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2013年11月15日 (金)

家電の王子さま。【ピンク地底人】131115

2013年11月15日 芸術創造館

登場人物に家電製品という不可思議な設定だけど、結局のところは、母親の無償の愛、絶対的な愛。変わらぬ、そんな愛を描いているような作品か。
印象としては、過去に観た二つの作品に近いかな。
(君がいなくても:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/121027-84b5.html
(明日を落としても:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/120701-5672.html
同時に、そんな大切な愛情を描きながら、未来に向けて心揺らしながら生きていく子供たちへの優しき想いも感じさせられる。
全てのモノに終わりはやって来る。でも、同時に新しい始まりも生まれ出す。そんな繋がりを母と子をベースに描いたような感覚がとても心地よく、温かい空気を醸している話。

<以下、あらすじがネタバレしますのでご注意ください。70分の上演時間ですが、私の場合は50分ぐらいになってようやく設定が分かり始めました。それまで不安で不安で。下記を読むと、稚拙とはいえ、キーワードでそれが分かってしまいますので、お気を付け下さい。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

登場人物は3人。と、色々な家電製品たち。家電じゃないのも入ってるけど。
舞台は天井からコンセントが吊り下げられており、それが数々の家電製品に繋がっている。
ここは、家電製品たちが暮らす街。
そんな街で起こった、ある出来事を回想していく。

 

ある日、男はキッチンでうたた寝してたところ、目を覚ます。
目の前の冷蔵庫が男に語りかける。
私の息子、がっちゃんを探して。
明日には栄転で引っ越しをするので新しい冷蔵庫がくる。だから、この冷蔵庫ともお別れ。恐らくは廃棄処分されることになるだろう。
最後のお願いを聞いてあげてもいいかなと思ったのか、夢うつつでどうせ夢の続きだろうと思ったのか、男はその願いを叶えてあげようと動き出す。
まずは何から始めればいいのだろうか。
男は冷蔵庫の扉を開けて、その思い出の世界へと入り込んでいく。

 

たどり着いたのは、家電製品たちが眠るソラナックスという街。
がっちゃんのことを知っている家電製品はあるのだろうか。
話しかけるが、誰も返事をしてくれない。
ようやく、ヒーターが口を開く。だいぶ年寄りみたいだ。
ここには神様がいる。その人なら知っているかも。今は老人ホームにいるらしい。
老人ホームってどこですか。答えは無い。息絶えたみたいだ。合掌。

 

急騰ポットが話しかけてくれて、老人ホームへと連れて行ってもらう。
そこにいる神様は、アルツハイマーで会話が成り立たない老人。昔は医者だったらしいが。
そんな老人がまだ若かった頃、がっちゃんもここにいた頃の話が回想される。

 

がっちゃんは、とても元気で無邪気な男の子。
雨が降ったら現れる水たまりちゃんと仲良く遊ぶ。
幼稚園に通って、ムキムキ先生愛用のダンベルで、今日もタフになろうと体を元気よく動かす。
親友のケトル。母親は急騰ポッド、父親はコーヒーメーカーだ。
ケトルは調子が悪いらしく、入院している。医者の治療もあまりうまくいっていないようだ。というか、専門外なのだろう。それでも、家電製品たちは神様と呼んで信頼している。
そんなケトルのところに毎日のようにお見舞いに行くがっちゃん。
ある日、ケトルは魚を観たいと、病院を抜け出して水族館にがっちゃんと一緒に行く。
そこは宇宙のように綺麗な世界が広がっていたが、調子の悪いケトルは熱を出して倒れてしまう。
医者にはこっぴどく叱られた。でも、ケトルを喜ばしてあげたかった。自分も魚を一緒に観れるのが楽しみだったし。
そんながっちゃんの優しい気持ちが分かっているのか、母親の冷蔵庫は叱りはしなかったが、ケトルのお母さんである急騰ポッドには一緒に謝りに行くことに。
急騰ポッドもそれほど怒ってはいない。むしろ、ケトルのこれからを覚悟していたのだろうか。楽しい時間をケトルに過ごさせてくれたことを嬉しく思ってくれているみたい。

 

それからも、毎日、がっちゃんはケトルに会いに行く。
早く治して、また遊びに行こう。約束だよ。
医者は知っている。
もう、ケトルが手の施しようがないことを。
ケトルを治すには、火星にある部品が必要。
そう、この話ははるか未来の話。
かつて地球に住んでいた人間たちは、火星に移住した。
不要となった家電製品や、人間関係のもつれなどから地球に住み続けることを選択した医者のような人間を残して。
だから、医者は分かっている。自分が神様でも何でもないことを。
取り残された家電製品たちと同じように、この未来の無い地球で命を全うするだけの存在であることを。

 

