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2014年1月24日 (金)

Lumiere Dungeon【壱劇屋】140123

2014年01月23日 門真市文化会館 ルミエールホール 大ホール (120分)

う~ん・・・
出だしでこの書き方をする時は、だいたい飛び抜けて素晴らしい作品に出会った時と、いまひとつだったので書きにくい時。
通常、この劇団ならば間違いなく、前者なのだが、今回は申し訳ないが後者が感想である。
ただ、語弊があるといけない。
これだけの魅力ある公演を実現できるのは、数多く劇団があれど、ここだからだということは間違いなく思っている。
今回は、今まで以上に趣向を凝らした新しい試みがあり、客が作品の世界により入り込めるような体感型となっている。
私の感想はともかく、是非、その魅力を味わって欲しい気持ちは大きい。
と言っても、明日の11:00がもう千秋楽なのだが。

<以下、ネタバレがあるので、公演終了まで白字にします。いまひとつといった書き方をしていますが、それはあくまで私の個人的な感想でなかなか観ることの出来ない公演であることは間違いなく、当日券で是非、飛び込んでその魅力を味わっていただきたいと願います>

光を意味する劇場、ルミエールホールの支配人は、手にしたある男の記録を読み進めている。
誰が書いたものかは分からないが、劇場で起こった悲劇的な事件を苦にして、この世を去ったある女性の闇の中、光を探し求めるように、一枚一枚のページが進んでいる。
そんな中、劇場には謎の双子の姉妹が現れる。
姉妹はルミエールホールの一つ一つの席、計1122席を各々ダンジョンであるかのように、劇場の中を迷い込んでいく。
そんな姉妹を追う劇場警備員。
やがて、そのルミエールダンジョンの旅は、支配人、劇場の芸術監督をも巻き込み、光を追い求めて、ダンジョンの奥へと進んでいく。

大きく三幕に分かれる。
一幕は、受付を済ませたら、もう始まっており、開演前まで続く。
受付後、迷路に案内され、自力で脱出しないといけない。
ダンボールで作られた、悪く言えばちゃちいものであるが、意外に迷ってちょっと焦る。
たどり着いたところで、受付時に手渡された整理券のカードの色によって、2グループに分かれるみたいだ。
私の方のグループには、双子の姉妹がやって来る。
地図も無く、身軽な格好で、このダンジョンに入ろうとしている甘さ加減に叱られたりしながらも、一緒に旅をすることに。まあ、RPGでいうパーティーだ。
よく分からない道を言われるがままに進む。
途中、何かが降ってきたり、怪しげな人を避けたりしながら、劇場ホールの2階席にたどり着く。
大きなホールだ。
何やらオペラ座の怪人ならぬ、ルミエールの怪人のような者がいたり、魔方陣が無造作に置かれていたりと、何やらおかしなところに迷い込んでしまったらしい。
いつもは、席をキープしたら、外にタバコを吸いに行くのだが、今回はそんなことは許されないみたいだ。もう、この世界に入り込んでしまったのだから。
途中、警備員のグループに遭遇。
立場的には不法侵入者になっているらしく、慌ててみんなで逃げる。
たどり着いた先は、劇場の舞台部分。ここに簡易的な席が用意されている。
もう一つのグループは警備員に案内されて、ここに先にやって来たみたいで、既に居心地悪そうに着席をされている。
こちらも何が何やら分からないが、向こうは向こうで警備員の面接に来ていることにされてしまっているようだ。

観客参加型。確かに楽しい。昨年、拝見して面白かった子供鉅人のコノハナアドベンチャーみたいで。
嫌いじゃないけど、二幕、つまりは本来の開演までの間、待たされている間に普通の感覚に戻ってしまう。
あくまで、これからの世界の前振りを体感しながら、意識として植えつけただけであり、ここでいったんリセットされたみたいな感覚になってしまう。

二幕は舞台から、客席を眺めながら観る。
劇場の支配人が誰の記録か分からないが、それを読み進めながら劇場のダンジョンへと入り込む様子を伺い観るような感じか。
大きなこの劇場の客席を舞台にしているので、どこで何が現れるのか。ちょっとでも目を離せば、人が消え、現れ。
話も、この記録が劇場で大きな償いと悔いを持って亡くなった女性を想って記されているものだということが分かってくる。
ダンジョンは奥へと進み、いつしか舞台にまで進出してくる。
ここにいたままでは巻き込まれるので、客席に移動することになる。

巨大な客席で神出鬼没に動き回る役者さんのパファーマンスの凄さだろうか。
この大きなホールならではの趣向を凝らした演出となっている。
広さを楽しむ遊び心。
ただ、異常なほどの距離感を感じる。一幕であんなに身近にいた登場人物たちは、もうどこか遠くの世界だ。単に広いからというのもあるだろうが、広過ぎるのか声もあまり聞こえない。
置き去りにされて、広大なスペースで現れては消えてを繰り返す動き回る人を観ているだけの状態に。
うまく例えられないが、屋上から校庭で遊びまわる子供たちを眺める、階上の窓際に座った喫茶店から静かな街並みにいる人を眺めるみたいな感覚か。
悪くはない。でも、長時間、観ていたら飽きる。話は確かに進行しているのだが。

三幕は普通に客席から舞台を観る状態に。
双子の姉妹の正体も明らかになる。
そして、この記録を書いた人も。
時間軸、空間軸も歪めた不思議な世界を繰り広げ、そこで劇場の闇の中で一筋の光を見つける。

客席一つ一つを星の光のよう見たてているのか。その光を見つけ出そうと、迷い込んだダンジョンを進む人たちの各々の想いが何とは無しに伝わってきて心地いい時間である。
舞台が広いので、これまで出来なかった大きなパフォーマンス、さらに動きをダイナミックにした魅力的なパフォーマンスで魅せる。
ニンジャーライトとやらも駆使して、話の内容とも相まって、ちょっとした宇宙が舞台に描き出される。
二幕でも気になっていたが、さらに役者さんの声が聞こえない。
広いので、聞こえないなら聞こえないで仕方ないとは思うのだが、マイクの関係だろうか、聞こえる時と、聞こえない時がまちまちであり、いつまでたっても耳が慣れない。 耳も目と同じで暗闇なら暗闇なりに見えてくるように、耳もそれなりに聞こえにくい状態がずっと続けば、それなりに聞こえるように耳がなると思うのだが。 闇の中に光を。騒然の中に静寂を。といった感性を引き起こすような作品だっただけに、五感の一つを潰されたのはかなり痛いように感じる。

遊園地のような体感、話は演劇らしい作り、いつもながらの見事なパフォーマンス。
ハードルを上げ過ぎか、期待を膨らませ過ぎか。正直、大きな凄さは感じず。どの幕も、全て私の期待の域を超えてこない。厳しく書いてしまえば、ちょっとがっかりして劇場を後にする。
大きなホールを活かして、この劇団らしい奇抜な発想で趣向を凝らした演出の魅力は感じるのだが。だから、素晴らしかったと感じても何もおかしくは無いと思うのだが、正直な感想は上記したとおりだ。
こういったあまり小劇場とは異なる劇場には本当に怪人でもいるのではないか。
どうも、そんな怪人に劇団の魅力を潰されてしまっているような感が残る。

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