夜に埋める【突劇金魚】131209
2013年12月09日 アトリエS-pace
とにかく舞台美術に感動したなあ。
あれは凄いわ。写真撮りたかったもの。
で、話はこの劇団っぽい不思議な空気で展開しますが、そんな舞台美術とも相まって、情景を頭の中で浮かべながら、個性的な登場人物の心の闇に光を当てていくような感じです。
過去の過ちや悔いに囚われてしまう人間。
そんな人達が、夜の風景の中、それを単なる暗闇では無く、ポツポツと光がある中での暗闇だと思えるようになるまでの話といった感じかな。そうしたら、光に向かって進めるでしょみたいな。
うまく説明できませんが、少し不安や恐怖を心に残すのですが、優しい気持ちになれるような不思議な感覚が残る作品です。
<もう、明日の千秋楽を残すだけなので、いいかなってところですが、一応ネタバレ注意で白字にしています。素敵な舞台を是非>
舞台の趣向がすごい。
雰囲気は脳内世界のような不思議な空間になっている。
そこに、おかしな便器があったり、普通の部屋のような時計があったり、公園にあるような蛇口があったり、庭に植わってるような樹があったり、マニアックな人の部屋のような何やら大きな骨が飾れてたり、ボートがあったり・・・そんなものが、全部、一緒くたに配置されている。
それが話の進行に従って移り行く場所によって、各々がスポットを当てられ、切り替わる空間を作っていく。
舞台を見たそのままではなく、そのシーンに応じた情景を頭で想像させているみたい。
言葉ではうまく書けないが、容易にその情景を頭で描くことが出来るような仕組みなっているのだ。
美しいと同時に凄いと驚く。
清掃会社で働く女性。基本は夜勤で働いているみたい。
街からは離れている。
近くには昔はボーリング場として栄え、さらなる発展を目指して建てられたが今は幽霊ビルとなっている廃墟がある。最近になって、恐竜の骨でも発見されたのか発掘現場も出来ている。大きな川も流れているみたいだ。
線路は暗闇の中にポツポツと光る都市部のビル群に続く。そこには、何やら化け物の目のように赤く光る塔の様な大きなビルが見える。逆側は暗闇の山の中に吸い込まれるように消えていく。
女性は、最近、頻繁に届くメールに何やら困ってる様子で、便器にスマホを落としてしまえば、これから逃れられるのではと安直な行為をして、悔やんでいる。
コミュニケーション障害なのか、人からあまり関わることなく生きていたいのか、自分に自信が無いのか、オドオドとして、自分が言った言葉にもすぐに言い訳をつけてしまうような感じ。
そんな彼女の下に、言葉は礼儀正しいが、仕草は荒々しい、ずいぶんと威勢のいい男が新人としてやって来る。人見知りなどとは程遠いみたいで、男は距離を置こうとする女性に対して、気にせず絡む。
そんなぎごちない二人の下に、幽霊ビルに住んでいる浮浪児が現れる。
彼は、昔はボーリング場だった幽霊ビル解体中に運転していたシャベルカーが転落して亡くなった父親の骨壺を抱えている。墓に埋めても喜ばないという考えみたいだ。
たまたま、新人の男が発見した土に半分だけ埋まっていた何でも復元するというチラシを頼りに、その父親を復元してもらおうと旅に出る。
線路に沿って、暗闇を歩く一行。
やがて、朝になり高架下で眠りにつく。
そこで、女性は妹と出会う。
頻繁に送られてくるメールはこの妹からで、両親の命日に帰ってくるようにずっと連絡をしてきていたみたい。
家族ともあまり関わりたくないのか、女性はそれをずっと無視していたらしい。
昔、妹が両親からプレゼントされて大事にしていたおもちゃの宝石箱を庭の樹の下に埋めたりしたエピソードもあるみたいで、何となく女性は家族の中では少し浮いた存在で、妹にも嫉妬やらうしろめたさみたいな感情が交錯している様子。
妹は一行を家に招き入れ、墓参りにも連れて行く。
