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2014年2月24日 (月)

リーンカーネーション・ティーパーティー【浮遊許可証】140223

2014年02月23日 OVAL THEATER (90分)

少し、観方を失敗したなあ。
前半30分ぐらいまで、この作品の構造みたいなものが分からず、不思議なキャラ設定になってるし、かつ歴史的背景も少々、難しそうなので、集中を切らせてしまった。
今から思えば、それなりに観劇の経験もあるんだから、もっとすんなり作品の世界に入り込めただろうにと、自分を叱りたいのだが、そうなってしまったんだから仕方無い。
その後、何となく分かってきて最後まで楽しめたので、良かったのは良かったのだが、この混乱した30分が無ければ、恐らくはもっと感動している。もう一度、観たら泣ける自信があるというのが、今回の観劇の正直な感想だろうか。
時代の様々なものに負けず芯を貫く女性の尊さ、そして、そんな女性の意志を否定せずに見守り続けようとする男の優しさ。何よりも、そんな互いの想い合いを夫婦という形で絶対的な強い信頼をベースに描いているところが、とても素敵なのだ。
ラストもそんな二人にふさわしい光り輝く未来をイメージさせるものになっている。

<再演なので、既に初演の感想記事がネットで見られるため、以下、若干あらすじとしてネタバレがありますが、許容範囲として白字にはしていませんので、ご注意願います。公演は本日、月曜日まで>

取り寄せた絶品のお菓子を二つお皿に盛り、カップを二つ用意する和服の女性。
相手は不在みたいだが、これからお茶会をしようとしているようだ。
女性の前に、お菓子のおいしい匂いに引き寄せられるように突如現れた子ぎつね。
子ぎつねの目には若い女性として映っているが、実際は老婆なのだとか。
赤ちゃんと動物にしか、人の本当の姿は映らないということらしい。
子ぎつねは人の心というものを知りたいと言う。
女性はこれから話す思い出話が、その役に立つならと、お茶を準備し始める。
こうして、若く美しい姿をした老婆と、人間の言葉を喋る少年のような姿をした子ぎつねのお茶会が始まる。

時は第二次世界大戦の足音が強くなってきた頃。
あらゆることが戦争至上的な考えに陥り、何か見えざる手によって世間は束縛され、言いたいこともやりたいことも自由にすることが出来なくなった頃だろう。

老婆は、そんな時代に少女の国という少女雑誌に連載していた女性作家。
ただでさえ、表現が厳しく規制し始められており、しかも女が差別対象になっていた時代。
女性が描くというだけでも厳しい世間の目を向けられるのに、描いていた内容も女からキスを迫るみたいな、今では許されることでも、当時はけしからんの一言で一掃されるような、問題視される内容だったようだ。
普通なら、そんな世間の目が怖くなって筆が止まりそうだが、自由爛漫な彼女は、そんなことをおくびにも出さず、自由奔放に自分の描きたいことを好きなように描く日々を続けていたみたいだ。
そんな妻を夫は心配する。
戦争が近づく今の状況を語りながら、とにかくダメといった言葉で妻の筆を降ろさせようとする。
それでも、自分に芯がしっかり通った女性。しかも、女性らしいちょっと狡猾な一面もあり、夫の説得は時には真正面から否定され、時には上手くかわされたりと、全く効果が無い。
何とかしたい夫は偽名を使い、その雑誌の国ちゃん広場とかいうところに投稿することを思い立つ。
そんな夫の行動を知らない妻は、いつまでも自由に描き続ける。
自分のことをずっと否定する夫の心を試すかのように、その雑誌の編集者との浮気をほのめかしたり。
足も長く男前の編集者らしい。妻のことを本当は信じている男でも、嫉妬心が打ち勝ち、二人の間には亀裂が入る。
そんな中、偽名での投稿が妻の知るところとなり、激しい言い合いの中でも、信念を曲げない妻の姿に、男は自分の弱さを感じ、家を出て行く。
ただ、男の妻への想いも一貫した信念があり、さらにこれから表現規制が厳しくなる中で、妻が執筆を続けることが出来るように、伏字をすることを編集者に提案しに行ったようだ。
ついでに、浮気話をまともに信じたみたいで、一発殴って、思いっきり殴り返されたようで、大きなあざをつくって、妻の下へと戻ってくる。
二人は互いの本当の想いを理解して、これからの戦争の時代へと歩んでいくことになる。

