« Re:空続きの〆切【勝手にユニットBOYCOTT】131128 | トップページ | ゴシップ【劇団レトルト内閣】131129 »

2013年11月29日 (金)

帝国【劇団有馬九丁目】131129

2013年11月29日 OVAL THEATER

高校を舞台に、戦うということへの現実を鋭く見つめたような作品だろうか。
学生運動のような形になっているが、社会全体の縮図としても捉えられるような感覚である。
支配に抵抗する者。それはテロやら英雄やら救世主やら、憧れとしても見られるし、蔑まれて見られることもある。どうであろうと、そんな戦いの中には、大義が薄れ、小さな憎しみ、恨みの塊が飛び交ってしまうだけになるようなことを伝えているように感じる。
大切なことは、何なのか。
それは相手を包み込むかのように分かり合うという強い覚悟を持つということのように思った。

いつものごとく、熱量のある芝居で魅せるが、同時に狂おしいほどの熱のこもった心情表現にも魅せられる。
役者さんがぶつかり合った力溢れる作品に仕上がっている。

<以下、若干ネタバレしていますが、許容範囲と判断して白字にはしていませんので、ご注意ください。公演は日曜日まで>

私立葦原学園。
特進コースの一部の優秀な生徒を一流大学、一流企業に送り込むために、多くの一般コースの生徒たちはクズ扱いするような高校。
夢と希望を抱いて入学したはずの生徒たちの多数は、こんな学校の姿に妥協、屈服、絶望を持った学校生活を送っている。
一般コースの生徒の大黒或奈もその一人である。
そんな学校にかつて異議を唱えた男がいた。或奈の物心つく前からの幼馴染であった。
彼は異議を唱えた後、学校の教師たち、学校側に媚びる生徒会の面々、そして何よりもみんなのために立ち上がったにも関わらず、一般の生徒たちからも迫害を受けて、その命を落とす。

そんな学園に、一人の女性が戻ってくる。
或奈の同じく幼馴染であった因幡十和子。
わずか数週間で高校を辞めた彼女は、失った幼馴染の男への報復なのか、自分の正義感のためなのか、武装派集団である、名無しの共闘軍を結成して、学園を攻撃する。
共闘軍の面々は、或奈と十和子の幼馴染の男のことをよく知り、リーダー的な存在の男、不幸な生い立ちゆえに全てを破壊しようとする男、勉強ができず何年も留年していることを学校のせいにしている男、狂気的すぎる暴力支配に対して違和感を持っている女、この学園紛争を第三者的な感じで見物して楽しんでいるかのような男。
共闘軍は教師や特進コースの生徒だけでなく、自分たちと異なる考えを持つ者は全て排除するという狂気と暴力に支配された考えで次々に粛正と称して犠牲者を出していく。

十和子の暴走は止まらない。共闘軍の中でも、その狂気は突き抜けており、もはや制御できなくなってしまっている。
遂には、来たる学園祭の日、学校を燃やし、全てを消滅させる考えにまで至る。
十和子を始末する。
その役割を担えるのは、彼女と一番心を通わしている或奈。でも、その或奈も十和子との間にある確執が存在し・・・

いつものごとく、話の展開とともに、色々な情報が入りこんできて少々、頭が混乱。
まあ、描いているところは高校を舞台にした社会の縮図みたいな感じだろうか。
体制への反乱、抵抗。その手段は様々であり、その行動におけるポリシーもまた人それぞれだろう。
突き詰めていくと、誤った体制崩壊といった大義が薄れ、ただあいつが憎いとか、恨んでいるとか、妬んでいるとか、小さな負の感情に支配されているような感覚を得る。
結局、争うということは、そういうことであり、人を傷つけるし、自分も傷つく。
だから、争うのではなく、許し抱きしめ合うのだといったようなラストなのかなと感じる。
権力を持ち、人を支配する。そんな学校の権力に立ち向かう共闘軍。
勇気を持った大きな行動であるが、それよりももっと大きな分かり合おうとする勇気を実行しようとする或奈の行動が結局は世界を変えるといった感じだろうか。
人の持つ強い覚悟がどんなひどい世界だって変革に結び付くといった人の信念や祈りに願いを込めているように思う。

或奈、土江優里さん。十和子、片岡結衣さん。
学園に抵抗し、その身を滅ぼした幼馴染の男を巡った女の確執を、二人の絆と繋げているような感じが、二人の表面的でない、深い結びつきを思わせる。
妥協の中で生きようとしていた或奈は、十和子により暴力では無いが戦うことを決意する。憎しみの中で全てを暴力に訴えかけ破壊しようとしていた十和子は、或奈により、自分を大切にし建設的な考えも抱くようになる。
二人が再び、出会ったことにより、愛した幼馴染の男が成し得なかったことを、いつの日か実現するような希望を見出させるように感じる。
陽と陰、動と静の基盤を各々持たせながら、それが徐々に交錯して、一つの大きな物を生み出しているような描き方が人が結び付くといったことを強く感じさせる。

巧みな口調と動きで洗脳するかのように共闘軍をまとめるリーダー、ザキ有馬さん。抑揚をつけたセリフ口調とキレのある動きが正しい中にも潜む隠れた悪意が浮かぶ。
トラウマを背負った狂気性の醸し方が絶品の坂本アンディさん(がっかりアバター)。全てを恨む鋭い目つきと同時に、全てを破壊まではしたくないといった、心の片隅に残る彼の善意も見える。
自分と向き合わずに生きているうちに卑屈になってしまった人の弱さを出す白井宏幸さん(ステージタイガー)。情けないのだが、それでもそんな感情も理解できるといった切ない同調も湧いてくる。
安全な場所を確保した中で生きるあざとい一面を垣間見せる浦長瀬舞さん(劇団六風館)。以前の他公演でも拝見したが、独断場の一人芝居はシリーズ化するのかな。
恵まれた人生を約束され、高みの見物で愚民たちの必死の戦いを戯れのように見る東洋さん(劇団六風館)。そのいやらしい笑みはなかなかの嫌悪感を引き出す。
貫禄溢れる姿に、強く生きるという厳しい現実に正面から向き合っているような学園長、堀よう子さん(Wエレファント)。一貫したポリシーを持って学園の体制を創り上げているという支配者側の覚悟もそこにはあることを導いているように感じる。

|

« Re:空続きの〆切【勝手にユニットBOYCOTT】131128 | トップページ | ゴシップ【劇団レトルト内閣】131129 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 帝国【劇団有馬九丁目】131129:

« Re:空続きの〆切【勝手にユニットBOYCOTT】131128 | トップページ | ゴシップ【劇団レトルト内閣】131129 »