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2014年1月26日 (日)

かひみ☆かりー【オフィス・イースト・クラン】140126

2014年01月26日 スタジオガリバー (75分)

好きだなあ、こういう作品。
純粋で想いに溢れていて。
また、役者さんが女子高生を等身大の姿で演じられているのがいい。
心に残る素晴らしい作品でした。

ある田舎の村での女子高生たちのひと夏の出来事。
今日は卒業式。
2年前のあの夏休みの思い出を語る形で話は進む。

ド田舎みたいで、何も無いところみたいだ。
電車は1時間に一本。その駅に行くにもバスで30分かかる。
情報も都会に比べれば遅く、漫画といえば、週刊少年ジャンプ以外は存在していないと思っているくらいで、そのジャンプも木曜日に販売される。
子供がほとんどいないためか、16歳の女子高生4人はいつもつるんで遊んでいる。
遊び場所は、彼女たちが空き地に作った秘密基地。

夏休みのある日、いつものように遊んでいると、見たことの無い女の子が現れる。
東京弁を喋り、お嬢様のようないでたち。聞けば、この村に父の仕事の関係で転校してきたらしく、歳も同じみたい。
友達になろう、今日から仲間だ。かひみは何か同調するものがあったらしく、その子に気軽に声を掛ける。
遅刻の常習犯で、どこか抜けている天然なところがある、かひみらしい言動だ。
言って聞かない頑固なかひみの性格を良く知る3人だが、都会にコンプレックスがあるのか、仲間に入れるのを反対する者も出てくる。
東京なんて。昨日も阪神は巨人に負けたし。
なんてことを言っていたら、その転校生、祖父は猛虎会出身らしく、すっかり打ち解けてしまう。
あだ名を決めよう。かりー。変なあだ名だが、その子は気に入った様子。
こうして、一人増えて、女子高生5人組の楽しい夏休みが始まる。

東京はジャンプは月曜日に販売されるんだあ。マーガレットって何。ジャンプ以外に漫画ってあるんだあ。
かごめかごめを知らないの。じゃあやってみよう。せっかくなので高速で。
心臓が悪いんだあ。無理したらダメ。ちゃんとしんどい時は言って。
体が昔は弱かった子もいるから、扱いには慣れてるからね。人工呼吸だって出来るよ。したことないけど。
まあ、私たちと遊んでいれば、丈夫になると思うけどね。
ちょっと東京だからって偉そうに言ってるんじゃない。傷ついたわ。この仲間の鉄則に従い、罰を与えます。
温泉を掘り当てようと毎日穴掘りに励む近所の有名な爺さんのお手伝いをすることを命じます。ちょっとかわいそう過ぎないかな。
笑える。爺さんに気に入られちゃってるんだもの。歴代の罰ゲームを記したノートに記録しておかないと。まあ、遅刻をしては迷惑をかけるかひみの記録ばっかりなんだけどね。
でも、これで本当の仲間だ。
いつしか、かりーはみんなにとって大切な友達となる。もちろん、かりーにとってもみんなは大切な仲間に。

ある夜、秘密基地にかりーが行くと、かひみがいる。
寂しい時はここに来るらしい。
母子家庭だから。お父さんは交通事故で死んじゃって。お母さんが夜も働いているから、さびしい時はここに来るんだ。
私もそう。寂しくなったからここに来た。私も父子家庭だから。お母さんは病気で。
じゃあ、片親同士ってわけだ。
でも、私は今まで友達がいなかったから、いつも一人ぼっちだった。でも、かひみはあんな友達がいて、きっと私とは違ったんじゃないかな。
そんなことない。私もここには転校してやって来た。お父さんが死んだのがショックで笑うことをすっかり忘れてしまった。最初は友達もいなくて一人ぼっち。でも、あいつらがしつこいくらいに友達になろうと声を掛けてくれて。そして、いつの間にか笑うことを思い出せた。
だから、きっとかりーもゲラゲラと笑える日がすぐにやって来ると思うよ。
幼い心に抱える悲しみや辛さを共有し合える本当の友達にかひみとかりーはなったみたいだ。

