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2014年1月20日 (月)

レンアイ罪【茶ばしら、】140120

2014年01月20日 インディペンデントシアター1st (90分)

恋愛の魅力を色々な視点から捉えた面白い作品。
各役を演じる役者さんのはまり具合が絶妙で、非常に楽しくのめり込んで観れてしまう。
傷ついたり、つらかったり、悲しかったり・・・と色々あるけど、やっぱり恋愛の素晴らしさは、何にも変え難く、自然に自分の心の中で生まれてしまうんだろうな。
もう、一生、女なんか好きになるかと決心しても、知らない間にまた好きな人出来るもの。そして、また・・・
ここも知っているから、怖いけどね。
恋愛を厳しくも、やはり素敵なものだと信じて描いたような楽しい話でした。

レンアイ工場。
ここでは、文字通り、恋愛が製造されている。
男性と女性の名前データを抽出。
製造番号入力。二人のハートが材料として流れてくる。
それをくっつける。溶接作業みたいで、必ずやけどをする。
恋愛期間となる賞味期限を決める。
最終チェックとして、障害、出会い、別れといったこの出来上がった恋愛の形を決める。
最後に、あるレバーを引くと世の中へと出荷される。
といった6工程。
各々の工程は、ここで働く女性たちが担当している。みんな哀れな女性みたいだ。
順に、男に捨てられた経験からもう恋愛なんてとしないと決めた捨てられた女。
メンヘラというのか、男に対して執着した愛情表現をしてしまう病気の女。
すぐ自分は不幸だと考える不幸な女。
一緒にいると退屈だと思われてしまう退屈な女。
不倫をして身ごもるが、子供を産むことが出来ずに男に裏切られた悲しい女。
そして、最後の出荷はフウコという女性が担当する。レバーを引くのはノウハウがあるらしく、彼女以外は出来ない。 下手にいじると吹っ飛ばされるみたいだ。実際に病気の女は大胆に吹っ飛ばされたし、退屈な女はかなり痛い想いをしている。

ある日、そんなフウコが、わざわざ直筆で全員に書き置きを残して失踪する。
書き置きには、色々なことに疲れたので少し一人になりたい。心配はしないでと書かれているので、最悪の事態は想像しなくても大丈夫そう。
でも、最後に書かれた言葉。探してください。会わせてください。
一体、どういう意味なのか。
残された5人はどうしたらいいのか。みんなで今後のことを話し合うが、昔の恋愛話が始まったり、悪口を言ったり、ケンカになったりとすぐに脱線してまともに話が進まない。

一方、同じ工場で働く男たち。
工場長は頭を抱える。フウコがいなければ、工場を止めるしかない。
工場長は原因を突き止めるべく、ある男を呼び出している。フウコと付き合っていた男だ。
この男、動揺しておかしくなってしまっている。
何でも失踪前に彼女のロックがかかった携帯を、わざわざ0000から全部調べ上げてまでチェックしたことから、言い争いになったらしい。
その時に見つかった工場の別の男への未送信メール。その書きっぷりがいかにも親しげだったことから、浮気を疑ってしまい、信用できないなら別れようといった状況になったらしい。
フウコが怪しかったからだと、自分の行動を正当化するようなことは言うが、同時に失踪は自分のせいだとひどく悔やんでいる。
となると、次に呼び出すべきは、その未送信メールの相手の男。
呼び出したはいいが、なかなか真相を白状しない。
しびれを切らした工場長は、みんなを連れて、女性陣の下へと向かうことにする。

この未送信メールの相手の男。退屈な女と付き合っている。
となると、これまでの話をみんなに喋れば、揉めることは間違いない。最悪、退屈な女がひどく傷つく可能性もある。人がいいのか、そんな心配をフウコの彼氏はしているが、それでは事件は解決しない。
工場長がこれまでに掴んでいる情報を全て暴露する。
案の定、浮気なのかどうなのかといった女性からの感情的な責めが始まるが、事態は思っていた以上の修羅場を迎える。
この男、不幸な女とも付き合っていたらしい。
要は二股は確定。フウコとまで付き合っていたなら、何と三股といったことだ。
退屈な女と不幸な女の厳しい言い争いが始まる。
女の敵は女という鉄則に基づき、こうなると男はあまり責められない。
それを巧妙に利用して、共に真剣に好きだなんてうまいことを言って、その場をしのごうとする男の姿が描かれたりする。そして、結局、両方に愛想を尽かされるなんて現実にもありそうな結末に落ち着く。

