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2013年10月26日 (土)

空五倍子色の羽音【DRY BONES】131026

2013年10月26日 築港温泉

今は廃業しているみたいだが、本当の銭湯を会場にして行われる。
わずか50分程度の作品で、さくさくと観ていると、いつの間にか終わってしまっている感じ。
そして、何だったのか、よく分からない。
ただ、観ている間はホラーチックに気味悪かったり、視覚的に気持ち悪かったり、笑えたりと、総じて面白かったという感想になる。
何だろうか。結局、繋がりを描いているような気はするのだが。

<以下、自分の考えをまとめるために、めちゃくちゃ、あらすじを書いてしまっているので、ネタバレにご注意ください。まあ、結局まとまらず、意味の分からない文章になっているのですが。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで。もし、この記事を目にする方がいたら、出来ることなら、観に行っていただき、どういうポイントを突いて観れば良かったのかをコメント欄にでも書いていただければ、ありがたいのですが・・・>

4話のオムニバス。
会場となる銭湯の全てを活かした舞台となっている。

・森行く人、谷行く人

舞台は風呂場。洗い場に浴槽。奥には大きな木がそびえている。
山奥の池だろうか。
老兄弟が釣りをしている。
昔、おじさんという巨大な魚を兄が釣って、写真を撮って、魚拓をとったという思い出話を弟がしている。兄は覚えが無い。ただ、弟の話の内容も整合性に欠けており、信憑性は乏しい。
弟は兄は忘れっぽく、自分は記憶がいいので、兄の思い出は全て自分が語ると言っている。そんな弟にイラダチがあるのか、兄は弟が自分を騙していると声をあげる。
証拠となる魚拓は、兄が持っているらしいが、家がこの間、焼けたので、例え、本当だったとしても、今は存在しない。
二人は、町の祭りに持って行きたい魚を求めに釣りにやって来たようだ。本当にいるのか、底の見えないこの池でアリゲーターガーを探している。
祭りはもうすぐみたいで、大事な太鼓打ちが怪我で代理を立てないといけない問題も抱えている。
隆という名があがるが、いい形で町を出て行ってないようで、兄は名前を聞くと少し不愉快な表情になる。
そんな中、何やら山の神のようないでたちの者が森から現れる。木の枝で出来たお祓いの棒のような物を持って、無邪気に振る舞うだけで、何も喋らないし、危害を加えてくるわけでは無いが、やはり気味悪く、おじけつく二人。自分たちがなぜ、ここにやって来たかを説明したりしている。
すると、さらに池の中から、同じようなけったいな神のような者が現れる。今度は棍棒を手にしており、もう一方の者に向かって攻撃体制をとる。そして、二人ともどこかに消えていく。
しばらくして、奇声。帰ろうと促す兄を放って、弟はその方角に向かって走り出す。
なかなか、弟は戻って来ない。戻ってきたのは、森から現れた方。手には池から現れた者が被っていた仮面。
弟に会わなかったかと尋ねる兄に対して、初めて口を開く。知らないと。
不安そうに、不自由な足をひきづって、弟の行った方角へ向かう兄。
森から現れた者は、池の中へと消えて行く。

・いもむしごろごろ

舞台は脱衣所に変わる。脱衣ロッカーと鏡が両側の壁一面にある。鏡側に向かって座る。
ゴミ捨て場。
大阪らしい噂好きのよく喋るおばちゃんに、人目を意識しなくなるのか、あられもない顔でゴミを捨てに来たおばちゃん。そして、子育てが一番忙しい時期なのだろうか、余裕が無く慌ただしそうなおばちゃん。
どこにでもあるような世間話を繰り広げる。
先ほど、釣りをしていた老兄弟はこの町の人みたい。ということは、祭りが近いのだろう。神社のことが話題にのぼる。
神社の裏の公園は危ない。最近、何か鳥の死骸が毎日のようにあるらしい。変質者の仕業かもしれないから、お子さん、気をつけないと。
よく喋るおばちゃんは、子育ても落ち着いたのか、暇なのかは分からないが、ゴミ捨て場に残って、人目を忍んで、ゴミをあさったりしている。
そんなところに、最近、町に引っ越してきた若い奥さんがやって来る。まだ、子供は赤ちゃんのようだ。
人見知りなのか、まだ、ご近所さんとは距離を置いた感じ。
そんなことお構いなしに、おばちゃんはグイグイくる。
挙句の果てに、商店街を案内して、お薦めの店を紹介してあげるとか言い出す。
今日は、多分、公園で失くした指輪を探したいからとうまく流そうと試みた若い奥さんだが、結局、それにもついてくるということで押し切られてしまう。
それでは、また後程と、別れたあと、若い奥さんのゴミ袋をおばちゃんはあさる。
そこには、大量の鳥の羽根が。

