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2013年11月 4日 (月)

落下のエデン【MicroToMacro】131104

2013年11月04日 シアトリカル應典院

家族、特に父と息子の間に潜む想いを描いたような作品かな。
生演奏の迫力や美しい舞台は、いつものとおり。
そして、温かい人の想いが交錯する素敵な作品だったことも。
いつもどおりのミクマク。
これが好きだから観に行くんだ。

役場勤めの厳格な父に、歌が大好きな優しい母。
二人は、母が楽団の歌い手として、たまたま町にやって来た時に知り合って結婚したらしい。
子供は兄弟二人。
出来が良く、父からも将来有望と期待される兄。いまひとつ出来が悪くて、父からは厳しくされている弟。歌が大好きみたいで、母からプレゼントされたハーモニカは大切な宝物。
母の優しい歌声を聞きながら、厳しいながらも子供を可愛がる父と兄弟たちの団欒。そんな家族だった。

時が経つ。
母は楽団の一員として、違う町に公演をしに行く途中、事故で亡くなった。
兄は長年、父と共にひたすら研究を続けてきた。
スターフルーツ。
この辺りでは、誰 も見たことないような、この星を形どるフルーツで町を発展させようとしている。
そして、その努力が実り、ようやく出荷できるようなスターフルーツが収穫できるようになる。
町の神父とシスターは、スターフルーツがこの町の発展、町民たちの幸せに繋がることを願う。
弟はあまり父とうまくいっていない。互いに素直になれず、しっかりと話し合うことも出来ないみたいだ。
兄への反発なのか、もっと違うことがやりたいのか、スターフルーツ栽培には目も向けないような態度がまた父を怒らせる。でも、本当は影で、父と兄の力になろうと色々と二人が気付かないところに目を配っていることは誰も知らない。
自分は誰からも嫌われているから。やけになる弟にいつも無邪気に声を掛けてくる孤児院にいる純粋な男の子。
その子に、かつて母からもらったハーモニカで音楽を奏でて、一緒の時を過ごす時、弟にも笑顔が戻っている。
そして、弟は妄想にふける。そんな時、あの母が自分の前に現れる。

父は疲れがたまっているのか、昔からの癖なのか、すぐにウトウトしてしまう。
深い眠りにつく。一度寝たら、なかなか起きない。
寝ちゃダメだよ、起きないんだから。そんな言葉も寝てしまった父には届かない。
かつては母、兄弟からよく言われていた言葉だ。今は、もう母からはそんな言葉を聞くことも出来なくなったが。

父の夢の世界。
そこでは監獄囚になっているみたいだ。
若い男二人と鎖でつながれている。
脱走して、行き場を無くしている時に、黒づくめの怪しげな男に出会う。
彼は、鎖でつながれていた方が良かったのにという言葉を残しながらも、彼らの鎖を解き、一体のちょっと天然の不思議な女の子のドールを彼らに手渡す。とにかく、このドールの言うことに従えと。道案内役みたいだ。
その頼りない道案内に従って、その場を逃げ出す。
途中、同じく監獄に入れられていた幼い男の子も彼らの跡を追ってくる。
彼らは戻る様に説得するが、ドールは一緒に行くべきと言うため、共に旅することに。
そんな旅の途中、彼らは一人の女神と出会う。
美しい歌声を奏でる女性。

町ではいよいよ、スターフルーツの出荷が始まる。
隣町までは遠い。もし、何かがあったら、せっかく収穫したスターフルーツが台無しになる。
と言って、安全のために何回かに分けていたら、おいしく食べられる時期を逃すことになって、それこそ売り物にならない。
父の判断は町の人の協力も仰いで、やってみよう。その案に兄も不安ながらも賛意を示す。ここまで二人で頑張ってきたんだから。
ただ、その計画に弟は反対する。
その出荷ルートでは、あの橋を通ることになる。万一、雨でも降ったら、全てがダメになってしまう。弟は影で出荷ルートを丁寧に調べていたので他のルートを提案する。
しかし、そんな提案が受け入れられるわけもない。ずっと、父と兄で頑張ってきたのだ。
兄は弟の意見に耳を傾けようともしない。