こんな男と女の恋愛あるあるみたいなことが開始から1時間ぐらいは描かれ、同調したり、反発したりの楽しい時間を過ごす。
最初の女子トークというのか、女性陣の掛け合いも面白いが、私が男なので、フウコの彼氏の気弱な優しさや未送信メールの男のズル賢さなんかの方が何となく共感を覚える。場をまとめているようで、女性陣に完全に圧倒されている工場長の姿なんかも、男、しっかりせえよと憐れと切なさを感じながら、もどかしい気持ちが沸き上がる。各役を演じる役者さんがはまり過ぎているところも面白くて仕方が無い。
恋愛の製造シーンはとっても可愛らしい。このシーンを用いて、色々な恋愛の形が面白おかしく語られている。思わず吹き出してしまうような恋愛像の連続で、1時間ぐらい、このシーンを見ていても楽しめるくらいだ。

で、肝心のフウコのことは全く解決していない。
残り30分でどうなるのか。
ここからが、本番である。
上記していないが、この工場にどこからともなく現れた謎の男がいる。
この男、フウコを必死に探している。
工場の面々が、この男と出会うことにより、この事件の真相が明らかになっていく。

ここはフウコの夢の世界。
フウコはこの世界に現れた男と現実世界で付き合っていた。
これまで、あまりいい恋愛をして来なかったフウコが、もう恋愛なんてと思っていた時に出会った人。
標準語を話す彼に合わせるため、関西弁を封じて、慣れない標準語で会話をするようにしていたことからも、この男に全てを捧げるぐらいの覚悟の恋だったことがうかがい知れる。
男は怖くなったらしい。全てを捧げようとするフウコに。そして、逃げ出すように彼女の下を去った。
そして、その事実にフウコは絶望して、今は意識不明の状態で病院にいるらしい。
意識不明といっても、頭の中ではこんな妄想の世界を創り出していたわけだ。
工場で働く女性たちは、フウコの過去といったところか。そして、登場する男は、この付き合っていた男の様々な部分を具象化した存在なのだろう。
この妄想世界の中で、フウコは完全に閉じこもって、人様の恋愛を製造するなんてことをして、自分の恋愛からは目を背けて生きていこうとした。
でも、この妄想世界の中ですら、自分の過去の分身たちに恋愛が生まれ、それに色々と惑わされることになった。
そんなことから、姿を消そうとしたみたいだ。

退屈な女より、もっと哀れなのは悲しい女です。
悲しい女より、もっと哀れなのは不幸な女です。
不幸な女より、もっと哀れなのは病気の女です。
病気の女より、もっと哀れなのは捨てられた女です。
捨てられた女より、もっと哀れなのはよるべない女です。
よるべない女より、もっと哀れなのは追われた女です。
追われた女より、もっと哀れなのは死んだ女です。
死んだ女より、もっと哀れなのは忘れられた女です。
全く知りませんが、マリイ・ロオランサン「鎮静剤」の堀口大學訳の言葉らしいです。
フウコはこの言葉どおりに哀れな女へと向かっていたみたいです。
でも、男は決してフウコのことを忘れてはいませんでした。それは、フウコも同じ。意識不明の状態にあるフウコも、この妄想世界の中でその男をずっと存在させ続けていました。
そんな二人の恋愛への願いを、過去の哀れな女たちが救おうとします。

この世界で出来ること。
恋愛を作ること。今度は自分の恋愛を。
男とフウコの名前データを抽出。自分たち自身もフウコだ。彼女たちにとっては未来のフウコのために。
製造番号入力。二人のハートが材料として流れてくる。自分たち自身の心でもある。
それをくっつける。いつものごとく、やけどをする。でも、それは決して不幸なことではない。
恋愛期間となる賞味期限を決める。もちろん、永久だ。
最終チェックとして、障害、出会い、別れといったこの出来上がった恋愛の形を決める。障害は何も無い。出会いは病院。起き上がったフウコと男はもう一度、恋愛の道を進む。未来永劫続く道を。
最後に、フウコが出来ることなら、自分達だって出来るはずと、レバーを引こうとする。
何度も何度も失敗するが、全員の力でそのレバーは引かれ・・・

最後は一瞬のこれからの幸せを浮き上がらせるシーンで終了。
起き上がったフウコの前に、あの男が立っている。
それだけで、非常に潔いビシっとした締めである。
一瞬で、心に刺さる素晴らしい終わり方だった。
そして、総じて、楽しくも感動する素敵な作品だった。

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