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2014年1月20日 (月)

田所クライシス セカンドインパクト【Artist Unit IKASUKE】140119

2014年01月19日 王寺町やわらぎ会館 4Fイベントホール (120分)

田所さんというと、かなり以前に拝見したこの作品。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/artist-unit-ika.html
この後、作品名から分かるように、田所クライシスという作品の公演があったみたいだ。
これは残念ながら観逃している。

笑って頂ければ我々幸いです公演なんて銘打っているが、本当に笑える。
それも、強烈なボケを見させられて笑うというよりかは、何というか自然に湧き出てくるような緩い感じの笑い。だから終始、楽しい。
ただ、その笑いや楽しさを消してしまうくらいに、よく出来てるなあ、凄いと感動してしまう話の作りの方が、実質の感想になってしまいそう。
役名や地名にも伏線を効かせ、ところどころ、う~んと唸る展開を楽しむ。

窃盗団7人組。通称、マウンテンズ7。
覆面をしており、互いの素性は一切分からない。
ある日、招待状が届き、集められた人たちなんだとか。
それからは、ボスの指令通りに盗みを実行し、作戦が完璧なのか、数々の成功をおさめている。
コードネームが役割と性格になっている。
例えば、アンロッキングハイアンドマイティとかだったら、解錠技術に長けた傲慢な性格の人。
キャラもその通りになっており、センスあるなあと既にこの時点で、話への興味を惹かれる。

今日も一仕事終える。
でも、リーダー的な男から、重大な発表がある。
ボスから連絡があり、解散が言い渡されたらしい。ボスの指令は絶対的で逆らうことはできない。
と言っても、ボスが誰で、どこにいるのかは誰も知らない。メールで連絡が来るだけだから。
でも、冷静に考えれば、ボスは常に自分たちの行動を把握している。恐らく、この中の誰かがボスのはず。
名乗り出ろと詮索を始める。

こんな状態をまるで何処かから見ているかのように、ボスから連絡が入る。
いらない詮索をせず、解散をしろと。
でも、そんなの嫌だと抵抗を始めようとするみんな。
脅しのように覆面を脱ぐなんて言い出す奴も出てくる。
でも、ボスは恐ろしい。そんなことしたら本当に殺されてしまう。
だから現実はあきらめるしかないなんて思っていたところ、お調子者が本当に覆面を脱いでしまう。
この人だけコードネームがウッカリキュウベエで何の意味も持たない役に立たない人だ。

連帯責任となり、全員を抹殺するというボスのお言葉。
でも、覆面を取り合い、一番多くを手にした者だけ助けると。
急変して、仲間割れを始めるみんな。
醜い争い。
でも、これはボスを見つけ出すための全員がアイコンタクトで決めた一芝居だった。
まあ、キュウベエだけは、全くそんなことにも気付かず、振り回されてしまうような奴なのだが。
さすがは何年も窃盗団をしてきた仲間だけあって、絶大な信頼関係で結ばれているようだ。
ボスが誰かが判明する。
いつも冷静にハッカーとしての役を任される女性だった。

始まって1時間。
2時間の作品だという告知があったので、この後、どうするんだろうと思っていたら、まあとんでもない展開になる。
ここまでは、よくある犯人探しのミステリー風だったのだが、ここからいきなり飛んだ設定になる。
ボスは未来人。
未来では、田所姓が滅びそうになっているらしく、こういった窃盗団を過去に結成させて、子孫繁栄のために田所姓の者たちの問題ある性格を改変させることが目的だったようだ。
窃盗団の面々は、みんな田所姓だったわけだ。互いに素性を知ってはいけない掟もなるほどである。
まあ、ここでもキュウベエは田所姓ではなく、田所さんの家に泥棒に入って、招待状を盗んだ結果らしいが。
馬鹿らしいやら、何とやら。
みんな、覆面を脱ぎ捨て、雑踏中に消えていく。
未来人の策略した更生プログラムにずっと踊らされていたというわけだ。でも、まあ何か得るものもあったみたいで、恐らくプログラムは成功したということになるのだろう。
マスク争奪戦の中で人間を捨て、パンダとして生きることを決意するおかしな人も出来上がってしまったみたいだが。
ボスの女性も、目的を果たして、未来へと戻っていく。
ただ、一人の女性だけはまだ覆面を脱いでいない。
マスカレードプレイガールというコードネームを持つだけあり、その覆面の下には男を容易に落とすだけの美貌の容姿を秘めているのに。
何か理由があるみたいだ。

