笑えてしまうぐらいの話のシーンが幾つかあるのだが、そこに常に潜む現実は終始、意識させられ、どのような気持ちでこの話を観ればいいのかは正直、悩ましいところだった。
楽曲のパフもwikiを見た限りでは、ベトナム戦争で失われた多くの命との別れを示唆していると解釈されているらしい。
内容自体は少年と龍の、少年と犬のちょっぴり悲しいお別れだ。でも、そのお別れに、実はとても大きな問題が潜んでいる。そのあたりを、この曲を通じて描こうとした作品なのだろうか。

最後にお別れの後に、また訪れるであろう出会いをイメージさせてくれているのが救いかな。全てを消し去るような恐ろしい出来事が島に起こった。少年の好きだった島の人も建物も全部消えてしまった。
でも、そこにあった大切な記憶までは決して消えはしない。それはジャッキーをはじめ、少年の周囲にいた数々の人たちの想いなのだろう。それは、時を経ても必ず、甦り、少年の下に舞い戻るという希望の光が見えてくる。
悲しみの中で、本当にただ悲しむだけで許されるなら、まだましなのかもしれない。人は生きていかなくてはいけない。こんなことがあっても、悲しむことすら許されない場合だってある。それが兄の姿に映し出される。
勉強をしろ。高校、大学へ行くためにも、辛い今を我慢して、未来に備えろ。そんなことを兄は、少年に振り絞るように言って聞かせる。
勉強と同じように、自然災害に備えることが出来るなら、出会いや別れに備えることが出来るなら、どれだけ楽だろうか。どんなに頑張っても、いつ自分に振りかかるか分からないものには、そんな頑張りが通用しないこともある。
人が出来ることは少ない。残るのは悔いだけだ。
それでも、それでも、人は懸命に生を全うしようとする。
命の尺が人とは異なる犬であっても、永遠の生を持つ龍であっても、私たちはいつ訪れるか分からない別れではなく、出会えた喜びを胸に共に生きる大切な時を刻むのだろう。
別れの辛さ、寂しさ、悲しさ。それを、出会った喜びで昇華する。
今、別れた命に苦しむ人たちに向けた、優しくも悲しい、祈りを込めたパフの唄が心に浮かぶ話だった。

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