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2013年10月 7日 (月)

ヨイヤミ【こまち日和】131006

2013年10月06日 中津・moulin kitchen

淡い不思議な空気で進む話。
会場となる高架下の暗闇の一室が作品の雰囲気ともピタリとはまり、独特の空気を醸し出している。
そこで感じる、闇の中にぼんやり浮かぶ光。
それは、誰もがきっと抱えている心の闇を解きほぐすように、自分に向けられる人の温かく優しい想いのように感じる。

宵闇の中、自分を見つめる。
暗闇の怖い世界。恐れ、怯え、苦しみ、悲しみ・・・
でも、そこには光当たる世界では見えなかった大切な想いが浮き上がってくる。
自分は幸せなんだろうな。そんなことを感じるほんの少しの温かい時間。
心が穏やかに、優しい気持ちになっていくような作品だった。

<以下、読んでもあまり分からないような気がしますが、若干ネタバレがありますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、夜が千秋楽>

高架下の屋根裏のような一室。
飲んでいる間に寝てしまったのか、すっかり日も落ちて暗くなった部屋にプロレスラーがいる。
そこにやって来た一人の男。
二人とも大の男なのに暗闇が大嫌いみたい。
いちいち何かあるたびにビビってうるさい。

明かりを見つけて、とりあえず、互いに名のりあう。
プロレスラーは、自分のファンでもある大切な女性からもらった手作りのお守りをここで落としたらしく探しに来たらしい。
男は彼女との待ち合わせ。早く着き過ぎて、鍵が開いていたので、つい入ってしまったようだ。
どこにいたのか、突如、一人の女性が現れる。
大家さんだろうか。本人はフミちゃんと名乗っている。
フミちゃんの手には一冊の絵本。
何でもヤミヤミ様とかいう怪獣のような神様がいて、無くした物を見つけてくれるのだとか。
けったいな話ではあるが、この絵本の作家が実はここに来た男。

ヤミヤミ様。
無くしたものを見つけてくれる。
でも、薄れて忘れてしまった記憶を思い起こさせることも出来るらしい。
二人は、自分たちの過去に入り込む。
怪物と呼ばれて家族から疎まれた男。
絵本作家になりたかったが、厳格な父にその道を閉ざされた男。

そこは、彼らが心の奥にしまいこんだ闇の世界。
でも、それと向き合う中で、今の光の中の生活、そして、今の自分に光を射し込んでくれる大切な人の存在が見えてくる。

意識しないで、いつの間にか闇の中へと消えてしまう記憶。
光を照らしてもそれは見えてこない。
じっと、闇の中を見つめている中で、それが動き出すように姿を現す。
でも、同時に自分たちが光の当たる世界で、今、生きている。
その光が自分の傍にあることを尊く思えるようになったのだろうか。

闇とはいえ、ずっと光の存在が見えているので、暗くはない。
苦しいけど温かい闇だ。
この男たちが、新しい道を歩むために、過去の闇を受け止めて、今の光を大切にしていくことを思い起こさせた大切な時間を共に体験したように思う。

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