エリマキトカゲ心中【超人予備校】131101
2013年11月01日 インディペンデントシアター1st
あ~、また素敵な作品だったあ。
私のこれまで観た中では一番好きなほとんど人参と同じような、力強くも優しい人の生き方が描かれているようで、とても感動しました。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/111001-e834.html)
と、同時に、いつもながらのキャラが立っており、そちらの面白さも抜群でした。
今週は、なかなかの公演激戦週ですが、笑って感動したいなら、この作品でいいのではないでしょうか。
<以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで。ちなみに、上記したほとんど人参はDVDが販売されています。お薦めです>
特に不幸な要素は何も無いのだが、それでは刺激が無くてつまらないと心中を決意する女性。
婚約者である男性は、そんな女性のわがままなのか、突拍子もない飛んだ考えに流されるように、いつの間にやら、心中ツアーという詐欺まがいのツアー会社の企画に参加する羽目に。
二人は心中ロードという道を進み出す。行く先は心中湾。そこで、普通じゃない劇的な心中を実現して、女性の望みを叶える。まるで、心中するために生きてきたかのように。
心中ロードには様々なモノたちが彷徨っている。
エリマキトカゲ。
周囲の騒ぎなど気にもせず、マイペースで淡々と生きてきたような男となっています。
ヘビに驚かされて、ご自慢のエリマキを広げて駆け出す姿で一世風靡した。
でも、今や、そのエリマキの広げ方も分からない。単なるトカゲだ。
彼にとっては、別に特別なことではなかった。普通だったが、それが特別だともてはやされていただけ。
トカゲなのか、ヘビなのか、足の無いアシナシに、もう一度、活躍してトカゲブーム再来をたきつけられるが、彼の足は心中湾へと向かっている。
自分のことが忘れ去られた世の中から逃げているわけではない。自分にとってより安全な場所へと向かっているだけ。元々、ずっとそのスタンスだったのだから。
死ぬつもりはなく、心中湾から、故郷に戻ろうと思っている。
紅茶キノコ。
庶民にもてはやされただけに、庶民受けしそうな可愛らしい親しみやすい女の子。
近所の口コミで、健康になると瞬く間に広まった。
近所付き合いが疎遠になった世の中のせいなのか、雑菌の危険やらが言われ始めて、一部、健康被害も起こったためなのか、一時のブームでその姿を消してしまった。
今では、キノコにあらず、キノコ様のゲル状の塊。おまけに毒まであると中傷される。
とは言っても、未だ紅茶連中からは言い寄られるみたいで、ダージリン、アッサム、アールグレイなんて高級紅茶からお付き合いを迫られている。
元々、庶民派で名を通してきた彼女。そんな高級志向の紅茶とは付き合えない。軽くいなすと、高級紅茶たちは死んでしまう。やはり毒があるのだろうか。なぜか、傍にはリンゴが落ちている。
やはり、庶民の紅茶といえば、リプトン。二人は名コンビだ。
彼女はリプトンと共に心中ロードを進む。忘れ去られた日本を離れ、発祥の地、モンゴルへ向かおうとしている。
チクロ。
一つの時代を作り上げた貫禄か、妖艶な姿の女性。
菓子の甘さといえば、この人。
日本の駄菓子を世に知らしめた実力者。
でも、発がん性やらで、今では不要な存在に。
かなり前から、この心中ロードを彷徨っているらしい。心中だから、連れが必要。
甘いもの大好きな紅茶キノコを口説いて、共に心中しようとする。
でも、まだヨーロッパでは活躍の場があるらしい。そんなことを知り、彼女もまた、心中湾から新天地を求めて旅立とうとする。
ミノムシ。
ギラギラした暑苦しい男。
時事ネタなのか、あのミノさん。ちょっと気が早いようにも思うが、きっと、最近、心中ロードにやって来たのだろう。
まあ、多くのブームものを得意の喋りで世に伝えてきた人だ。
こんな心中ロードを彷徨っているモノたちとは無関係ではあるまい。
エリマキトカゲを連れて心中しようとしていたが、さすがはミノさん。蛾になってでも、もう一度みたいな道を最後は歩むことになる。
毒の無いヘビに生まれ変わってしまった男。
ジョニーパイソン。今年のGWに拝見した、たびたまという作品の登場人物ですね。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/snaky-spiritkix.html)
毎回、あまり、いい生まれ変わりをしません。業が深いのでしょうか。まだまだ魂の修行は続くようです。
紅茶キノコと組めば、毒を手に入れられると考えたのか、執拗に迫ってきます。
まあ、うまい具合に、プロレスラーのあの人が現れて、助けてもらうのですが。
心中をしようとするカップルは、そんな心中ロードを彷徨うモノたちと出会い、彼ら彼女らの生き方を見つめる。
そして、何やら、心中と言えば、この人みたいな、近松と名乗る心中コーディネーターに、自分たちを客観的に見てもらうことで、心中するという考えを変えて、自分たちがどうするべきなのかを見出していきます。
二人は、心中ロードを引き返し・・・
もてはやされ過ぎて、特別な存在になると嫌われる。忘れられる。普通になってしまう。そして、心中ロードを彷徨う。行き着く先は心中湾。
そんな、過去につらい経験をして、勝手に人に作り出されて犠牲となった彷徨うモノたち。
彼ら、彼女らは普通になったがために、心中ロードを進む。
これに反して、カップルは普通を嫌って、この心中ロードを進む。特別な存在になることを求めて。
そんなカップルは、普通になったモノたちが、今もなお、この心中ロードの先に、自分たちが生きるべき場所を目指して突き進もうとする姿に考えを変えたのでしょうか。
最後、カップルの男はエリマキトカゲからエリマキ、女は紅茶キノコからキノコの帽子をもらう。
共に、これで一時代のブームを作り上げた自分たちの象徴のようなもの。
そんな一時のブームを刻んだものが無くなっても、自分たちは、自分たちとして存在できるという、強い意志か。
みんなは心中ロードから、故郷やまだ活躍できる場所へと旅立ち、そこで生きていくという覚悟の大きさを感じます。忘れられたから、普通になったから死ぬなんてネガティブな考えはかけらも無く、そこには新しい地で、自分たちの生を全うするという希望に溢れているようです。
冒頭で高級紅茶が死んだ時に転がっていたリンゴは、色々とあってヘビの手に渡り、最後はカップルの手に渡ります。
創世記のイメージでしょうか。
これからは、もう流されることなく、自らの意志で自分たちの世界を創り上げていこう。そんな道を歩もうとする二人の新しい人生の始まりを、二人の微笑みと共に描いて、話は締められています。
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