« しみったれたおまえらには愛をやろう2013【演劇集団あしたかぜ】131125 | トップページ | 帝国【劇団有馬九丁目】131129 »

2013年11月29日 (金)

Re:空続きの〆切【勝手にユニットBOYCOTT】131128

2013年11月28日 京都市東山青少年センター 2F 創造活動室

ある女性の脳内を描いたような話。
個性的な脳内キャラ、マイムパフォーマンスなどを組み込んで、その独特の世界の雰囲気を醸し出している。
演劇作品らしい、閉鎖的な世界に留まり、歩みを進めないでいる人の自己脱却までを描く。
そこに素朴で深く真摯な愛が伝わる、切なくも温かみのある話に仕上がっているようだ。

ただ、初日ということもあってか、少し流れがぎごちないような印象を受ける。話とパフォーマンスが分離してしまっているというか。後半は、自然な流れで心情が大きく膨らんでいくので役者さんの熱量豊富な演技で嫌がおうにも盛り上がるが、淡々とした前半に得意とするパフォーマンスと話の融合を巧妙にして、もっと引き込ませて欲しいような気がする。
ごく普通の等身大のカップルの大切な絆を信じて、共に苦難を乗り越えていこうとするところが、描かれる厳しい現実の中で垣間見られる、暗闇に光差し込むような話かな。

<以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

対面舞台。
パフォーマンスが組み込まれているためか、スペースはかなり大きくとっている。
四隅に講演会を明日に控えるて焦る小説家、締め切りに追われる新聞記者、担当にせかされる漫画家、布団の中でぐっすり寝ている人が控える。

まずは、小説家の朗読に従って、ある男女の話が語られる。
男がベンチに座って女を待っている。
頭の中では、今日のデートプランを考えている。ポケットの中には指輪。今日は大事な日だ。
女は少し遅れてやって来て、だいぶ待ったんじゃないかと聞いてくるが、男は平然と別にと答える。もっとも、待っている間に地面をいじる癖があり、ぐちゃぐちゃになった地面でばれているようだが。
二人だけのお決まりのいちゃつきを軽くしてから出発。フランス料理の店へ向かって。
電車の時間があるのか、少し早歩き。
女はあんまりご機嫌では無い。男に原因は無い。ストッキングが伝線してスカートを履けなかったとか、化粧のノリがいまひとつとか、そんなとりとめもない理由。
そんな不機嫌な女は考え事をしながら歩いていたからか、男が手をつなごうと差し伸べた手に気付かない。
駅に着き、電車待ちの間、男はそのことに少しすねている。
何で怒ってるの。女は何も知らないのでそんなことを聞いてくる。
男はごめんなんて、理由を聞いてきてるのに、そんな答えをするもんだから、一瞬、空気が悪くなるが、電車がやって来たら、そんな悪い空気も吹き飛んでしまう。
電車に乗り込み、二人並んで座る。

どうも、刺激が無い。面白さを追求するが、話をうまくまとめられない漫画家は、自分の発想を入れ込んで、話を語り始める。
男は実はヒーロー。
先日も悪の組織からの刺客に狙われた時、女が気を失っている間に、必殺技を次々に出して敵を倒した。
女は夢うつつでそんなことを何となく覚えている。
この人はヒーローなのかな。いつも、私を守ってくれてありがとう。
目的の駅に到着。

締め切りに追われている。とにかく、記事を書かなくては。
駅を出た後の二人は、今度は新聞記者に委ねられる。
二人は街中を歩く。
猫がいる。女は駆け寄り、ジャレてくる猫と遊びだす。
女はすっかり楽しんでおり、周りは全く見えなくなっているみたい。向かってくる車にも。
男は女を突き飛ばし、・・・

寝ていた男が目を覚ます。
そんな夢を見ていたと。

巻き戻して再生するかのように、男女の話がスタートに戻る。
今度は、小説家の語りから、少し変わって新聞記者に引き継がれる。
でも、今度は男は女をかばって、通り魔に刺されるという事件に巻き込まれる形で終わる。
そして、また、夢。
繰り返し続ける話。
何回、繰り返しても、話が少し変わっても、小説家、漫画家、新聞記者によって、必ず女は命を狙われ続ける。そして、男はそれをかばうことになる。
とにかく、あの連中から逃げろと寝ていた人は起き上がって二人を援護する。