時は経ち、未来は変わったみたいだ。
というか、変わり過ぎ。
田所姓ばかりになり、いつの間にか田所で無き者、人間にあらずぐらいの状態になり、遂には田所以外は抹殺するという法律まで制定される。
そこで、反乱分子が生まれたようだ。
渡辺君や田中君である。
彼らは、タイムマシンを盗み出し、過去に遡って、田所姓を抹殺しようと企む。
ボスの女性は、かつての窃盗団仲間の下へ再び向かい、救援を依頼する。
行き先は、飛鳥時代。姓が使われるようなった頃だ。
渡辺君たちは、この時代の人身御供の風習を利用して、田畑を守る役職を与えらていた田所姓の一掃を図ろうとしている。
何やら白羽を渡された人が猫神様のお仕えとなり人身御供になるんだとか。だから、白羽を田所姓の人たちにみんな配ってしまうような目論見だ。

再集結した窃盗団の面々。
タイムマシンを盗まれたことから、一緒に付いて来ることになった軽い感じのおちゃらけた女たらし。
そして、何かの役に立つかもと連れて来た少々、頭がイカれているような現代の考古学者。
複雑に絡み合った計画。裏切り、恋愛が絡んだ無茶苦茶な中、田所姓を守るための救出作戦が始まる・・・

と、細かく書くとしんどいので、後半ははしょりますが、こんな感じの話。
基本的にはコメディーを貫き、面白おかしく話を進めますが、ラストは精神的なトラウマから前へと歩みを進められなくなって立ち止まった女性が、一連のこの事件で、再び歩き出すといった演劇らしい自己脱却で話を締めています。
女性は覆面を脱がなかったマスカレードプレイガールです。
大切に想っていた男から捨てられ、その後、本当に男を愛することが出来なくなってしまったようです。男は単なるお遊びでしかない。もう信じられないから。
実際、この飛鳥時代での救出作戦中も、いつの間にかカップルになっていたパンダになった男と傲慢な女の仲は、男の裏切りでいとも簡単に崩壊するのを目の当たりにしているから。
これでは、この女性の未来はありません。ましてや子孫を残すなんてことは不可能でしょう。

この飛鳥時代の人身御供になることになっていた女性に、未来人のタイムマシンを盗まれた軽い男は恋をします。これを成就させないと、マスカレードプレイガールの存在が消えるという設定から、この二人を応援しないといけない状況に追い込まれます。
もう、自分など消えても構わないとさえ思っていたマスカレードプレイガール。おちゃらけた軽い未来人の男が、自分を捨てた男とオーバーラップするようなところもあったのかもしれません。
最初はもう諦めの気持ちで、どうでもいいといった感じになります。
でも、男は必死に真剣に飛鳥時代のこの人身御供の女性と一緒になろうと頑張ります。
そんな姿を見ているうちに、男を人をもう一度信じてみようという気持ちが芽生えたみたいで、男の応援を始めます。恋愛に関してはプレイガールと名乗るだけあって、様々なノウハウを持っています。
でも、そんなノウハウの根本はやはり、相手に自分の気持ちを精一杯伝えること。これを男に実現させ、二人は無事に結ばれます。
で、ハッピーエンドといったわけですね。

飛鳥時代の女性と未来人の男。
この二人が歴史上でどうなったのか。役名から、なるほどねえといったオチもついています。
さらには、何でマスカレードプレイガールは消えてはいけなかったのか。未来人のボスの女性にとって、とても大切な人だったことも明かされます。
バカバカしい窃盗団の面々が織りなすミステリー風のボス探しから、壮大な世界観をもったタイムトラベルファンタジー。その行き着く先は、こんな一人の女性の未来への希望を描くこじんまりと温かいものでした。
そして、終始、こんなはちゃめちゃな展開の中に、コメディーをどっしり据えたというお見事という言葉が自然に出てくるような作品でした。

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