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2014年2月22日 (土)

オール【イッパイアンテナ】140220

2014年02月20日 芸術創造館 (110分)

ついに大阪にお目見え。
私の中では、コメディー作品としては、同じ京都の劇団、中野劇団に並ぶクオリティーの高いものを毎回、魅せてくれるとお薦め出来る劇団です。
基本的にワンシチュエーションで、元気いっぱい弾けたキャラや、間の抜けたおとぼけキャラたちが、ドタバタ、イレ違い、スレ違いをしながら、1分に1回笑えるぐらいのふんだんな笑いを盛り込んで話を展開し、最後にそれまでに散らばった伏線を一挙に回収してすっきりという脚本の巧妙さを楽しめるパターンが多いような気がします。
いつの頃からでしょうか、少なくとも前作は、こんな劇団の単純に笑えて面白いという魅力に加え、楽しい作品を観ることで、楽しく生きようというメッセージが伝わるかのような、自分たちが楽しい作品を創るポリシーみたいなものが感じられるようになり、より完成度の高い作品が出来上がっているように思っています。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/mars130516-c40a.html

今回の作品は、たった6人の男女の、一晩を描いたもの。
冬の寒い夜を各々過ごす6人。
そんな6人のやりとりを笑って観ながらも、夜の闇の中に潜むモヤモヤしたものがずっと心に引っ掛かり続けます。
話のラストは夜明けです。
その時、そのモヤモヤがどうなるか。

人それぞれでしょうが、スッキリ爽やかとはいきません。少なくとも私は。 でも、よしっ、色々あるけど、まあ、今日も頑張っていきましょうかねなんて気持ちになりました。

<以下、ネタバレがありますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで
と、思ったのですが、なぜか白字に出来ないので、そのままになっています。申し訳ありませんが、ご注意願
います。
2014.02.23追記:白字に出来るようになったので、月曜日まで白字にします

さがみずというある町が舞台。
舞台セットの仕掛けが非常に面白く、家やビルの街並みはダンボールに作られた窓に明かりを灯すことで表現しているようです。同時に、ミニチュアみたいなものも置かれており、それをなぞるように照明を当てて、頭の中に街をイメージさせているようでした。決して舞台上には具象化された街並みは無いのに、なぜか頭の中は、この町の明確な街並みが広がるという新感覚な舞台美術でした。
一昔前にマイケルジャクソンがゲリラコンサートをしたことがあるのだとか。
恐らく、昔は冴えない工場があり、そこで働く平凡な人たちが細々と暮らすような街並みだったのだろう。
わずかな雇用により残る者もいれば、大志を抱いて都会に出て行く者もいるような田舎町のイメージ。
別にそんなゲリラコンサートがきっかけになったのかは分からないが、今では高速道路も通り、雇用も安定しているようだ。
田舎から、都会へ。少なくとも落ちぶれていっている印象は無い。むしろ、これからどんどんと発展していく町なのだろう。
もちろん、発展すれば全て良しとはいえない。昔のことを思うと無くしてしまったものもあれば、手に入れたものもあるのだろう。
いいところも見えてくるだろうし、逆に悪いところが浮き上がってもくるだろう。
そんな目に見える成長の中でも、どこか成長に対する疑問や、もしかしたら衰退しているのではみたいな不安が感じられ、彷徨っているような、漠然とした不安な空気が渦巻く。

母親が入院し、死後、一人になってしまう自分を意識し始めた女性。
病院帰りにホームで電車を待っていると、男がぶつかってくる。
女性はどうやらその道の相当な腕前の持ち主のようで、咄嗟的に男の財布をすり抜くが、落としたと言ってすぐに返したので、男は何をされたか全く気付いていないようだ。
少々、距離が近いお喋り好きな男で、強引な会話に巻き込まれているうちに、男が自分と同じさがみず出身であることを知る。
あまりに馴れ馴れしいので、飲み物を買いに行かせている間に女性は姿をくらます。