こんなことを老婆は語り出す。
実際は、上記したことをただ淡々と連ねていくわけではない。
老婆の思い出話に対して子ぎつねも、自分の話を語り返していく。
実は、この子ぎつね、その女性作家の夫の弟子のような存在だった頃があったらしい。その時の話が語られている。もちろん、女性作家には隠れて色々と行動していたので、老婆は初めて聞く話だったりする。
女性作家視点の思い出話が表なら、子ぎつね視点の話はその時の夫の行動の真意を示す裏の部分みたいな感じか。
二人の話が混合することで、真実が浮き上がってくる。
二人が各々、本当に想い合っていたことが、このお茶会で分かることになる。

純真に自分の言葉で語ることを辞めない女性。
偽名投稿のように、自分の言葉ではなく、相手に否定を伝えようとする男。
何か汚いようだが、ただ、男の持つ自分の言葉は、本当は妻の小説の大ファンだと最後に語るように、女性への肯定だった。
認め合い、想い合っている。そんな事実が本当は確固たるものでも、言葉になるとそれが揺らぐことがあるみたいだ。
偽名投稿のような場合は、それこそ、その言葉の真意を掴むのは難しい。この作品のように隠れた善意がある時もあるだろうが、そこには悪意しかない時だって多いだろう。
女性のように自分の言葉で語っている場合でも、その言葉の持つ真意は、言葉の意味するところと真逆の場合だってあるはずだ。
言葉は難しい。
きっと子ぎつねは記号の様な鳴き声だけで交流する自分たちと人間の違いの一つとして、こんなことに興味を持ったのではないか。

女性作家は、今がどうであろうと、自分の信念を貫く。常に目は前を見ているかのようである。
男は今を冷静に分析する。そこで、折れることは折れる。
これも、何か汚いようだが、男も別の形で本当は前を見ている。伏字の提案など、今がこうだから諦めるのではなく、回避して先につなげる道を探している。
いつの日か妻の表現が世間にまた見られますように。男の真意は未来への希望、祈りに収束する。
女性作家の創る作品、男の行動には常に未来がある。
今の否定ではなく、これからを肯定することの大切さを感じさせられる。

最終的に出来上がった作品は、きっと伏字だらけのものになったはず。
今、私たちはそんな、あの頃の想いが詰まった作品をきちんと目にしているのだろうか。もしかしたら、あの頃以上に多くの言葉が消されているのかもしれない。そんな感覚は全体的に穏やかな雰囲気を醸しながらも、どこか奥深くに眠っているような厳しい警鐘のように感じられる。
でも、作家は表現することを決して辞めない。
だから、その言葉は、きっと、自分たちの手で蘇らせることが出来る。
ラストは輪廻した夫との再会で締められているのだが、こんな意味合いもリーンカーネーションに込められているのではないだろうか。

子狐は人のことを知りたくなった。
それは男のことだったのかなあ。
一族が毛皮にされたり、携帯ストラップにされたりとひどいことをずっと人間にされてきた子ぎつね。そんな汚いと全否定する人間の中に、肯定できる部分、よくは理解できなくても、人間の魅力を男の中に見出せるように思ったのではないか。
男はどうやら、戦争でその生を失ったみたいだ。
でも、愛された二人の女性のお茶会の会話の中で、死により消えた男がとても穏やかに生まれ変わる様に浮き上がってきて素敵だ。
ラストシーンの後、男が二人に呼ばれて、舞台に戻って来た時に、そんなことを感じた。

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