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2013年11月26日 (火)

しみったれたおまえらには愛をやろう2013【演劇集団あしたかぜ】131125

2013年11月25日 ウィングフィールド

とてもいい作品だった。
作品名どおり、愛だった。
愛される、愛する。そんな愛に感謝をする尊い気持ちが、離れた二人でも繋げ合ったみたいな感じの話かな。
静かに人を見詰める中で、その人を想う気持ちが溢れてくるような、とても幸せな感覚を得る。

父親と二人で暮らす女の子。
母親は幼き頃に出て行ったみたいだ。
娘に幸せになって欲しい、ちゃんとした人間になって欲しいという想いが強過ぎるのか。
出て行くという形で自分を裏切った妻の前に付き合った女性への面影を残すように育てたいのか。
会社で周囲の人の賛同をなかなか得られない研究をしているみたいで、妻と同じようにすぐに人に裏切られるように去られて行く。唯一の自分を絶対的に信じてくれる存在として娘を自分だけのものにしたかったのか。
とにかく、父親は娘を外界と遮断して暮らさせる。
外出は買い物のためだけ、テレビは一人で寂しい時に映らない砂嵐を観るだけ、父親のいうこと以外は聞かない、知らない人とは話をしてはいけない・・・
娘もこれを異常なことだとは考えずに、父親を信じ切っている。
父親は娘にすがるような二人だけの世界を創り上げる。

男と若い女性。
昨晩、女性からのナンパのような形で知り合い、一晩を過ごした。
男の年代の死語的な言葉で言えば、ワンナイトラブといったところか。もっとも、並んで寝ただけで、いわゆる男女の関係にはならなかったみたいだが。
誰もいない、何も無いようなところだったらしく、朝になって二人は海を眺めながら、ぼんやりとたたずんで会話をする。
話しかけるのはもっぱら女性の方からで、男はそれに無骨に答える。答えるといっても、会話のキャッチボールを遮断してしまうような感じ。それでいて、男は女性に興味はあるようで、気を引かすように、自分のことを少しずつ話していく。

この二つの話が同一舞台で並行して展開される。そして、それはやがて交錯していくことになる。

父親と女の子は、やがて、母親と児童相談所の人がやって来て、強制的に切り離されることになる。
それはクリスマスの日の出来事だった。
世間のことを何も知らない女の子に、母親と児童相談所の人はお父さんを喜ばそうと部屋を飾り付け、クリスマスパーティーをしようと語りかけ、その準備をする。父親も自分を喜ばそうとしての行動ならば受け入れるという計算だ。でも、実際は父親は娘を裏切りだと激しく罵り、止めに入った母親にも暴力をふるうことに。もう、二人だけで生活させることは限界と判断される。助けて、お父さんと娘は叫びながら、娘は父親の下から連れ出される。

男と若い女性は徐々に打ち解けた会話をするようになる。
誰もいない二人だけの世界。ここはエデンの園。アダムとイブみたい。イブはアダムの肋骨から創られたのだとか。だったら、親子なんだね。二人でこれから世界を創ろうか。
最初は、もっと自分を大切にしなさいと言いながら、娘の場を盛り上げようと少しおちゃらけた話題も全部否定して会話のキャッチボールを止めていた男も、自分のことを語り出す。
若い女性が自分の愛した女性の面影があり、興味を惹かれたこと。
人の人生は育った環境で変わる。例えば同じ遺伝子を持つ者が別々に環境で過ごせば、全く別人になる。逆に違う遺伝子でも同一環境で過ごせば、その人と同じようになる。そんな、多くの人からは拒絶されるような研究をしていて仲間ができず、いつも一人だったこと。そして、幸せになって欲しい、ちゃんとした人間になって欲しいと一緒に暮らした娘と、クリスマスの日に・・・

若い女性は、男が昔、共に過ごしたあの娘。
あの頃のように、ほんの少しの時間だったが二人だけの世界の時間を再び過ごした。
女性は新しい命を宿しており、禁じられていたのだが、もう一度会いに来たらしい。
それは、男に、父親にただ一言を言いたくて。ありがとう。
立ち去る女性に、男は、クリスマスに娘と別れた時と同じ言葉を女性に、娘に投げかける。幸せになりなさい。

舞台の周囲を囲むように服が散乱している。ちょっとした小道具は、この散らかされた服が役割を担っている。
この舞台の雰囲気は、これまでも拝見したこの劇団の作品にもあったような気がする。まさか、こんな部屋がスタンダードだと思っているわけはなく、心の乱れみたいなものを表現しようとしているのだろうか。何となく、色々なところに考えがいって、まとまらない心のもどかしさ、落ち着きの無さみたいな感覚を受ける。
ラストは、この部屋が整然となるわけでは無いが、どこか片付いて、落ち着きを取り戻したような感覚を受ける。散らかっていた一つの考えが、すっきりと頭の中でまだ騒然としながらもまとまったといった感じだろうか。

話だけを表面的に見れば、これは完全に虐待に近い親子関係であり、トラウマとなった娘は一生、その傷を背負うみたいな印象を受けそうである。
でも、この作品では、そんな異常な世界の中にも、自分を想ってくれていた父親への理解、そして、そのことへの深い感謝の気持ちを溢れさせた話としているようだ。
娘は愛する人ができ、その人から想ってもらい、自分もその人を想うようになる。そして、そんな想い合う二人に大切な宝物が授かる。きっと、二人はその宝物を深く深く愛するのだろう。
そんな気持ちが娘の心の中で生まれた時に、かつての父親への深い感謝の気持ちが溢れかえったような様が描かれている。
父親への聖母のような愛を見せる娘。それは父親にとって、かつて、孤独ですがるように愛した娘の成長した姿。
形はおかしなところがあったとはいえ、ただひたすらに娘を愛した父親が悔いを持って生きていた中で、許された贖罪の瞬間だったように感じる。それは、二人の互いの愛が導いたことは間違いないように思う。

計算なんだろうけど、父親を見た目で分かりにくくしてるのはちょっとあざといな。
役者さんの年齢的な見た目で混乱させています。
娘と若い女性は同一人物で、時間軸の違う二人を同一舞台で交錯させる見せ方をしているとすぐに気付くのですが。
どうして、父親と男をこんな描き方をしているのかなあ。二人の役者さんの熱演は迫力あるもので、別に逆にしたって素晴らしい演技を魅せるだろうに。
どうも騙すとか、ミスリーディングを誘うとかいった技巧じゃなくて、何か意味があるような気がして、すごく気になっている。
視点かな。この話は、あくまで男と若い女性の話であり、そのほんのひと時の二人だけの世界のことを娘視点で描いている。娘は父親と幼き頃に別れているのであの頃の姿のままに見えている。父親と女の子のシーンは客に設定を見せるためのものであり、今、若い女性が出会っている男の姿として父親を映している。といった感じか。
それか、色々とあったけど、男が娘と出会うことで、ようやくこれからの人生をまた歩めるようになったという感じで、あの頃の時間からまた再出発みたいな感覚をイメージさせているのだろうか。
このあたりの真意はあまり理解できない。

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