男は沖縄で予備校の先生をしているらしい。
さがみずに戻ってきたのは、恐らくは町の名士で、昔、お世話になった人の息子の大学受験の家庭教師。
と言っても、受験までは1週間程度。徹底的な一夜漬けで、その場をとりあえず凌ぐといったところだ。
ところが、息子は全く勉強をする気が無い。
お偉いということは、まあ、汚いことをしているというのが世の常で、そんな父への反抗もあるのか、別に大学に行く気は無いようだ。
家庭教師の男は、とりあえずドライブに出かけて、そんな息子に色々と話しかける。
けっこうモテモテで、やりたいことは全てやってしまったから、今は生きることを停滞しているような息子。
それに反して、女運の無さを嘆く家庭教師。でも、今、意中の人がいるらしい。ただ、付き合ってもいないのに、婚約指輪を渡そうとしている。
ネットの社会は恐ろしいもので、そんな彼女のTwitterを見たら、男と一緒の写真が発覚。
男は落ち込み、一挙にテンションが落ちる。借金を抱えていることも告白しだし、不幸のどん底に落ちる。
さらに不運なことに、車がエンスト。
救助を待つ間にトイレに行った際に、1000万円のお金を拾う。
男はその金をネコババしようとするが、息子はそんな汚い金を手にする考えを許さない。
警察に届けることにするが、大金にテンパってしまっているのか、たまたま車中にあったよく分からないパーティー用の覆面を二人ともかぶって、街中を決心つかずウロウロしている。

女性。
破天荒を売りにしている、地元出身の落語家を取材。
さがみず出身の著名人特集らしいが、それほど力が入っているわけではなく、いまどき、カセットテープレコーダーで録音に、スマホで写真撮影といった感じ。
マイケルジャクソンの隠し子がいる都市伝説なんかがあるみたいで、落語家の破天荒ぶりがそうなのではなんて冗談混じりで言うと、落語家は顔色を変える。
そして、場所を変えて飲みながらインタビューに応じる。
昔は相当な悪だったらしい。酒、ばくち、女と一通りの悪は小学生で済ませたような人生を語る。
インタビューを終え、落語家は明日、アメリカに飛び立つ予定があるらしく、もう一杯ひっかけて夜明けを待つことに。女性もそれにお付き合い。
その途中、やくざに絡まれる。
そのやくざ、落語家の幼馴染。と言っても、やくざになるだけあって、昔から相当な悪だったみたいで、落語家は何でも言うことを聞く舎弟のような存在だったらしい。
と言うことは、呆れることに先ほどのインタビューで語ったことは、このやくざのことで、自分は単なる冴えない男だったということだ。
男は裸にひん剥かれ、女性と一緒に監禁。
助かりたければ、ある男を殺すか、1000万円を用意しないといけない。
どうやら、やくざはドジを踏んだらしく、大事な取引のお金を紛失したらしい。取引先の怖い同業のやくざを亡き者にするか、同じ金を用意するかという選択肢しか無い状態らしい。
どうしようもなく、閉じ込められていた二人。
女性は窓を見つけ、そこから落語家を置いて逃亡。
逃亡の途中で、おかしな覆面をかぶった男からいきなり大金を押し付けられる。
この金があれば。
女性は急いで、落語家の下に戻り、お金を置いて、二人で逃亡。

ある男の部屋に、大きな旅行カバンを持った男が訪ねてくる。
二人は幼馴染。
明日、海外に旅立つ予定らしく、最後の晩を一緒に飲みながら過ごすらしい。
昔話を夜通し、語り合いでもすればいいのに、なぜか二人は、ポポロクロイスとかいうゲームをする。
一晩かけてクリアするつもりらしい。
そんな中、旅立つ男が数年前に自動車事故で亡くなった父親は他殺だと言い出す。
その犯人を見つけ出したい。
警察官である友達は、冷静に事故の状況や証拠を考えて、そんなことは無駄だと言うが、熱意に負けて、その真相を探ることに。
父親は当時、母にも旅立つ男にも暴力をふるう人だった。いわゆるDVだ。
だから、母親が犯人である可能性も考えられる。例えば、毒を盛ったりすることは容易にできたはず。
自動車に細工をして、事故を起こすようにするという可能性は。
そんな推理をしながら、二人は当時のことを振り返る。
旅立つ男の初恋。電車の中でスリをたやすくする女性。マイケルジャクソン来日の際には、またあのゲリラコンサートが開かれるのではないかと厳戒態勢が敷かれる中、警備員の催涙弾をも抜き取る大技を見せる。
そんな昔話や、父親の死の真相を推理する話が交錯する中、ゲームだけは着々とラストに向かって進んでいく。