そんな楽しい日々に水を差す出来事が起こる。
村長の娘である子が、秘密基地に駆け込んでくる。
この村のリゾート開発が計画されているらしく、この秘密基地も潰されてしまうらしい。
そんなことさせない。頑固なかひみの一言に仲間たちは動き出す。
ただ、かりーだけは浮かない顔をしている。
村長の娘だけはそれに気付いている。
リゾート開発を推し進めている人がかりーの父親だということを知ってしまっているから。
かりーに、みんなと友達でいたいから、黙っていて欲しいと懇願され、村長の娘はそのことを自分の心の中だけに押し込める。

何をすればいい。
出来ることと言えば署名ぐらいか。
張り切るかひみが徹夜で作ってきた必勝はちまきを無理矢理みんなに付けさせて、いざ村の人たちのところへ。はちまきはセンスが悪いから外すのだが。
でも、みんなの必死の行動むなしく、署名は全く集まらない。
もうそれなりの大人だから、事情は分かる。この村の発展のために、開発はやむを得ないと村民たちは思っているからだ。
でも、かひみだけは諦めない。
こうなったら、立てこもり作戦だ。
そんなことをしてもと思いながらも、やはり仲間。かひみに出来る限りの協力をすることに。

肉体的にも精神的にも疲れたのだろう。
かひみは熱を出し、倒れる。
村長の娘は、そんなかひみの姿にもう黙っていられない。どうにかお父さんにお願いできないのかとかりーに言う。
かりーは全てを白状する。
裏切りだ。初めから、私たちに近づいて、影で私たちを笑っていたのだろう。返せ、はちまきを。そして、もう二度とここに来るな。
かひみの激しい責めの言葉にかりーは、その場を走り去る。
ひど過ぎないか。そんな仲間の言葉にかひみは答える。
あれがかひみのため。だって、かひみにお父さんを裏切らせることは出来ない。片親のかひみだからこそ、その親を想うかりーの気持ちが理解できたのかもしれない。

もう限界が近づく。
明日にも開発は開始され、ここは撤去されてしまうだろう。
そんな中、かりーがあの日以来、家に戻っていないという連絡が入る。
いったいどこへ行ったのか。
体が弱いかりーだから、山の中で迷っているのかもしれない。とにかく探さないと。
熱を出しているかひみを残して、みんなは捜索に向かう。
残されたかひみの下にかりーが帰ってくる。
この土地の権利書を持って。東京まで行って、父親から盗んできたらしい。仲間に戻りたい一心で。

結局、開発は中止になったみたいだ。
恐らくはいい子だったかりーが、権利書を盗んでまで開発を止めようとした真剣な行動に父親の心が動かされたのだろう。
でも、それはこの村での仕事終了も意味し、かりーは再び転校することになる。
かひみはあんなことを言った手前、お別れに行きにくいみたいだ。
でも、仲間たちの後押しでようやく重い腰をあげる。
駅までダッシュ。何とか間に合って、かりーとお別れをする。仲間の証かのようにはちまきを渡し、またここにいつか帰って来いと言って。

シーンは卒業式の日に切り替わる。
あの夏の日、お別れした後、かりーからは毎月手紙が送られてきたらしい。
みんな元気ですか。私は元気です。また、ここに戻って来たいなあ。いつも出だしは同じ文面だった。
集合場所は秘密基地。かひみはいつものごとく遅刻をして、みんなはカンカンだ。
久しぶりの秘密基地。
だって、ここに来ると思い出してしまうから。かりーのことを。あれから心臓の病気で亡くなったかりーを。
そんな連絡が入った日以来、ここには来ていない。
でも、この卒業の日、自分たちの心にかりーをずっと刻み込むために、この場所にかりーの思い出の品々を置くことにしたみたいだ。
お墓みたいにすれば、毎年、ここでみんなと、そしてかりーと会えるから。

女子高生たちの明るく楽しい夏の一時。その純粋で美しい姿が思い浮かびます。
まだ幼き心を震わせながら、友達を思いやる優しい心。
大人たちの事情に左右されながらも、精一杯、自分たちの世界で輝こうとしている。
もっともっと、かりーに伝えたかった言葉があったんじゃないかな。かりーもみんなに。
でも、人生はそんなことが出来なくなってしまうことも訪れる。
辛く悲しく、後悔することになる。
でも、その時、その時を懸命に過ごした誇り、決して消えないその人を想う心が、人を成長させるような気がします。
終演後も、舞台に楽しかったあの5人の姿が浮き上がり続ける感覚が、この作品の素晴らしさを物語っているように思います。

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