監獄囚たち。
いつの間にか父がどこかにはぐれてしまったみたいで若い男二人が会話をしている。
自分はあの人に嫌われている。頼りにされているお前とは違う。
もう鎖も外れたのだから、各々が自由に好きな道を行けばいい。
父の夢の世界は、現実世界で出会った人たちが姿を変えて登場しているみたいだ。
若い二人は兄弟。男の子は孤児院の子。ドールはシスター。あの怪しげな男は神父だろうか。
そして、女神はかつて父が愛した妻。
そんな中、激しい雷雨が降り始める。
戻って来た父と若い二人、男の子、ドールは必死に避難し始める。

町の人みんなが協力してくれて、無事にスターフルーツは出荷されていく。
しかし、その途中で、弟が万一と忠告していた雷雨が。
川は氾濫し、橋は崩れる。
スターフルーツは。そんな心配を真っ先にする兄に対し、父は町の人の心配をする。
スターフルーツは二の次。今は、町の人の安全を考えないといけない。
結局、スターフルーツは全てダメになった。町の人の犠牲が出なかったことだけが不幸中の幸いだった。

全てを失ってしまった。
スターフルーツの畑も壊滅状態。
兄はそれでも、必死に様々な人たちの協力を仰ぎ、再生へ向かって歩み出す。
弟はそんなつらい中でも必死に頑張る父や兄の役に立とうと、流されたスターフルーツで何とかなりそうなものを集め闇市で売りさばく。そして、橋を治して、そこで音楽を奏でて、町の人からお金をもらう。
少しだが集まったお金は、二人の再生のための足しになるだろう。
そう思って、父にお金を手渡すが、父からは被災者から金を巻き上げる卑劣な行為だと全面否定される。
弟は自分の想いを否定され、完全にやけになる。
なだめる兄に対しても暴力をふるう。

弟は兄に対して、ずっと持っていた想いをぶちまける。
幼き頃に、弟は兄に言われた言葉がある。お前は父の本当の子では無いと。
でも、残念ながら、自分は父の子。いくら嫌っても、出来の悪い、自分はあなたの弟であることを自虐的に。
そんな弟の言葉に、兄もまた自分の想いをぶちまける。自分は父の子ではない。母の連れ子だから。
知らないと思っていた父は驚くが、兄は町の人でそう悪意的に教えてくれるような人もいたことを伝える。
崩壊してしまったような家族の絆。
父はそこから逃げるように深い眠りにつく。

神父は人の夢を見るという特殊能力を持っている。
父が夢の中で、自分たちに対応するような人物を作りあげて、逃げていることを兄弟に伝える。
逃げている限り、きっと目が覚めることが無いことも。
兄弟は父の夢に入り込み、逃げている父を自分たちの世界に引き戻そうと試みる。
自分たちの声が本当に父に届くのか。
兄弟たちだけではきっと無理。
神父もシスターも、孤児院の男の子も、そして、弟が確かにここにいると信じる母を連れて、夢の中の父に会いに行く。
各々が夢の世界で自分の姿を映し出す者たちに、必死の想いをこめて語りかけ・・・

と、うまく書けませんでしたが、こんな感じのあらすじ。
父を共通にして、現実と夢の世界を並行して描きながら、その想いが一つに収束していくような構成になっています。
DVDが出ると思いますので、詳細はそちらで。
でも、話はそちらで分かるとして、DVDで感じられるかなあ。あの、後半の恐ろしいまでの熱演。
びびるくらいに凄かったんだけど。
父、上田泰三さん(MousePiece-ree)、兄、泥谷将さん(劇団鉛乃文檎)、弟、長縄明大さんの親子、兄弟、家族としての想いをぶつけ合う名シーンの数々が。
息を飲むというか、呼吸を忘れるくらいに惹きこまれます。
だいたい100分の上演時間でしたが、ここまでに蓄積してきた80分ぐらいの想いではなく、この作品上での時間軸として幼き頃から今、父と兄弟が過ごした数十年の時間を思わせる熱い想いをこめた語りが見られます。

