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2014年2月 2日 (日)

ふくすけ【MEHEM】140201

2014年02月01日 インディペンデントシアター1st

有名な作品みたいだが、あまりにもぶっ飛んでおり、少々、頭が錯乱した状態で劇場を後にする。
この救いも何も無いような破滅的な話は何を伝えようとしているのか。
ただ、奇形や障害、風俗やレズ、宗教などの差別対象物を好き放題に描いているだけなら、怒りが湧くような嫌悪感を得るはずである。嫌な気持ちにはなるが、拒絶してしまうような嫌悪感は全く感じない。
汚く、弱く、それでも生きる人間の強さ。誰もが抱えるけど、外に出せない、出さない感情を露出して描いてみたので、それに自身を投影して生きることを考えてみてといったような感じだろうか。
答えは出ないが、深く突き刺さるえげつない描写に考えさせられるところは多い。

九州のメッキ工場で働く男。吃音障害があり、昔は12人の男からかなりのいじめを受けていた。
その妻。死産したことから、躁鬱病の傾向が見られる。
そんな妻は、近所の人を見境無しに訴えるなどの奇行が顕著となり、やがて失踪してしまう。

東京では、医薬品会社の社長御曹司が奇形児を監禁していた事件が発覚。自らの会社の薬剤被害で奇形となった全国の乳児を極秘に集め、その子たちを愛していたという異常性格の持ち主だ。
奇形児は知的障害も見受けられるが病院に引き取られ、名前も付けられ、育てられることになる。
スクープの記者は一躍有名になるが、やがて落ちぶれ、風俗ライターに。

この病院の看護師は、付き合っている男への愛情からか、麻酔薬を流している。
男の奥さんは盲目である。
色々あったけど、今は幸せだと敬虔に男に尽くす妻に対して、めくらに幸せは無いとか汚い言葉をなげかけ、精神的な暴力を振るう。
男は警備員として病院に出入りしていて、奇形児が知的障害などはなく、全て計算でキャラを作っている事実を突き止め、奇形児を脅す。
やがて、看護師から別れを切り出されたため、嫌がらせのように奇形児を拉致して、盲目の妻と一緒に逃亡する。

失踪した妻を探すために、吃音の男は、手に入れた情報から風俗の町、歌舞伎町へ。
その町のデリヘルで、恐らくは自殺未遂経験があり、過去を隠して明るく生きようとしている女性と出会う。その女性の紹介で、風俗ライターを紹介してもらい、情報を集めることにする。

歌舞伎町の風俗店は、三兄弟が率いる組が、ほとんどを支配している。
三兄弟は裏ルートで不発弾などを収集しており、周囲の組連中を完全に掌握している。
そのため、失踪した妻は、今はこの組に潜り込んでいる。なりふり構わず生きる姿が、気に入られたらしい。
三兄弟の中の一人は女性で、やたら霊感が強く、色々なことがうまくいくのはこの女性のおかげらしい。レズ関係の女性の愛人がいる。
三兄弟に仕える男は、過去に爆発事故で片目が義眼。そんな三兄弟の中の女性を、ある日、レイプする。

薬中の男、盲目の妻、奇形児たちは、何処かの見世物小屋に拾われ、そこで奇形児は大活躍。名もふくすけと呼ばれるようになる。
男はふくすけ誘拐の疑いをかけられ警察に連行。しかし、ふくすけは自分の意志で病院を出たと証言し、男は釈放。
盲目の妻と再会するが、抑留中にふくすけと肉体関係を妻が持った疑いが頭から離れず、さらに妻に対して暴力的になる。
盲目の妻は精神的に一線を越えてしまったのか、神が宿ったと言い出し、気がふれる。
これを男は利用して、盲目の妻を教祖に、そしてふくすけを看板にして新興宗教を始める。

失踪した妻は、輪廻転生プレーとやらよく分からない風俗技を開発し、三兄弟率いる組の重要人物にまで成り上がる。そして、ついには都知事選に出馬するまでになる。
そんな妻の姿を目の当たりにした夫は、妻をあきらめ、九州へと戻る。
しかし、そこで12体の遺棄された乳児を発見する。
失踪した妻は、夫をいじめていた12人の男と不倫関係にあり、全ての子を宿していたらしい。

新興宗教グループと三兄弟はふくすけを巡り、対立関係を深めていく。そこに医薬品会社の御曹司も絡んでいく。
巻き添えをくらうかのように殺されるデリヘル嬢。スクープしたライターに恨みを晴らす御曹司。長きにわたる虐待の復讐を果たすふくすけ。次から次へと関係者が殺されていく中、最後に残る都知事選の開票速報を聞いている失踪した妻をふくすけは犯す。
同時にふくすけは九州の病院で生まれ、奇形だったため偽の死亡診断書を医者が書いて、御曹司のところに送った子供だったというニュースが流れる。
そして、最後まで生き残った三兄弟の長男は、全てを失ったことにやけになり、不発弾を爆発させる。

