S.S.O【カンセイの法則&10デシリットル Produce】140127
2014年01月27日 アトカフェ HAKONIWA Gallery (100分)
今回で3回目らしい。
少なくとも週に何回かは観劇しているのだが、なかなか情報が漏れるもので、これまで全く気付かなかった。
Short・Story・Omunibusの略で20〜30分ぐらいの作品をオムニバス形式で行うことを原則にした公演らしい。演劇には限っていないようだ。
また、芝居が終わったら・知り合いでも知り合いじゃなくてもいいから・お酒飲もうよ。あ、もちろんソフトドリンクでもいいからねの略でもあるらしく、普通に出演者の方々がカフェでお出迎えをしてくれていて、終演後もみんなとお喋りをして楽しむアットホームな雰囲気の漂う公演ともなっている。
今回はがっつり、コメディー、サスペンス、ファンタジーとテイストの異なる芝居の3本立て。
どれも、味わい方が異なり、おなかいっぱいになる。
「ソウナルネ」
もう、何年もの間、地底人を探し続ける教授。
東京からわずか数時間の所みたいだが、様々な文献からはその発見の可能性が高い洞窟を探索して、2日目。
教授はじめ、4人の一行は遂に最深部に到達する。
教授はあまり威厳はなく、人の良さそうな感じの人。とにかく夢を追い求めてきた。いや、夢ではなく、自分の前にはそんな目標があったとか、イチローの言葉を平気でパクって平然としているいい加減なところがある。
教授についてきて早9年。研究資金を調達するために、昼は教授の下で派遣社員として働き、夜はキャバクラで働いてきた側近の女性。妙齢になってしまったが、夢を追う教授を応援したい気持ちが大きいみたい。
急遽、バイトとして手伝うことになった男子学生。これまで手伝ってくれていた学生は就職活動で辞めてしまったらしい。恐らくは現実を見たのだろう。いつまでもこんなバカげたことはしてられないもの。と、そういう言ってはいけないことを平気で言ってしまうKY感たっぷりの男だ。
なぜか女にはモテるらしく、一行のバイトの先輩と後輩の間柄の女子学生2人とは、一人とは今、付き合っており、もう一人は元カノみたい。
最深部に到達したものの、どうも地底人がいる痕跡は全く見当たらない。
もうこれで終わりにしよう。夢はお終い。現実へとそろそろ戻ろう。
そんな教授の言葉に、一行はこれまでの夢を追い求めた時間を回想しながらも、現実を見詰め始める。
そうだなあ、きちんと就職しないといけないし。学生たちは心の内を出し始める。
でも、これまでずっと教授を支え続けてきた妙齢の女性は納得できない。
でも、少し前からそうするべきだと考えていたんだ。いや、そうしないといけないんだ。教授は言う。そして、その次に教授が放った一言に、・・・
ハッピーエンドなら、教授がこれまでありがとう。これからは地底人を追うのではなく、ずっと付いてきてくれた君を追い続けるよなんて妙齢の女性に言って、この洞窟で一組のカップル誕生。みんな、この夢を追った時間を大切に現実へと旅立つなんて結末が待ち構えていそうですが、これはおバカコメディーですから、そんなことには当然なりません。
みんなにとって、これまでの貴重な時間を、全て台無しにするような、あまりにも情けない教授の言葉。そして、一度は誰もが諦めた地底人探索において急変する出来事が起こります。
教授は孤立し、みんなから愛想をつかされた後に放つ最後の言葉が、この作品名になっています。
夢だなんて言いながらも、人の馬鹿馬鹿しい愚かなところを強調した皮肉めいたブラックコメディー要素も含まれた面白味のある作品でした。
「ツイキュウ」
廃墟に連れて来られた男二人と女一人。
目隠しをされ、両手は縛られて、椅子に座らされる。
意識を失い、気付けば暗闇の中だった。いったい、どういう状況なのか。
3人は苛立ちの中で、疑心暗鬼の会話をする。
目隠しをされている上に動けないので、他の人がどういう状況なのか分からないから。
ただ、この中に実はもう一人男がいる。
この男は目隠しもされていなければ、両手も縛られていない。でも、そんなことは誰にも分からない。
彼は、3人の不安を煽るようなことを言いながら、その様子を楽しんでいる。
監禁されているからには、何か共通点があるはず。