夢の世界での父と若者二人の鎖。
本当の絆では無かったのかな。家族であることを強制的につなげていたもの。見せかけみたいなものか。
鎖でつながっているから、同じ場所で共に過ごすだけみたいな。
それでも家族は家族であり、きっと怪しげな男がつぶやいたように、そのままでも良かったのかもしれない。
でも、父と若者二人はそれをほどくことを望んだ。
結びつけるものが無くなってしまう状態。現実世界では母の存在が消え、そして兄の血縁に関する事実も明らかになってしまうようなことか。
それでもなお通じ合う関係。それは、互いに想い合う心という、物理的な鎖よりも強く、切っても切れないものなのかもしれない。
母は亡くなっても、なおみんなの心の中にいてるし、血縁がどうであっても、父と兄弟が家族であることは何も変わらない。兄弟はいつまでたっても兄弟だろう。
そんな家族になったように感じる。

最後、夢の世界で兄の西村恒彦さん(劇団自由派DNA)、弟、小谷地希さんが、現実世界の兄弟に向けて、とても優しい笑顔を向ける。
三人はドールの道案内で右往左往しながら逃げてきた。でも、鎖が切れた後も、ずっと三人一緒で、あいつは自分のこと嫌っているとか、色々な感情が渦巻きながらも、やっぱりずっと一緒だった。そこで女神にも出会った。
雷雨激しい、苦難な中でも、三人と他の周囲の人たちと共にずっと歩んできた。
この世界は父が創り出したのだから、これからの現実世界でもきっとそうなる。
この夢の世界での一時を現実でも実現してくれよみたいな感情が読み取られて、とても心揺さぶられた。

父親と息子を描いているところがあるかな。
何となく、自分の亡き父親のことを思い出しながら、帰りの電車に乗っていた。
父親の場合、本当の親子になれる時ってのは確かにあるかもしれない。母親の場合は、何があってもずっと本当の親子だと思うけど。
私の場合は、電車の中で思い出したので記しておくが、多分、あの時だなあ。
中学2年生の時、悪いことして、父の帰りを待っていた時。どんな悪いことかは、警察沙汰になっちゃってるから書かないけど。
母親に恐らく、父が本気であなたを殴るから覚悟しておきなさいと言われ、ビビりながら待っていた。
父が帰宅後、泣きながら、私を殴るんだけど、これが全然痛くない。剣道とかラグビーやってた父なので、力弱いわけないんだけどね。
5発ぐらい殴られたけど、全てが全然。よっぽど、学校の先生に殴られた方が痛かった。
ただ、それは物理的に。この人、自分のこと本気で殴れないんだと思ったら、痛くてたまらなくなった。
その時、いや今だからそう思うのかもしれないけど、想われていることを知ったような気がする。本気で殴るのももちろん、一つの想いだけど、自分の父のようなパターンもあるんだろうなと思う。
この時、きっと親子になったような気がしている。
ちなみに、その時から、勉強熱心ないい子になって、今ではまあまあ立派にやっていますしね。

そう言えば、数年前、父が危篤になった時に親不孝にも観劇した作品がこの劇団だったな。
そして、今回は何と、母親の乳がん再発を数日前に告知されるという状況。
どうも、悪く言えばげんが悪いんだ、ここは。
でも、逆に考えれば、そんな状況の時だからこそ、神様が観るようにタイミングを合わしてくれているのかも。
自分の家族や出会った大切な人たちの想いを思い起こさせるような作品だから。
素敵な作品と共に、心穏やかに自分の周囲の大切な人たちのことを考える時間も悪くはない。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEIさん。
いつもご来場頂き、そして、今回もこんなに丁寧に感想を書いて下さいまして、本当にありがとうございます。

