« gate #11 パイロット版シアターシリーズ ゲート【KAIKA】131221 | トップページ | 曲がるカーブ【クロムモリブデン】131222 »

2013年12月22日 (日)

UNTIL MEMORIES【CLICKCLOCK】131221

2013年」12月21日 PLACEBO

本年度300本目記念観劇。
・・・にふさわしい公演でした。

前回と同じく、リズムに合わせて進められる素敵な話たちに魅了されました。
美しいです。舞台の空気が心地よく、その中で役者さんがキラキラに輝いています。
この空間が拡がり続けたら、そこにきっと幸せな世の中が生まれるのだと思います。
ユートピアの原点かもしれないな。

・子供の頃の話

3年前に家を出て行った母親。
毎週土曜日に、父親が駅まで送ってくれて、その母と待ち合わせをする娘。
いつもは車でやって来る母親だが、この日は待ち合わせ時刻になってもなかなか来ない。
ぼんやりと眺める電車の中には、寂しくて一緒に何処かへ行こうと言う自分がいる。でも、母を待っているから、その電車には乗れない。
どうして、母親は来ないのだろうか。
渋滞、事故、それとも面倒だから・・・
母は父を捨てた。父も母を捨てた。私はその狭間にいる。不安で仕方が無い。
私がこうして母と会っている限り、父は母を忘れられないし、母も父を忘れられない。
だから、今日、私は・・・

子供の頃に住んでいた田舎の風景を蘇らしながら、その美しい空気の中で、一人の少女が自分ではどうしようもない悲しいこと、寂しいことを受け止めて、ちょっと大人へと成長した時が描かれる。
死者との決別を描いた銀河鉄道の夜をモチーフに、母との決別までを描いたような感じだろうか。
思い出の中の母が一つずつ消えていく中で、覚悟をする娘の姿を浮き上がらせる。
まだまだ母に甘えたい、一緒にいたいという娘が、その母との別れを受け入れることは、確かに自分のことをいつも気にかけてくれた大切な友人の死を受け入れるジョバンニと通じるものがあるように感じる。
抱きしめたくなるくらいに幼き純粋な娘の心。その幼き心を必死に震わせて、人生の悲しき出来事に向き合って成長していく姿は力強い美しさを映し出している。
米山真理さん(彗星マジック)、西村陽子さん、村上泰子さん(kusukusu'srabo)が、役を固定せずに、娘、心の中の母を演じる。そして、さらに情景描写を浮き上がらせる音響や照明みたいな舞台の空気作りとしての役割も兼ねている。別に役者さん自身が機材を使ってどうこうするのでは無い。役者さん自身の体から発する言葉、動きがそんな役割を発揮させている。米山さんのどこか遠き懐かしき昔を思い出させるような美しい歌声、西村さんの厭世感の中から見出す世の中の美しさ・素晴らしさを心から感じさせる表情変化、村上さんの可愛らしく無邪気な幼き少女の心を思い描かせる動きが印象に残る。

・実果子さんと私

ちょっと荒々しいがさつな女。
ついこないだも、もっと慈しみを持たないととか言われて、男と別れたばかりだ。
冗談じゃない。そんなの無理。私は私の道を進むんだ。
ぶつけようのない世への怒りを押し込めながら、ワンカップ大関片手に夜の町を徘徊。
見つけた花屋を叩き起こして、だったら植物の一つでも育ててやろうと球根を手に入れる。
酔ってあんまり覚えていないが、家に帰って、ワンカップの中に球根と水を入れたみたいだ。
起きたら、花の精みたいな女が部屋にいる。
侵入者だろうか。警察に電話してやるとか言っても、自分はその球根から芽吹いたとしか言わない。
挙句の果てには自分は違法植物だから、警察に電話しても捕まるのはあなただなんて脅しをかけてくる。
ただ、何となく寂しい生活の中に、本当に一輪の花が現れたようで、女はその花の精に親しみを感じ始める。実果子さんなんて名前まで付けて、共に生活を始める。
一通の手紙が届く。彼氏、いや元カレからだ。
女は封を開けようともしない。だって、あいつは私に嘘をついたから。
何でも話せる間柄になっているので、女は花の精に元カレとのことを打ち明ける。
働かない男を責めた時に、あいつは自分は人形であなたのことが好きになったから人間の姿で現れただなんて言ってきた。
馬鹿らしい。でも、本当にそれで良かったのだろうか。
だって、目の前には人間の姿で私と心を通わせている花の精がいる。
女は気付くと手紙の消印を頼りに男を探すために家を飛び出し・・・

おかしな設定である上に、話は荒々しい女の破天荒な行動とそんな女を臆することなく飄々と会話をする花の精とのやり取りにクスリと笑いながら展開する。
オチも何か落語みたいなコミカルなものである。
ただ、女と花の精の腹を割ったガチンコトークのせいだろうか、メッセージ性が極めて強く浮き上がる作品となっているような気がする。
どうしようもなく疲れた時、何もかもがうまくいかずにやけになってしまう時。そんな時に、ふと視線を変えてみれば、自分の本当の大切な気持ちが現れてくる。
男の言っていた慈しみを持てというのは、きっと女の荒々しさを改めろと言っていたのではない。そんな気持ちを持てば、あなた自身も慈しみを受けて恵まれていることにきっと気付くからだと思う。
うまくいかない、不幸だなんて世に八つ当たりをしているような女に、そんな心の安らぎを与えて、好きになったこの女の奥に眠る優しさをもっと表に引き出させてあげたかったのではないだろうか。
破天荒な女を演じる小野愛寿香さん(ステージタイガー)の独断場ともいえる圧巻の演技。コミカルかつ熱い、突っ走る女性像を映している。そして、拝見して、なかなか力ある女優さんなんだなと思ったのが、小津もころさん(劇的☆ジャンク堂)。自劇団公演等で何度か拝見しているが、貫録ある女優の小野さんに引けをとらない、思いっきりぶつかっていく力強さはかなり魅了された。

・曲目:時間

みんなで歌う。
心から楽しそうにしている方々を観る喜びか。
笑顔は伝染する。もちろん、私は冷静沈着をモットーとしているので、そんなに笑わなかったけど、心の中ではいい笑顔をしていたと思います。

|

« gate #11 パイロット版シアターシリーズ ゲート【KAIKA】131221 | トップページ | 曲がるカーブ【クロムモリブデン】131222 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: UNTIL MEMORIES【CLICKCLOCK】131221:

« gate #11 パイロット版シアターシリーズ ゲート【KAIKA】131221 | トップページ | 曲がるカーブ【クロムモリブデン】131222 »