盲目の妻は意識を取り戻す。
しかし、ふくすけとの肉体関係の疑いが頭から離れない夫は、執拗に妻を問い詰める中、その答えを待っていたかのように、寝たと応える妻をついに殺める。
九州では吃音の男が、いじめに関わった12人を招待して食事会。メッキ工場で手に入る青酸カリを混入した食事を振る舞い・・・

とこんな感じの話だと思うのだが、なんせ時系列も関係性もバラバラの話がフラッシュバックのようなシーンで紡がれていくので付いていくので必死だ。
それでもいつの間にか、あのバラバラだった話が一つへと収束していく。
後半はこれでもかというくらいに人が殺されていくし、話が収束するといっても、それは恐らく最悪の形を迎えるのだろうという絶望感が漂っており、救いようの無いところがある。
それでも、目を背けずにこの人達の生き様を見届けようと思わせる力強さ、生きることへの貪欲な感覚が沸き上がる。それは、障害や数々の降りかかる運命と言ってしまえばそれでお終いのものに左右されながらも、常に選択肢に死んでしまうということが無いような話になっているところにあるような気がする。最後、多くの人が死にはするが、最後の最後まで生きることにあがいた上での決断であり、そこが、またつらく切ない想いを引き起こす。
劇中、何度も性的な描写がある。正直、単純にちょっと嬉しかったりするのだが、突拍子もないところで挟み込まれるのでどういう意味なのかと思っていたが、そんな性への欲望こそ、生きるということへの大きな欲望や意志へと繋がっているのかもしれない。

奇形、吃音、躁鬱、盲目とか外面的な障害に隠されているが、共通して心の障害があるのだろう。愛する、愛されることへの免疫力が乏しいがために招かれる悲劇なのだろうか。
ここまでひどくはないだろうが、普通に生きていても、そういう人に出会ったときに、どうすればいいのか分からないことがある。自ずと破滅的な方向に向かっているとしか思えない時がある。
そんな人を引き戻し、愛し合うことは無理なのだろうか。そんな負の連鎖は絶対に断ち切れないのか。
そこに救いを求めるような答えは最後まで浮き上がらない。

確かにこの作品のように、世の中は不平等だし、奇形や障害を持つ者に生まれてこなければよかったと思わす、思う環境にあるし、異質なものをいじめて叩くし、風俗やレズは無条件で蔑視対象になるし、宗教はビジネスで心の救いという本質的な原点からは外れているし、とにかくひどいものだ。
そんなことは無い、自分はそんなことはしないし、優しく手を差し伸べられる人だ、綺麗な世界で慎ましく正しく生きているなんて思っても、舞台で動き回っている人たちを見れば、随所随所に自分の汚い、弱い一面が映し出されているような気持ちになる。
それは身体、精神に障害を抱える者、それに関わる人たちの態度両方ともにおいて。
世の中はひどいし、人は汚いし、どうしようもない。
で、終わってしまうなら、もう世界は破滅だ。
破滅しそうでも、どんなに汚くても、世界はきっとまだ続くし、美しい日もやって来るという希望まで捨てることは無いように感じる。
それは、こういった作品を観て、自分の心の中に湧いてくる感情が、とても正論で、生を受けた最大の喜びをどうかこの人たちも共に感じて、己の生をより良く全うして欲しいという祈りの気持ちが出てくることにある。
人の不幸は笑えない。やはり嫌な気持ちになるし、どこかで変革することを、それが無理だと分かっていても、例え虚構の世界であっても強く望む。これは現実世界でも同様なことになるはずで、そんな各々の想いの積み重ねはいつか実を結ぶのではないか。

妄想の中でほんの一時だけ描かれる幸せな姿。
そうであって欲しかった、どこかで愛される自分を、愛する自分を認めてあげて幸せを掴んで欲しかった。こんな日がいつか訪れるなら、生まれてこなければよかったのにとは決して思わない。
そんな観ていて起こる私たちの感情に救いを求めるものなのかと感じる。
この作品が単なる奇形やエロ、狂気のオンパレードに偏ったものではなく、じわじわ悪い方向に進み破壊されていく人たちの様を、単純に面白くは思わず、心を痛めながら、誰かを救いたいと感情移入して観ることが出来る話であることが、人の本質を突いた面白味なのかと感じる。

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