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2014年1月26日 (日)

Dear Friends【劇団6番シード】140125

2014年01月25日 芸術創造館 (110分)

もう2年も前になるんだなあ。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/6111211-303a.html
この作品が、あまりにも面白過ぎて、ずいぶんと興奮しました。東京に観に行ってもいいなあなんて思ったのを覚えています。
と言いながらも、実際はなかなか行けるものでもなく。また、観たいなあなんて思ってたら、ようやく大阪に来てくれました。

で、やっぱり最高でしたね。
ケラケラ笑えて、心温まるシチュエーションコメディー。
特に何か大きな事件が起こるわけでも無い、ボロアパートの住人の5年間。
この時間がどこかノスタルジックで、漂う優しい空気に胸を痛めながらも、元気な気持ちになれるような素敵な話でした。
公演するなら、これからも大阪に来て欲しいなあ。

メゾン・ド・ピクルスというボロアパートの話。

哲学的な思想を持つ漫画家。通称、哲学先生はこのボロアパートで日々執筆中だ。
ニーチェを始め、頭の中に数々の哲学者の言葉が刻み込まれている彼が描く漫画は常人にはまず理解できないものだ。
稚拙な絵や、意味不明の登場人物、気が狂っているかのようなストーリーも、彼ならではの作品であり、面白くないと感じるのは、その域にまだまだ私たちが達していないということなのだろう。
今は、ヒラメ筋の恋物語を構想中みたいだが、スランプ状態に陥っている。
そんな奇才の下に彼の漫画を立ち読みして衝撃を受けたという、弟子入りを志願する若い男が現れる。
1997年の夏のことだ。
男は同じアパートに住みながら、漫画家のお手伝いをして、自分も漫画家を志すようだ。
アパートの住人は変わった人ばかり。人だけでなく、漫画家の部屋の押入れには座敷わらしもいたりする。
大家の娘は、金には困らないのか、お気楽に日々過ごしている模様。今は路上で石を売っているのだとか。お喋り好きで騒がしい人だ。
妻と娘に捨てられ、職にもありつけないという不幸を一身に背負った中年男性。落ち込んだ時は哲学先生のニーチェの言葉に励まされて頑張っている。
スナック勤めのママさん。暇さえあれば、酒を飲むみたいな生活。何にでも茶々を入れて、おふざけして大笑いするのが大好きみたい。
こんなうるさい連中が漫画家の部屋を集まり場所にしているのか、騒ぎ散らす。
勝手に構想中の漫画のアイディアを出したりしている。そんな中、弟子の一言。膝小僧裏の楽園。
よく分からないが、ビビッときたらしい。
こうなるとこの奇才漫画家、仕事が早い。そして、周囲が騒ぎ立ててくれればくれるほど、集中して燃えるらしく、お祭り騒ぎのような中、筆が進んでいく。

この後は、2003年の夏まで、1年刻みでアパートの住人の姿が描かれていく。
漫画家の弟子も、漫画家は諦めてホストでなかなかの活躍をしたり、何やら怪しげな新興宗教的な会に入信したり、ガテン系でがっつり働いたりと生活が変わっていく。
それは他の人たちも同様で、大家の娘も一緒になって変な会に入信したり、中年男性は飼っていた犬の最期を看取るために一時、捨てられた家に戻ったり、スナックのママと懇意にしていた不動産屋の社長が亡くなったり・・・
まあ、人生いろいろだ。
アパートの住人も増えた。
弟子の働くホストの先輩は借金を抱えて、このアパートに逃げ込んでくる。
家出して、格安の家賃でアパートの納屋で生活を始める若い女の子。
もちろん、漫画家先生も健在。
ワンと言えばニャン。犬なのか猫なのか。ホストの現実逃避を真っ向から描いた作品。
トーフ。家出娘、プリンセス絹の生き様を描いた作品。
アルファベットに命を吹き込む。その潜むNとKの魅力を描いた作品。
毎年、数々の迷作がアパートの住人の日々の生活を基に生まれている。

2003年の夏。
弟子は就職が決まり、このアパートを出て行くことになる。
こじんまりとした送別会が、いつものように漫画家の部屋で行われる中、突然、部屋にやって来る女性。
久しぶりに姿を見せる座敷わらし。
美容師を目指していたらしく、家出娘の髪をカットしたいと申し出る。
ちょうど、同じく美容師を目指そうと考え始めている家出娘はそれを快く了承するが、座敷わらしはハサミを持つと凄い形相になって手が震えている。これでは、任せられたものじゃない。
それもそのはず、彼女にはカット失敗というトラウマがあり、美容師の夢を断念しているのだ。それも、自殺という最悪の選択をして。
もう何年も前の、この日だったらしい。
田舎から出てきて、悩みを相談したり、頼れる人がいなかったのだろう。あの時、こんなアパートに身を置いていれば。
後悔しても仕方が無い。それが人生だから。
座敷わらしは、この世の未練を断ち切り、弟子と同じく今日でこのアパートを卒業する。
最後にみんなで記念写真を撮って。

と、最後にちょっと衝撃的な話が用意されているが、基本的にはごく普通の生活が描かれている。
人生の迷いの時期。
フラフラとどこへ向かえばいいのか分からないし、どこに帰ればいいのかも分からない。
不安で、不安で仕方ないんだけど、今を何とかしながら頑張るしか出来ない。
そんな時期は、別に若い頃に限定されることなく、ありますよね。
そんな人たちにとっての大切な居場所。この温かい仲間たちと過ごした人生の中の一時は、きっと誰にとってもこれからもいつでも帰れる場所のように存在し続けるような気がします。
本当はもう少し早く、そんな仲間と出会えていればなあと思わせる座敷わらしの存在が、また、その時間の大切さを強く感じさせているようです。

作品自体は、こんな5年間をまとめた2003年の漫画家の作品となっているメタフィクションなのかな。
視点が座敷わらしのようにも思える。このアパートの5年間を見届けた人。同時に客でもあるのかもしれません。
ちょっと思い返してみたら、あなたにもそんな帰れる場所や時があるんじゃないですか。どこに進んでいいのか、人生迷ってしまった時に、そこで歩みを止めるのではなく、ちょっと振り返ってそんな自分の大切な居場所を思い出してみて。もちろん、そこにはもう戻れないけど、そんな場所や時が心に刻まれているなら、自信持って、今、進もうとしている道を歩めるんじゃないか。
そんなことを座敷わらしが身を持って、私たちに伝えたかのように感じます。
個性豊かな住人達のドタバタを笑いながら、そんな人たちの人生を、同時に自分自身の人生も愛おしく思えるような素敵な作品でした。

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