妹は家族の血縁の力に固執している感じで、それを女性にも当たり前のように突きつけてくる。
そんな空気が息苦しかったのか、女性はそこから逃げ出そうとする。
一方、骨壺を抱えた浮浪児は、恐竜の骨を収集している男と出会う。
その男は復元が可能だと言い、父親の骨壺を預かる。
そして、近くで恐竜の発掘現場があることを知り、そこに急行してしまう。
そんなことがあった頃から、浮浪児の父親が亡霊となって現れる。
その姿は、新聞を難しい顔をして読んでいることぐらいしか思い出の無い、生前からは想像できないくらいに明るくくだけたものであった。
とこんな感じで話は進むのですが、うまくまとめて書くことが出来ません。
この後、結局、一行はこれまでに囚われていた闇から脱出するかのように、自分なりの光を見つけた様なラストへと繋がっています。
過去に何か囚われている人を描いているのだろうか。
感覚として、一行の各々は、自分自身がそんな過去の出来事に埋まってしまっていると同時に、そんな過去を自分で夜の闇の中に埋めて、そこから出れなくなっているような印象を受けます。
旅の中で、そんな過去を掘り返して、それをもう一度見つめ直してみるみたいな。
そこには、自分を苦しめている過去が、時の経過によって形としては残っているものの、その時の悔いのようなものは薄れて、これからの新しい一歩を踏み出す希望となっているような感覚を得ます。
作品中の一行の各々の様々な言動から、みんな、家族というものを拒絶した悔いがあるのかな。
新人の男は手料理がダメみたいで、何となく両親がおらず、家族愛からは遠いところで暮らしていたことへの、人とは違ううしろめたさに近い感情があるのかなと感じます。家族を否定することで、自らが家族を持つことまでもを否定しているような想像をしました。
浮浪児は、父親のぶっきらぼうな生前の態度からか、父親を拒絶の目でずっと見ていたみたいです。亡くなって、はじめてそんな中に自分への想いがあったことを知ったようです。ありがとうの感謝を述べることも出来ない悔いが、自らへの罰のように骨と一緒に過ごすといった生活に繋がっているように思います。
女性は家族を拒絶してきたのでしょうか。これは極端な想像だとは思いますが、私は、途中、この女性は家族を殺めているんじゃないのかと少し思いました。どちらにせよ、家族と向き合わなかったことを罪として考えているような印象を受けます。
そんな人たちが旅の最後に得たことは、新人の男はみんなと旅をする中で、それは楽しいことであることを知る。女性と二人で乗るボートからの、自分が恐らくは虐げられてきた街の風景も美しく感じています。
浮浪児は、亡霊の父親のあまりにも軽く調子のいい姿や、父親の骨を恐竜のミニチュアみたいに復元され、自分が囚われていたものが、こんなものかといった拍子抜けするような感覚で救われたような印象を受けます。
女性は、囚われていたおもちゃの宝石箱のことなど妹は全く覚えておらず、自分が勝手に過去の過ちに埋まり、夜の闇の中で生きていたことを知ったみたいです。新人の男と同じく、ボートから自らが昔は暮らしていた街を美しいと思えるようになったような感じとなっています。
骨を収集する男や父親の亡霊がサンタクロースの姿だったりしているのは何だろうか。
こんな夜の闇の中にしか楽しみを見出せなくなっているような人たちへのプレゼントだろうか。そして、それは過去に骨となった人たちからのものだろうか。
夜だから見える世界。
そんな一時の夢を見させて、人間ってちゃんと分かり合える生き物だから、過ちを犯しても大丈夫だよと語っているような気がします。
苦しみの中で生きてきた人たちが、そんな夢で、まずは暗闇の中からでも一つ一つの光を見つけられますようにと祈るような想いを感じる。
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