不老不死セレブレーション【テノヒラサイズ】131117
2013年11月17日 世界館
作・演が湯浅崇さん、つなぎの衣装じゃないとか、ちょっとこれまでのこの劇団とは変わった公演。
でも、いつもどおりの安定した楽しい作品でした。そして、ちょっと温かい気持ちにさせられるラストであるところも。
非常に巧妙に計算された話です。
これは、今までの作品もそうでしたが、輪をかけて、その騙し具合がパワーアップしています。
時間軸をズラしたようなミスリードさせられたり、拍子抜けするような裏をかかれたりと、騙され続けた100分間。
好き放題に散りばめられた伏線が、全て回収されていく爽快感。
笑えて、感動。
まあ、あまりにもトリッキー要素を交錯させまくっている話なので、あらすじ書くのは無理だと初めから思っているのですが、筆が止まるまでちょっと書いてみましょう。
不老不死研究所。
遂に完成した不老不死の薬。
ただ、出来上がったのは二錠だけ。
七人の研究者のうち、二人しか不老不死になれない。
当然のごとく、誰が飲むか揉め始める。
ビオフェルミンに錠剤の形が似ているから混ぜて、運に任せようか・・・
このあたりは、いつも通りの抜群のチームワークの良さ、役者さんのけっこう固定されたキャライメージをフルに発揮したこの劇団らしい掛け合いで笑わされます。
そんな中で、みんなを騙すように、いきなり自分だけが飲んだ男。
これで最高の人生が得られる。
でも、そうだろうか。
死なないの定義って何だ。例えば、事故にあって痛くて仕方なくても死ねない。雪山で遭難して寒くて仕方なくても。地球が滅んで、宇宙空間に放り出されて息が苦しくて仕方なくても・・・
死なないことって本当にいいことなのかって疑問が生じ始めて、男は錯乱する。
実は、既に冒頭のこのシーンがラストへの裏をかく要素になっています。
それから時が経つ。
ここも、私は時間軸を過去へと向かわせ、回想シーンに入っているのだと数十分間思いながら、騙されて観る。
場所はある倉庫。
大学時代のサークルの面々が集まる。
チーム驚き組。
とにかく人を驚かせる、サプライズをすることに燃える人たちが集まったサークル。
卒業後も、その精神は劣らず、とにかく何かあるたびに人を驚かしたいらしい。
そのサークルのある男が、同じサークルの女性にプロポーズすることになっている。
もちろん、男はサプライズプロポーズを作戦している。昔の仲間に頼んで、計画を実行。
ところが、男がプロポーズしたところ、思いも寄らず断られてしまう。
その理由は女が不老不死だから。私は不老不死だから、一緒に死ねない。死なない人としか結婚しない。
呆然とその場を立ち去る男。
男が立ち去った後、騒ぎ出す面々。
逆サプライズ。
実は女の方が、昔の仲間に頼んで男を驚かせるつもりだったのだ。
その計画は、いったん、プロポーズを断る。
そして、拳銃を片手に、不老不死の薬を持った悪者を登場させる。
その悪者を見て、男は薬を手に入れようとするだろう。でも、手には拳銃。怖い。でも、女を愛している気持ちが強いなら、死すら恐れずにその薬を手に入れようとするはず。
その男の姿を確認して、二人は結ばれるって段取り。
作戦が実行される。
でも、場所がこんな倉庫。
本当に悪い薬を取引きするためにやくざの組員がやって来る。
さらには、不老不死の薬を飲んでしまった研究員の男までが、その場に現れて・・・
これぐらいで限界かな。
DVDが販売される予定なので、それを購入しましょう。
これだけなら、ドタバタコメディーとなってラストを迎えるのでしょうが、ここからさらに一転二転が待ち構えています。
裏の裏をかく巧妙な話の展開に、段々と腹立つくらいです。
綺麗な伏線の回収もあれば、かなり無理やりなところも。そのあたりが、腹の立つところかもしれません。
こんな展開じゃあ、いくらなんでも裏を読むのは無理だよみたいな。
こんな少しスマートさに欠ける不条理な展開も、また、この劇団の手のひらで転がされているような心地よさかもしれません。
要は騙されても、驚かされても、好きなんだなと思います。
それは、この作品の驚き組の面々が、騙し合い、驚かせ合いの中で固い絆で結ばれており、その中から一つの大きな愛が生まれたように、この劇団自体、劇団と私たち観客との関係を映し出しているようです。
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