・小さな声

舞台は脱衣所の奥。ソファーとか体重計が置いてある、リラックススペースだろう。
真夜中の公園。
懐中電灯を手にして、やって来た若い奥さん。
そこに現れるコート姿の男。若い奥さんの前でコートの前を開く。奇声。
露出狂の変質者らしい。
続いて、やって来た男。ただ、思いっきり女装している。
息子じゃないか。もしかして、父さんか。
変質者は息子、女装の変態は父らしい。
父は、警察官に内定しているパンツも履かずにコートを着ている息子の哀しい姿に嘆き、説教をするが、もちろん説得力は全く無い。
父は、大工である。本当はデザイナーになりたかったらしいが、後を継がないといけなかったらしく、そんな夢は父親の大反対で潰されたらしい。
だから、息子が大学に行くなんていった時も、何となく、自分はダメだったのに、息子は自分が思ったとおりの道を進むことに抵抗を感じて、父親にされたのと同じように大反対したようだ。
でも、その後、息子が大学に通う姿を見て、そんなトラウマも消えていき、自分も好きなことをすればいいと考えるようになったらしい。それが、この女装につながったというわけだ。
どういう頭をしているのか、自分は可愛いから女装は自分に合っていると思っている。
これからも続けるつもりだ。
でも、やっぱり・・・
母も何か勘づき始めているようだし、そろそろ潮時か。
お互い、もうこんなことは辞めよう。
そんな二人は、最後に公園で、自分たちの姿の記念撮影を行う。

・空五倍子色の羽音

舞台は同じ場所。入口の扉が電車の扉に見立てられています。
駅のホーム。
どこかのおばちゃん二人がどうでもいいような世間話をしている。
女子高生が誰かを待っている。現れる男子高生。女子高生はいもむしごろごろで登場したあられもない顔のおばちゃんの娘。男子高生はよく喋るおばちゃんの息子だ。
二人は幼馴染で、恋愛関係にあるみたいだ。男子高生は卒業後、町を出て、大学に行くつもりらしい。そんなことを、母親から聞いたのか女子高生は男子高生を責めている。町でいつまでも一緒にいたいのだろう。
すねて、女子高生はどこかへ走り出してしまう。そんな様子を興味津々に見ながら、おばちゃんは電車に乗る。一人取り残された男子高生。でも、結局、女子高生は戻って来て、二人で会話をする。まあ、まだ先のことだから、どうなるか分からない。二人は電車に乗って学校へ。完全に遅刻みたいだが、それも何か、二人だけの時間みたいで嬉しかったりするようだ。
親子がやって来る。母親と息子。母親の下着選びに付き合えと呼び出された息子。息子は小さな声で登場した変質者。つまり、母親は女装変態親父の妻ということだ。
母親は、最近、父が女性の下着を隠し持っていることに気付いたようだ。浮気を疑っている。真実を知るのは息子のみ。二人は電車に乗っていく。
いもむしごろごろで登場したよく喋るおばちゃんが人を待っている。現れたのは同じく若い奥さん。そして、あられもない顔のおばちゃんも。つい先ほどまで、二人の息子と娘がここでイチャついていたのだが。
何気ない会話をしながら、電車を待つが、若い奥さんは二人が秘密にしているようなことをなぜかよく知っている。私の情報網って凄いんですよ。そう言う若い奥さんに対して顔色を変える二人。冗談ですなんて、若い奥さんは言って話を流そうとするが、表情はどこか不敵。
よく喋るおばちゃんが、反撃なのか、不安感を煽られたのか、ゴミ袋の中の鳥の羽根のことを言い出す。あなたが鳥を殺しているの。そんな鋭い質問に明らかに顔色を悪くしながら、そんなわけないでしょとひきつった笑顔で急いで電車に乗り込もうとする若い奥さん。後を追おうとする二人。若い奥さんが立っていた場所には鳥の羽根が落ちている。
一人の男が電車から降りてくる。
電話をかけている。久しぶりに町に戻って来たらしい。
祭りの太鼓打ちの代理として。名前は隆。

といった話。
やはり、ダメかあ。
いや、こうしてあらすじを思い出して振り返りながら書いていると、たまに、何かが降りてきて、作品のことが分かる、もしかしたら分かったつもりかもしれないけど、スッキリする時があるんだが。
で、結局、何なのよって感じにしかなりませんでした。

何となく感じるのは、人なんてものは、第1話の池のように、底が見えず、そこに何がいるのかなんて分からないなんてことでしょうか。
アリゲーターガーみたいな無茶苦茶な生き物が生息しているかもしれないし、何やらよく分からない神みたいな者が出入りしていたり。
でも、そんな人たちも、独りではなく、色々と繋がりあっている。
底が見えない池の、まだ見える表面部分だけ見ていると、たくさんの池同士は別々だけど、見えない奥深くに目をやると、実は奥の方では互いの池同士が繋がっているのではないか。現実に、土とかを間に挟んでいるが、繋がっているわけだし。
でも、そんな奥には、やはり暗さと比例した、闇の部分が存在する。
それに目を背ければ、いつまでたっても繋がらない。そこに目を向けることで、関係が連鎖的に進み出す。

話としては、太鼓打ちが不在になって困ったという話題から、一人の男が帰って来たという結末なんだと思う。そこに至るまでに、この人がこうなって、あの人がああしてみたいに、関係の連鎖が、その結末を生み出しているようである。
人の繋がりということを、ごく普通だが、心の奥に表面とは異なる感情を持ち合わせているような老兄弟やおばちゃん、素直に感情を外に出せない微笑ましい若いカップル、暴露し合うことで分かりあえたコミカルで奇妙な親子、ブラックな怖い影を潜めた若い奥さんを通じて描き、そんな様々な人間同士の関わりが、ある結果を作り上げる。
いわば、バタフライ効果みたいなことかな。時間の経過の中で、ちょっとした関わりの違いが、結果を大きく異ならせる。でも、そこに人のつながりがある限り、必ず蝶は羽ばたく。そんな感覚が作品名の、よく知らないがあんまりげんが良くないような色の羽音ではあるが生まれた蝶として、帰って来た男という結末を表現しているのではないだろうか。

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