そんな3組の人たちの一晩がシーンが切り替えられながら、別々に描かれる。繋がっているような、無関係のような微妙な関係性を保ちながら、徐々にキーワードで3組を連結する。
上記したのは、一応、最後まで観て初めて分かるあらすじになる。
最終的に全ての人に夜明けが訪れる。
家庭教師の男には彼女から電話がかかってきて、男との写真は弟だと判明。ただ、デートの日が今日だったことを忘れていたことも発覚。息子に車を飛ばさせて彼女の下へと急行する。その途中、息子から、受験に失敗したら、沖縄の予備校へ行こうと思っていると伝えられる。
散々、嘘を語りまくった落語家は空港へ向かう。まずは、服を買わなくてはいけない。
嘘まみれの破天荒は、師匠が実験的にやってみた落語家としてのキャラ付けだったみたいだ。もちろん、マイケルジャクソンの隠し子など、とんでもない嘘だ。お別れに、インタビューのお礼として、女性は落語家に身につけていた懐中時計をプレゼント。そこに彫られらたメッセージ。どうやら、本当の都市伝説ってのもあるらしい。
旅立つ男も空港へ向かう。ゲームは無事にクリアした。やはり、ラスボスを倒した後のエンディングは感動的だったみたいだ。
父の死の真相は。犯人を本当は旅立つ男は知っている。どうやって犯行に及んだのか、殺すまでの気持ちは無かったこと、そして、自分たちのことを想っての決断だったことも。今、言えることは、恨んだりはしていないこと、ありがとうと感謝の気持ちがあることだけ。それを伝えて、友達と別れる。
そして、空港でキャビンアテンダントらしき女性とぶつかる。機内で財布が無くなっていることに気付く。男はキャビンアテンダントの下に向かい、長年の想いを告白する。

結局は、冒頭の一人になってしまうという不安からの解放だろうか。
実はマイケルジャクソンの隠し子である女性は、存在してはいけないという宿命を持つ。唯一、自分を知る母親の存在が消えるかもという現実を見詰めた時に、自分の存在が揺らぎ、生きる道がぼんやりとしてしまったように感じる。冬の長い夜の暗闇の中で感じる不安な感覚は、何となくそんな気持ちにはまる。
でも、そんな夜を幸か不幸か、おかしな人と過ごすことになった。そんな中で、一人という気持ちが薄れ、安堵のかけらを手に入れたかのようである。そして、最後に自分を想い続けている人の存在を知る。それが夜明けであり、少し見えなくなっていた道に光が差し込んだ風景を思い浮かべる。
他の登場人物も、漠然と抱える不安の中で、道を失う、もしくはしっかりした足取りで歩めない彷徨った印象を受ける。そんな人たちが、誰かと一緒に過ごしたこの一晩で、何かしらの安心、希望のような前へ進んで生きていく力を手に入れたようである。
共通して感じることは、あれっ、俺、一人じゃないな、こいつは俺のこと、想ってくれてるんだな、繋がっているんだなといったことを、みんながこの一晩で分かったのではないかということ。そして、互いに様々な立場に置かれていながらも、その中でより良く生きていこうとしていることを分かり合えたことだろうか。
描かれたのは、たった6人の一晩だけだが、この町の人たちみんなにまで広げた視線で見ることも出来るような感じである。
さらには、家庭教師が歴史を教える時の言葉から、人類誕生というはるか昔から、人は生き続け、その中で楽しみを見出しながら、自分の道を歩んできた。その結果として、今という時があるという大きな考えにまで連想させられたような気持ちになりました。
不安はたくさんあるけど、心配しないで頑張って楽しくいこう。 不安な夜は、誰かと語り合えばいいし、自分と繋がっている人のことを想えばいい。そうすれば、闇はいつの間にかしらんで、その光に自分の歩く道を見つけることが出来るなんて感じでしょうか。
笑いながら、少し気持ちが穏やかになるような、どこかノスタルジックな優しい作品でした。

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