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2014年1月24日 (金)

剥製の猿 征服【遊気舎】140123

2014年01月23日 インディペンデントシアター2nd (110分)

ついに4作目になりました。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/130509-7448.html

今回の作品は、これまでとは直接関係のない番外編みたいな感じなのかな。ちょっと趣の違う作品でした。
感想とすれば、これまでの中では、笑えるという点では一番面白いように思います。
ただ、これまでのように生死のつながりや、人の想い合いを温かく、優しくは描いていないような印象を受けます。どちらかというと、そんな情念的なことに心を奪われて立ち止まっている暇があるなら、明日がある者は今日を、そして明日を前向いて進めと厳しく突き放されたような感じです。
もう10年以上経ってしまいましたが、21世紀を迎え、これからまだまだ続く未来へと生きる私たちは、その一日一日を自分にとって悔いを残すことなく生きていくことが、20世紀までの時代を築き上げた先人や生を終え、未来を無くした人たちに対する本当の大切な想いなのだと言っているような気がしました。

<以下、若干ネタバレがありますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

時代は昭和。21世紀目前の頃か。
世の中、時が動いているなんてことを感じやすかった頃かな。

割烹着を着た、いかにも昭和って感じのお母さんたちが4人。
ただ、貧富の差は、今ほど嫌な感じで拡大してはいないみたいだが、あの頃からあったみたいで、1〜4階のどこに住むかで立場が異なるみたいだ。
東京に栄転で引っ越すと思われているが、実は借金苦で家庭に大きな問題を抱えている4階のお母さん。
人に偉そうにしていると思われるのが嫌だけど、実際はそんな上昇志向が強い3階のお母さん。
天然で嘘のつけない正直者で、明るく元気な2階のお母さん。
生活は苦しく、なかなかいいことが訪れなくとも、地道に働き、まっとうな人生を送ることが幸せと考える1階のお母さん。
あの頃の世間の人を象徴しているのか。

景気が極端に悪くなり、これまでの裕福な生活が維持できない。こんな時代だからこそ、のし上がらないといけないと考える。くよくよせずに、今をお気楽に楽しく生きましょう。こんな時代でも、流されずしっかり懸命に生きなくてはいけない。・・・みたいな。
このシーンの女優さん4人の掛け合いが完璧。言動が狂いなく成されており、凄いと感心すると同時に、けっこう普通に笑う。若いのに、おばちゃんを演じているギャップであったり、妙齢を活かした自虐的な雰囲気が妙につぼにはまる。

一方、学校。
演劇部。
嫌われているのをやたら気にするリーダーの男。興奮すると体を悪くするみたいで、すぐに薬をのむ。おっさんかなんて心の中で思っていたが、後々、このツッコミが間違っていないことが分かり、うまく出来ているなあと感心する。
デリカシーに欠けたがさつな男。
平凡だが、人間関係の間をうまく取り持つような男。

食べるのが大好きな素直な女の子。
あと、本来は部長だった男がいるみたいだが、今は演劇を辞めて、あまり意味なく学校をさすらっているみたいだ。
演劇部では無いみたいだが、不良っぽいゲームセンター通いの女の子や聖子ちゃんカットの少しぶりっ子が入った女の子もいる。

生徒への責任なんて言葉とは無縁のような校長が見回りに来たりするが、ちょっと言動のおかしな男を操るような訳の分からない形で登場する。そして、演劇なんて嘘の世界は意味が無いような暴言を吐いている。
いつも一人ぼっちでいる女の子。いじめを受けていたのか、みんなからは置き去りにされてしまい、自分にはもう明日が無いことを口にしている。

前半はこんな昭和の一時代の生活の日々を描いているみたいだ。
ただ、お母さん連中が学生時代の頃に転換したり、一人ぼっちの女の子が過去の姿のまま、ずっと今に至っているような雰囲気を漂わせ、その時間軸はいつもながらの交錯した世界となり複雑である。

後半に入り、シーンが切り替わると、前半に観ていたものの正体が明らかになる。
どうも無人島に漂流してしまった人たちを描いているらしい。
その人たちが見ている夢だったみたいだ。
演劇部という虚構の世界、夢の世界、過去の思い出の世界が交錯して描かれていたのがこれまで観てきたものだったようだ。
だから、登場人物は今、この無人島にいる人たちから構成されている。
ただ、二人だけここにはいない人がいる。
一人は夢の中で校長だった人。この人は、無人島から出ようとしたのか、何なのかはよく分からないが、岬のようなところから落ちていなくなってしまったらしい。
もう一人は一人ぼっちの女の子。この子は、恐らくはこの無人島にいる人の過去の思い出なのだろうか。あまりいい理由では無く、この世を去り、その時から時間が止まっている子のようだ。

要はもう先がない、明日は来ない人たちということだろうか。
でも、この無人島に生きる人たちが逆に死んでいるのではないかと思えるような雰囲気が漂う。
落ちたのは、置き去りにされたのはこの人たちで、今でも校長や女の子は生きており、死者となった人たちがこの無人島で彷徨っているかのような印象を受ける。
実際はどうなのかはよく分からないが、繰り返される日常をただ生きていく。変化は虚構、夢、過去の中に追い求めているような姿を批判的に描いているような感じである。
最後、無人島はある者がつけた火によって燃えさかるようなシーンで終わっている。
日常からの脱出には、そんな自分を追い詰めるような燃え盛る炎が必要といった感じなのかな。
全てを償却し、新しい明日が来るように生きる。

明日が、今日と同じ日が来る人たちへの叱咤激励。同時に生きている、未来に向かって時をまだ進めていることの尊さを、それを失った者からのメッセージのような形で伝えているかのようである。

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