しばらくして、ケトルは動かなくなった。
それから、時は経ち、医者はすっかりアルツハイマーになって意思疎通が出来なくなる。
そんな医者を介護していた急騰ポッドは、少しずつ食事に毒を盛っていたらしい。それで医者は亡くなった。
急騰ポッドは刑務所に収容され、死刑となる。
毒を盛っていた理由は分からない。神様なのにケトルを助けてくれなかった恨みなのか、死にたいと口にしていた医者の願いを叶えてあげたのか、自分も早くケトルの下へ行こうとしたのか。
医者も色々とつらい思いをしていたのは確かみたいだ。
神様なんていない。自分が神様なんて呼ばれていても、誰一人救えない。
地デジ化で不要となったアナログテレビの自殺を止められなかったことを悔やんだりもしていたらしい。
ソラナックスの街はこんな終末を迎える。

 

がっちゃん。
ケトルが動かなくなった後、がっちゃんはある決意をする。
火星に行って、部品を調達する。
それには宇宙船が必要だ。
といっても、そんなものはここには無い。
掃除機のお兄さんが手を貸してくれる。
ミステリーサークルを作る。それは、火星に移住した人間たちにとって、まだ地球に取り残されている人間たちのSOSのサインと認識されて、宇宙船で迎えに来てくれる。
でも、医者はがっちゃんに対して警告する。
もう、ここには戻って来れない。火星に行くとはそういうこと。
母親の冷蔵庫ともお別れ。地球ともお別れ。
がっちゃんは幼き心を悩ましながら、ケトルとの約束を選択する。
お母さんなんか大っ嫌い。自分を奮い立たせるためか、逃げ場を無くして覚悟を決めるためか、そんな言葉を残して、宇宙船に乗って旅立つ。

 

男の部屋では引っ越し作業が始まっている。
数々の家電製品たちが運ばれる中、冷蔵庫だけはそこに置いたままに。
ラジオからニュースが流れる。
地球から家電製品を運び出し、ここ火星で売りさばく悪徳業者が捕まったことを。

冷蔵庫は良かったのか悪かったのか、そんな業者を通じて、火星に連れて来られたらしい。
そして、この火星で本当の最期を迎える間際に、がっちゃんとの再会の願いを男に託したというわけだ。
がっちゃんは大きくなった。
だから、もう冷蔵庫とは話すことも出来ないし、母親と認識も出来ないのかもしれない。
それでも、時を経て、この男の部屋で二人が見えない絆で結ばれていることを証明するかのような再会のシーンで話は締められる。
美しい照明も相まって、優しい空気が醸される素敵なラスト。

 

まあ、上記したように母親の愛なんだろうな。
冷蔵庫も急騰ポッドも違う形だけど、そんな無償の尊き愛が描かれているように思う。
何となく、ちょっと母親がらみの話に敏感になっている。
母親の乳ガンが再発して、今日も医者と今後の治療の相談をしてきた後に劇場に向かっている。
自分がガンの研究をしているだけに、事態が好ましくないことは、もう何となく分かってしまうだけにつらい。

 

何となく観て思うのは、子供は未来に向けて生きていくような感覚だろうか。
子供の頃は、母親と一緒に未来に向かって同じ時を過ごしていた。
子供の持つ独自の世界で過ごしてもいたが、それは同時に母親の世界の中でもあるかのような感じ。
でも、そんな母親の世界は、徐々に未来が狭められていく。この作品でいう地球みたいな感じかな。
ずっと同じ世界を生きていくわけにはいかない。子供は新たな未来ある世界へと旅立たないといけない。この作品での火星への旅立ちか。
収束する世界から、発散する世界へと向かう。
がっちゃんもそうだったと思うが、どうなるかも分からないから不安で仕方ないだろう。
でも、自分に母親の絶対的な愛が根底にあるならば、そこに向かって歩を進める覚悟が出来るのかもしれない。

 

こうして書くと、地球の世界が絶望みたいな印象だが、それは違う。
この作品の地球は地球で、終わりゆくモノたちが誇りを持って生きることのできる世界を創り上げようとしている。医者はそんな世界の創造に貢献するつもりで、神様となって頑張っていたのだろう。でも、所詮、人間だから、まだ若き命のケトルを救えなかったり、絶望してしまったテレビを救えなかったりして、悲しみ、苦しみの中で過ごしていたみたいだ。
最後、冷蔵庫は偶然とはいえ、自分の子供が創り上げようとしている新しき火星の世界へと足を踏み入れる。そこで見る、新たな未来へ目を向けて歩み出している我が子。最高の幸せと安堵の気持ちでいっぱいだったのではないだろうか。
親と子の繋がりを通じて、紡がれていく新しき世界、未来。世代を通じて、ずっと繋がってきた世界の歴史。
未来を背負う子供たちに、かけがえのない大きな愛を与えてあげたくなるような優しい気持ちが何となく芽生えるような話だった。

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