終わることのないようなこの世界。
男は、この世界がどういったもので、終わらせるためにどうすればいいのか、いや終わらせなくてはいけないことに気付き始める。
それは、現実の自分が今、どういった状態なのかを理解する。そう、自分は事故で重体となり、病室で眠っている。
女はこうやって、何度も何度も、話をやり直そうとしている。
それは受け入れたくない過去を変えたい願望からきている。
現実から逃げている。だから、病室で眠る男の下へはまだずっと行けないままだ。
でも、もう、それも終わりにしないといけない、そして、そうしてあげたい。
自分がこの夢の世界から消えることで、女は現実に目をもう一度向けるはず。
病室で眠る自分に会いに来て欲しい。必ず目を覚まし、もう、感がいいから気付いているのだろうけど、あの日、伝えたかったことをもう一度あなたに。
男は女にそう告げ、この世界がもう繰り返すことの無いように消える。
女はこの夢の世界から抜け出し、現実に戻る。そして、足は男の眠る病室へと向かっている。

少々、ごちゃごちゃしたところがあったりしますが、まあこんな感じの話でしょうか。
要は、閉じこもった世界から抜け出せなくなって苦しみ続ける女を、女を愛する男がヒーローのように救い出すといった話です。
決して、よくいるヒーローのように颯爽としたかっこよさがあるわけではありませんが、心の底から優しく女を愛し続ける男の真摯な愛の姿が描かれます。そして、そういう自分だけのヒーローのような男の愛をずっと受けていたからこそ、あの時、自分がこうしていればといったやり直しを頭の中で繰り返し続けるような苦しいけど、悲しみから一時的に逃れられる世界へと女は入り込んだのでしょう。男の真剣な愛に対する、愚かではあるけれど、どうしようもなかった女の真摯な返しであり、切なさを感じるところです。

のんびりとずっと寝続けて、全てを夢で片づけてしまえばいいという、この世界の支配者のような寝ている人。あの日のことを忠実に再現しようとする小説家。女にとって惹かれている男の姿を面白く形にしようとする漫画家。二人にとってつらい事件の結果を冷徹に突きつけようとする新聞記者。
いつまでもこの世界に逃げ込んでいたい、現実を見詰め、この世界から抜け出さなくてはいけないといった二つの相反する感情が交錯する中で脳内に生まれたキャラなのでしょうか。少し天然で自由奔放な変わったところがある反面、人への気遣いにちょっと神経質な一面も見られる女の性格を増徴させた感じになっているようです。
早く抜け出して、現実の男と会わなくてはいけない。それを男も望んでいる。苦しみ続ける女の姿は見たくないから。そんなところが〆切といったところなのかな。女の夢の世界に入り込んで、男は最後まで女を救う。そんな男の愛に、女は現実にしっかりと向き合って全てを受け入れようとする。それがRe:といった女のこれからとる男に応える行動のように感じる。

|

« しみったれたおまえらには愛をやろう2013【演劇集団あしたかぜ】131125 | トップページ | 帝国【劇団有馬九丁目】131129 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

ご来場ありがとうございました!
アフターイベントまで残っていただいて…>_<
何と申し上げて良いのやら(ー ー;)
また感想は終演後の楽しみにしておきます!

投稿: 河西 | 2013年11月30日 (土) 08時11分

>河西さん

コメントありがとうございます。

感覚的には壱劇屋とピンク地底人を彷彿させるかな。
まだ、ごちゃごちゃした感じは否めませんが、きっと公演を繰り返す中で、この劇団のまだ潜んでいる個性的な魅力が浮き出てくるような印象を受けています。
これからがとても楽しみです。

ありふれたカップルが、大事に愛を育もうとしている雰囲気が小川さんとのコンビでとてもよく表現されていて心地いい温かみがありました。

アフターイベントは・・・(^-^;
残り公演もご活躍を。

投稿: SAISEI | 2013年11月30日 (土) 17時10分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Re:空続きの〆切【勝手にユニットBOYCOTT】131128:

« しみったれたおまえらには愛をやろう2013【演劇集団あしたかぜ】131125 | トップページ | 帝国【劇団有馬九丁目】131129 »