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2013年10月15日 (火)

劇団衛星のコックピット in 岩戸山のコックピット【劇団衛星】131015

2013年10月15日 KAIKA

舞台はヘラクレスという巨大ロボットの心臓部であるコックピット。
狭苦しい空間に、パイロットはじめ、様々なスタッフ、そして、ある事件に巻き込まれた人が入り込み、ドタバタを繰り広げる。
客席も、ほぼ同じ空間といっていいだろう、最前席などは、もうコックピット内にほとんど入り込んでしまっている。

巨大ロボットという子供心たっぷりの公演。}
入場というか、搭乗するという開演前からの演出もなかなか乙なものだ。
遊びじゃなくて、真剣だから、その作り込みや、設定は細かく設定されている。贅沢な映像の演出も駆使されている。
要は、大人の贅沢な遊びといった感じだろうか。演劇自体がちょっと、そんな感覚もあり、同調するところがあるかなあ。
何か敷居が高くて、文化的な意識が強いけど、実際は大人の悪ふざけだったり、子どもみたいなバカなことを思いっきりなんてことの方が多かったりする。特に、小劇場なんて言われる世界は。でも、それを本気で一生懸命創っていることが分かるから、こちらも本当に楽しくなってしまうんだ。
演劇の楽しさを、そのまま形にしたような作品なのかもしれない。

<以下、若干のネタバレがありますが、変則日程での公演で、いつまで白字にしておけばいいのか分からないので、そのままにしています。ご注意願います。今回、拝見したのはコンセプト1という作品。2~4がまだ、これから行われます。詳細は劇団HPを参照ください。私もどこまで観られるかは分かりませんが、残りのコンセプトも是非、足を運びたいと思っています>

巨大なヒト型ロボット、装甲魔神ヘラクレス。
松戸重工の技術を総結集して創られた、会長悲願の代物。
と言っても、何ができるわけでもなく、何か正義のヒーローみたいに悪と戦うわけでもなく、維持費だけが莫大に積み重なるお荷物状態になっている。

そんなヘラクレスを、日々、メンテナンスする面々。
かつては天才と呼ばれ、有名大学の教授でもあったのに、今やすっかり天才バカボンのパパみたいになってしまった常務。
朴訥で女にからっきし弱いパイロット。
酒に弱いサブパイロット。
ヘラクレスに憧れて、転職までして働いている優秀な女性エンジニア。
エンジニアは何人もいらないので不要なのだが、なぜかコックピットに居座り、勝手に音響を担当している男。
企画部として参加しているが、何か秘密を探り出そうとしているような怪しげな男。
派遣として働いている可愛らしい女の子。怪しげな男と少しいい仲というか、これまた何かを探ろうと裏表がある感じ。
そんなコックピットの面々は、搭乗時に案内してくれるアテンダントが説明する。それも、コロスとしてはありえないくらいの存在感ある面白さをPRしながら。

ロボットの創設者でもある、皆から敬愛されていた松戸会長が亡くなる。
膨大な相続税。常務は頭を悩ます。
このヘラクレスがもっと活躍してくれれば。
そんな願いが通じたのか、宇宙からの侵略者と名乗る、普通の男が操縦する同じく巨大ロボットが現れる。
ヘラクレス出動。ヘラクレスは戦闘用には作られていない。テンションが上がってしまったみんなを諌めるエンジニア。でも、上がったテンションは落ちない。ヘラクレスを運ぶトレーラー運転手までもが、使命を果たさんと意気揚々だ。
しかし、エンジニアの心配をよそに、巧みな操縦技術でこれを破壊。
世に名が知れ渡るように。ただ、その代償も大きかった。
国土交通省管轄のニュータウンを戦闘中に壊したものだから、この賠償金も支払わないといけないことに。
コックピットに国土交通省からの役人までやって来て、しばらく監視されることに。

そんな中、また新たな敵が現れた。
今度は、巨大なリスの形をしている。その愛らしさは、どこか、派遣社員に似ているような。
うまく倒せたら、前回の賠償金の件は無かったことに。国からのお墨付きもいただいた。
意欲満々で出動。
でも、手も足も出なかった。完全な敗北。しかも、世間はリス形ロボットを支持する者が多く、ヘラクレスは、すっかり悪役に。
窮地に立たされるコックピットの面々。
しかし、この一連の事件は、実は、国家が・・・
今のアホな姿の常務の真相、派遣社員の女性はあのリス形ロボットとどう関わっているのか、謎の男の正体は、国家の策略とは・・・

各々の事情や想いが交錯する中で、ヘラクレスはそれに巻き込まれるかのように出動する。
不穏な空気を漂わす国家の背景がある中で、裏切りや信頼といった人間関係を形作りながら、不器用だったり、したたかだったりしながらも、生きていく人の力強さがヘラクレスに集約して映し出されているような感じだろうか。
情熱の結晶、ヘラクレス。その人の熱き想いが、救いとばかりに活躍するんだか、役にさして立たないのやら。
社会風刺のようになっているようにも思えるが、正直なところ、あまりそんなところは観ていて感じず。
ただ、人のいいところも、悪いところも感じさせながら、何もかも全部ひっくるめて、熱き想いを注ぎ込んだ良きにせよ、悪きにせよ私たちの誇りであるヘラクレスよ活躍しろといった、今の不安な時代を吹き飛ばすような痛快さは感じる。

まあ、観れば分かりますが、このコックピットという狭い空間で、強烈な役者さんの姿に色々な意味で衝撃を受けて、楽しんで観ることができる作品です。
狭いのでお尻はかなり痛くなりますが、最前列でかぶりつきで観る価値は大きいですよ。

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