独菜飯店【ThE 2VS2】130923
2013年09月23日 インディペンデントシアター1st
初の長編作品であるが、シンプルな素舞台、衣装、少人数と雰囲気はいつものショートオムニバス公演と変わらず。
ショート作品で、このあたりはお手の物なのかな。始まった瞬間に、すぐ客を舞台に惹かせている。そして、その後はテンポのいいスピード感溢れる流れで最後まで突っ走られていた。この回は、途中ちょっとトラブルがあったので、ギグシャクとしたりしてしまうのですが、そこはせっかくのアクシデントということで、思いっきり笑いに変えられていました。
話の内容はとても面白いものです。
というか、まあ、くだらない歴史を小馬鹿にした内容なのですが、どこか知的なところを感じさせ、いつもながらの計算高い話の構成は、長編作品になっても、きちんと劇団色としてがっつり残っていました。
ショートオムニバス公演を何回か拝見して、ここは好きな劇団ですが、今回のような作品を拝見して、より一層好きになりましたね。
単に笑わせるだけにとどまらない、面白い作品が出来上がっています。
質が高いんだと思うのです。それを品の無さとか、キモさとかで表面的にカモフラージュしているだけで。
物語は、日本における戦後の食文化の一つ、ラーメンを創り上げたヒットマンと呼ばれる一人の男、忠実にその男に従い、その文化を普及させることに奔走したゲッペーという側近、その美貌と肝っ玉の強さで拡販の道を築いた男の良き伴侶、エベっさんの三人の闘いを描いている。
第二次世界大戦終戦間近のドイツ。
ナチス党首として、ポーランド侵攻後、数々の戦績をおさめたヒトラー。
彼は連合軍に追い詰められ、共に戦い、ナチスの名を世間にとどろかせた宣伝大臣のゲッペルスが見守る中、地下壕で愛人のエヴァと結婚式を挙げる。
数々の策略で、勝利をおさめてきたヒトラーとゲッペルス。彼らは、この最後の時においても、重大な計画を企てていた。
ドイツ脱出。とりあえず、結婚式後にエヴァを自殺させて、二人は同盟国の日本に逃げのびようとしていたのである。
ところが、エヴァにその計画を気付かれ、二人はエヴァに脅されるように三人でドイツを脱出することになる。
行き着いた先は、大阪の新世界。
敗戦後の日本は、ヒトラーたちにとっては、あの憎き連合軍、アメリカGHQの支配下に置かれている。
人々も普通に洋食を食べたりして、すっかりアメリカに染まってしまっている模様。
目立って正体がバレたら、間違いなく殺される。
ゲッペルスは、持ち前のプロパガンダの能力を活かし、この地で目立たぬように、ある作戦を実行し、いつの日か、日本をヒトラーの手で征服しようと考えていた。
それは食文化の制圧。
ヒトラーとゲッペルスは定食屋を開いて、その計画を進めようとするが、新世界は怖い人ばかり。
まともに料理も出来ない二人に、あの恐ろしい連合軍以上に、色々な人が喰いかかってくる。
稼ぎは全く無く、生活資金はエヴァの裏賭博の金を頼るばかり。
おかげで、あの優しかったエヴァは、全盛期のヒトラー以上の独裁っぷりを発揮し、二人を日々恫喝する。
そんな中、新世界をシマにするあるチンピラと出会い、その組と関わりを持つことで、チャンスが訪れる。
新たに新世界に参入してきた中国の中華そば。
第二次世界大戦の時も、中国はその勝利のために重要な存在だった。
あの時と同じ過ちは繰り返さない。
かつての三国同盟。日本のうどん、イタリアのパスタ。
これは、麺に形を変えた、再び起こる新世界での世界大戦だ。
身を隠すためにヒトラーはヒットマン、ゲッペルスはゲッペーと名乗り、敵対する店を制圧していく。
GHQの権力に屈服した組の裏切りなど、数々の困難を乗り越えて、ヒトラーたちは、戦いに勝利するために奮闘する。
そして、いつしか、その戦いはヒトラーの麺、ラーメンの勝利を導きだし、二人を支え、富を築きあげたエヴァはエベっさんと呼ばれるようになり・・・
よく考えるなあと唸りますね。
もう一つの戦争、今でも続く世界大戦といった感じで、悲劇的な歴史の事実をすっかり面白エピソードに変えてしまっています。
ヒトラーの長橋秀仁さんは、いつもながらのわがままで横暴、自己中心的なんて卑屈なキャラに扮し、何かされるたびに笑いを生みだされています。
ゲッペルスの番匠真之さんは、今回はストーリーテラー的な役割もこなしながら、ヒトラーの忠実な下部なのか、逆に従えているのか、あいまいな雰囲気の中での絡みでバランスのいいコンビを魅せます。
チンピラの長橋遼也さん(Zsystem)は、下っ端らしい流されながら、飄々と巻き込まれていく姿が面白い。
そして、今回は何と言ってもエヴァの浅野アンリさんかな。いつも、貫禄ある安心感を醸し出されていますが、今回は特に、他の役者さんを喰っちゃうぐらいの迫力を出しながらも、どこか清涼感を感じる不思議なたたずまい。楽しくて、面白い、舞台の中ですごく調和した雰囲気を出されるいい役者さんだなあと思います。
今回、嬉しいのはDVD販売。
前回公演のDVDがついに販売です。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/the-2vs2130519-.html)
以前から、ずっと出して欲しいと思ってたんですよね。
過去の名作が詰まった公演ですから、どれも面白いし、観るのが楽しみ。
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