自己紹介をしようなんて言って、3人の名前と職業が明かされる。
ピンサロの店長、カラオケボックスのバイト、看護師。
共通点は見出せない。
それもそのはず。みんな自己紹介不足なのだ。隠していることがある。
やがて、男が両手を縛るロープが外れたと嘘をついて、男の手によって、三人の目隠しだけが外される。
店長とバイト、店長と看護師は顔見知りのようだ。
それを見透かしたかのように、男の追及は続き、・・・
笑いは一切無いという前置きをしてから始まったが、本当に緊迫した空気の中で、話が進む。
犯人は分かっている。縛られていない男だ。でも、どうして。復讐。いったい、どういうことがあって、こんなことをしているのか。
ずっと頭の中で推理しながら、3人の一挙一動を見守るという非常にピリピリしながらの観劇。
何かがある。それを見逃してはいけないって感じ。久しぶりに完全集中できた時間だったのではないだろうか。
結末を書いてしまうと、看護師は実は麻酔科医で、薬を横流ししている。その薬は店長ではなく、実はヤクザの男に渡している。二人は愛人関係にあるみたい。その薬をバカな若者たちにカラオケボックスで売りさばいているのがバイトの男。ヤクザの舎弟だ。
その薬を飲んで心神耗弱状態に陥り、人質を盾に立てこもるという事件が数年前に起こった。この時、禁断症状の限界を迎え、人質を傷つけようとした犯人に発砲した警官が、この監禁を起こした男。銃弾は運悪く、人質に当たってしまい、その子は死んだ。警官にとって、そして何といっても人質の家族にとっては運が悪かったではすまされないことである。
銃弾はその子の目を貫き、脳にまで達したのだとか。
暗闇の中で死んだ人質。そして、そのことを悔いて、暗闇の人生を送って来た男。
その復讐にふさわしい、死に方を3人に用意したということだ。
最後は、3人はもう一度目隠しをされ、このまま、この場所に放置される。
作品名のクラヤミの意味合いが分かり、ゾクッとする。
ただ、こういった作品は入り込まないと面白くなく、ちょっとした矛盾点を見つけて斜に構えて観たらダメなのは分かってるんですけどね。
途中から、最初の目隠しの段階で声で分かるんじゃないのなんて思ってしまい、ちょっと冷めてしまったところがありました。
「カミサマ」
マンションの一室。
気弱でマザコンみたいで、どうみても冴えない男が遺書を書いている。
その文面は平凡だ。
自殺の理由も、そんな文才の無さにあるみたいだ。
男は大学時代からずっと数々の文学賞に応募しながらも、誰からも認められなかったようだ。
そんな中、一人の女性が部屋に入ってくる。
鍵も閉まっているのに、簡単に侵入してきた女。男から、自殺する薬を取り上げようとしている。
はいと渡すわけにもいかない。覚悟をしているのだから。
そんな中、関西弁丸出しの男も入ってくる。そして、女に対してルール違反だと言い出し、二人は激しく言い争う。
聞けば、二人は生神と死神なんだとか。
まだ死ぬなと説得する女性に、いや死ねばいいんだと煽る男。
時間だけが過ぎていく中、一本の電話がかかってきて、・・・
ファンタジーと銘打っているが、これはコメディー。
それも、冴えない男の風貌で出オチのように笑わし、お上品で優しいのか、ガサツで荒々しいのか両極端の女性の言動や、ベタベタの関西人キャラの死神のドタバタの掛け合いを魅せる。
要は新喜劇調の作品といったところか。
新喜劇らしく、くだらんダジャレから、空気を凍りつかせるお寒いギャグ、全てを投げ打ったかのような弾けたキャラと豊富な面白さで満載だ。
さらには、新喜劇らしく、ちょっと熱く真面目なところもあったりする。
男はずっと頑張ってきたのに、誰からも認められず、今、死のうとしている。そんな気持ちが分かるのかなんて言っているが、みんな、そうなんだと諭すようなシーンもある。
誰だって、辛い中、頑張っている。それに、働きもせず、ただ文学を追求する男を、黙って何も言わずに応援し続ける親のことを考えればなんて。
泣けはしないが、ちょっとホロリと温かいところを見せながら、全体的にはアホ丸出しの掛け合いで話を進める。関西人ならば、非常に好みの作品に仕上がっているように思う。
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