いちご大福姫Smart【近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻舞台表現・発表B授業公演】131214
2013年12月14日 近畿大学 本キャンパス 10号館8階 演劇実習室
昨年、上演されたDRY BONESの公演から3本、残り1本が20年前上演された短編集から抜粋された4本立ての公演。
(DRY BONESの公演の感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/dry-bones120422.html)
妄想のような不可思議な作品が、面白おかしく、かつ人間の内側を映し出すように出来上がっていました。
単純にそのあまりものシュールさに笑ったり、ちょっと温かい気持ちになったり、何か人って愚かで嫌だななんて嫌悪感を得たり。
興味深い作品たちでした。
・大福、膨れ上がる
上記リンク先の同名作品。
いやあ、怪女優の武田操美さんのいちご大福姫という役どころを演じられる学生さんがいらっしゃるのかななんて興味津々でしたが、お姿こそ、何かコナンをちんちくりんにしたような可愛らしい感じでしたが、空気は似たものを出されてびっくりでした。松原由芽さん。
相方となる友達役の清水彩加さんの無理に同調したようなおかしな動きから醸される絶妙な不思議感とも相まって、まとまった仕上がりだったかな。
ただ、少々、笑いが少なめになるのは、やはりDRY BONESで演じられた役者さん方の豊富な経験から生み出されるオーラでしょうか。
相対性理論や宇宙の膨張、突き詰めれば化学物質の塊である人間が意志を持って動くという不思議など、科学的な事実と現実の不条理も描いた話だったんだなあ。
・ニルス=カナヘル・いちご
上記リンク先の「鈴木和子の場合は」を改訂したものだと思います。
シュールコメディー。
確か、前は見た目から既に異常という雰囲気が強かったように思いますが、少し、設定を変えて普通っぽいけど異常といった、普通と異常の境界がよりあやふやになっているような感じでした。オチも変わったような気が。
振り回されて、普通を信じる男の純粋な恋愛観が崩れそうになっても必死に頑張る悲しき男、三谷進介さん。信じる恋は異常をも普通に変える強さでしょうか。
見た目、普通の綺麗な女性なのに、内側にむちゃくちゃな異常さを潜める女性、浅尾朱音さん。
幾つもの修羅場を経験しているのか、平気で人を振り回して飄々としています。
威厳があるのか無いのか、固いのか緩いのか、厳格なのか単なる変態なのか、相反する正常と異常の狭間を揺らいでいるような父、藤本茂寿さん。同じく、知的なのか馬鹿なのか、従順なのか強い自分の意志を持っているのか、見た目と内に秘める能力の矛盾が甚だしい母、竹内桃子さん。完全にオトボケのお馬鹿さんで、いいところで全部笑いを持っていってしまう弟、矢野有華さん。
抜群の連携で楽しい作品となっています。
当日チラシを見返しながら書いていますが、友人役、笠井至さん。申し訳ありません。どこで登場されたのか思い出せない・・・
・子守歌
これが多分、20年前に上演された作品だと思います。 なので、上記リンク先には感想がありません。ただ、DRY BONESの公演の時も、上の作品の後に山津恵理子さんの優しい一人芝居があり、その落ち着いた空気の中で感じた温かみを覚えているのですが、今回もそんな作品を入れているようです。
娘からの電話を取る母親。
通い始めたダンススクールで疲れている上に、色々と家事があり、忙しいところの電話だ。
いつものやや厳し目な口調で対応する。どうしても、命令調になってしまうところは娘からもきつめに指摘されている。
ところが、娘の様子がいつもと違う。
最後に話せて良かったなどと言い出す。電話からは波の音も聞こえる。
どこにいるのと必死に語りかける母親。携帯の電源が切れる。
シーンは切り替わり、母親は単身赴任なのか、出張中なのか父親に電話。
あの電話は娘からでは無かった。と、娘は言い張る。友達とゲームをしてたのだとか。それでは、誰だったのか。
ただ、警察には電話して捜索騒ぎになったし、学校にまで電話してしまったので、明日、登校したら大騒ぎだから休むなどと娘は言い出して、ふてくされている。
本当にあの電話は娘からではなかったのだろうか。
でも、母はそんな電話があってもおかしくないことを自分でも分かっているみたい。
少し、娘や家族から目をそらせ過ぎたと思ったのだろうか。
母は無理矢理、娘とワルツの練習をし始める。
ぎごちないダンスは、徐々に歩調が合っていき・・・
どこかで通じてるみたいなことを感じさせる微笑ましい話。同時に、親子の互いに隠すことのできない強い想い合いも感じる。
親子って、共に成長していくんだろうななんてことを思う。
一作品目のいちご大福姫を演じた松原さんが娘、いじめっ子のヤンキー娘を演じた木村友香さんが母を演じる。あまりの変化っぷりに驚かされる。
木村さんの女として、母としての狭間で揺れる憂いみたいなものをじんわりと漂わせる空気が絶品。
・火花
これも上記リンク先の同名作品。
革命という大きな大義の下で、繰り広げられる小さな小さな恋愛から生まれる妬みや嫉妬。
実名と符牒もあやふや、革命の大義も恋愛もあやふや。
こんなお粗末な人たちが見ようとしている未来はいったいどんなものなのか。未来の世を見つめているのか、それとも、自分の将来の姿だけしか見れていないのか。
バカバカしさと同時に、情けない、でも人ってこんなものかもなという諦めみたいな感覚も生み出される。
自らの恋愛達成のために革命運動をしている、その最たる例の若者、レモン汁を演じる北野雅之さん。勝手な考えから暴走する自滅的な行動に追い込まれる姿が哀れである。でも、さすがにDRY BONESで同役を演じた大竹野晴生さんの変態的な狂気性には追い付かないか。
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