誉め兄弟【スクエア】131006
2013年10月06日 ABCホール
職人技でしたねえ。
舞台セットしかり、会話の細々したところまで巧みな技を魅せて、面白さを際立たせた見事な作品でした。
さんざん笑って、最後に泣いてなんてことは、たまに書きますが、今回は最後は笑いながら泣いてです。
同時に起こる感情ではないでしょうが、現実にそうなっています。
涙は溢れてくるんだけど、笑いも止まらない。
この劇団は凄いとあらためて思います。
御手洗家の遺産相続をベースに繰り広げられるコメディー。で、最後に思いっきりハートフルってところでしょうか。
父親が亡くなったところから話は始まります。
くだらないものばかりだけど、一応発明家だったみたい。もっとも、特許を取るわけでもなく、企業と組んで大儲けをするわけでもなく、働きながらの趣味みたいなものだったみたいだが。
自由気ままな性格で、酔って溝にはまって溺死してしまったようです。
全員、腹違いだけど3人の男兄弟と1人の妹がいますが、男兄弟はもう20年も前に解散という形で、みんな家を出ている。妹はその後もしばらくは父と暮らしていましたが、高校卒業後に家を飛び出し、今はどこかでスナックをやっているとか。
家には、男兄弟の幼馴染と一人の女性が暮らしていたみたいです。
幼馴染はもうすぐ彼女と結婚することになっています。この日も、前日に父親からもらったディズニーランドのチケットで、ちょっとした婚前旅行に出かける予定だったのだが、こんなことに。
女性は、数年前に、東尋坊で自殺しようとしていたところを父に助けられ、その後、一緒に住んでいる。まあ、内縁の妻みたいな感じ。
父親が夫というよりかは、自分の大切な心の支えだったのでしょうか。女性は立っていられないくらいに悲しみに打ちひしがれています。
同居する幼馴染は、息子たちに連絡を取ったりで慌しい。忙しさのあまり、事情を伝えていないのか、婚約者は父親が亡くなったことを知らずに、いまだディズニーランドに行く気満々。
そんな中、父が亡くなったことを聞きつけ、やって来た父の行きつけのスナックのママさん。何でも、遺言を預かっているのだか。
父の発明のファンみたいな人で、一応、ブローカーみたいなことをして手伝っていた男もいつものように家にやって来る。まさか亡くなったとは知らず、いつものように発明品を見つけては、のんきにちょっと試してみたりしています。
さらには、どこから聞きつけたのか、遺産を狙って、募金に協力をして欲しいとやって来た男女二人組。
そして、幼馴染に呼び出されてやって来た、20年以上ぶりに再会する三人の男兄弟たち。
互いに面識が無く、状況を把握していないものもいるので、事態はぐちゃぐちゃに。
順序立てて話をしようと、テーマを決めて、順番に語り合うことに。
①募金、②懐かしむ、③お父さんのこと、④毛布、⑤遺言、⑥生きる意味
観てないと、どういった理由で設定され、何の意味があるのか分からないテーマでしょう。
DVDを購入して確かめましょう。
ここから、笑いも交えた、というか笑いばかりの会話の中で、色々な事実が浮き上がってきます。
父が残した遺言とは、息子たち、妹への父の想い・・・
ドタバタの収拾つかない会話の行き着く先に、そんなことが全て明らかになり、どうなることかと心配だった6つのテーマの答えが生み出されます。
普通は遺産相続なんかをテーマにしたら、人の醜いところをいっぱい描いておいて、最後にその真意を見せて感動なんてパターンが多いというか、そんな形しか見たことない。
でも、この作品、一切そういう醜いものを見せない。
そりゃあ、そうです。作品名どおり、誉め兄弟ですから。
自分たちが置かれた環境や生き方に卑屈になったりしないで、純粋無垢にそれを尊ぶ人たちなのです。
そんな素敵な兄弟に感化されるように、みんなが父との出会いに感謝して、死を通じて繋がった仲間たち同士を想い合う心が生まれる形で話は締められます。
最後に父がずっと作成していたアルバムが映像で流される。
解散後も、父は三人が行った先と連絡を取って、息子たちの写真を手に入れていた。
そして、それを切り貼りして、残された妹と4人一緒にいる姿をずっと作り続けていた。
いつの日か、また4人が本当に揃う日がくるようにと願うように。
もちろん、ただ切り貼りされた写真を見せるだけのような芸の無いことをこの劇団がするはずもなく、おかしな写真とコメントで自然に笑みがこぼれるように。
父親のずっと家族を想っていた気持ちが伝わってきて、心が温まります。
そして、最後の写真は、父の願いがかなった素敵な写真が・・・
笑える、泣ける、上手い、・・・
色々な意味を込めて面白い作品でした。
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