一度の観劇で、こんなに細部まで覚えてもらって、そしてたくさんのことを感じて頂けるなんて、つくった者として本当に嬉しくありがたい気持ちでいっぱいです。

感じて頂けたとおり、父親と息子を描きたいと思ったところから始まった物語です。上手く伝えあうことが出来ないけれど、お互いの奥に流れているものを、それが確かに流れているんだということを描きたかったんだと思います。

そこには、やはり重要な繋がりである母親を描くことになり「家族」を描くことになり、そこに関わる人たちも描くことになっていったのですが、

作品を観て頂いた帰り道に、お父様のことを思い出された・・・とあって。そんな気持ちになる作品になっていのかなぁ。と改めて自分の作品をこれから振り返ってみたいと思いました。

SAISEIさんも、私の兄と同じような経験を(パンフレットの挨拶文に少し書かせてもらいましたが)されてたのですね。

いつもご家族が大変な状況になった時の観劇で、本当に不思議なタイミングだと思うのですが、観て下さったことで、何か少しでも、その今のSAISEIさんの心に何か残せたり、働きかけるものがあれば幸いです。

本当にありがとうございました。

御母様がどうか、よき症状に向かわれるよう、心からお祈りします。

投稿: teru | 2013年11月 5日 (火) 14時39分

>teruさん

コメントありがとうございます。

感覚的にはハネモノの再演に近いかなと思って観ていました。
父と息子の微妙な関係。想い合っているんだけど、表面的にはどうもどこかズレているように見える。
母と息子のストレートな想い合いとはやはり異にするところがあるような気がします。
でも、自分が男だからかもしれませんが、それが父子なんです。
そして、そんなことを改めて気づかせてくれて、そこに想いを馳せるような作品になっているように思います。

私が父のことを思い出したのも、当日パンフレットのteruさんのお兄様のエピソードを拝読したところが大きいかな。
どこもそうなんだなあと思いながら、観終えて、色々と思い出しました。
互いに素直に愛を降り注げない不器用さがもどかしくもあり、それが男の魅力なんだよと思ってみたり(゚▽゚*)

ここは本当に不思議なタイミングで拝見することが多いです。
まあ、スカイフィッシュ・ワルツの時が父危篤だったので、その後の8月公演のたびに、命日が近づき、父のことを思い出すタイミングということなんでしょうが。
こういった素敵な作品と共に、色々と見つめ直してみるのも、私にとっては大切な時間です。
今回はせっかく時期がズレたのに、母の件は、想定外でしたが。

ちなみにteruさんも、乳がん検診はなるべく定期的に受けてくださいね。
私は癌の研究をしており、色々と最新の治療を普及させようと頑張っているつもりですが、そんなものよりも、まずは早期発見です。これに勝る治療法は無いです。

次回公演も楽しみにしております。
今度は何が起こるかなあ~(゚ー゚;

投稿: SAISEI | 2013年11月 5日 (火) 21時32分

SAISEIさん
ありがとうございます。
婦人科の癌検診、定期的に受けています。
SAEISEIさん、うわわ。
そのような医療研究のお仕事をされていたんですね。凄い・・・。

次回は何も起こりませんように・・(>▼<)

投稿: teru | 2013年11月 7日 (木) 00時08分

>teruさん

よかったです。

そうなんです。
普通のサラリーマンとちょっと違って、あまり時間拘束が無いので、観劇もしやすいのです。
その代わり、夜中仕事とかもけっこう多いんですけどね。
再生医療関係の仕事なんで、ハネモノとかの臓器移植テーマは入り込みやすかったです。

疲れをとって、またご活躍ください。
また、お会いできるのを楽しみにしています。

投稿: SAISEI | 2013年11月 8日 (金) 12時16分

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